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メグ美農園の収穫祭へようこそ(改訂版)  作者: s_stein & sutasan
第1章 荒れ地の果てに
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8.私のコテージ

 その家は、均一の太さの丸太で組み上げられた平屋の建物だった。満天の星の光でその外観がはっきり見えているのは、プレイヤーに建造物を見せるためのゲーム上の演出だと思うけど、現実世界でも星明かりできっとこう見えるのだろうと本気でそう思えてくる。


 そういえば、私を案内したレッサーパンダさんの二匹というか二人も、今更ながら気づいたが、姿がはっきり見えている。あまりにリアルな自然の中でこのような非現実的事象に違和感がないということは、すっかりゲームの世界に引き込まれたのかも知れない。


 さっきまでプレイしていたVRMMORPGの「アール・ドゥ・レペ」でも、暗雲垂れ込める原野でも洞窟内のダンジョンでも互いの姿がはっきり見えている。よく考えればおかしな話だ。仲間をこんなに明るく照らす光はどこから来ているのかと。


 さて、建物の外観に目を移すと、組んでいる丸太に枝を落としたときの節がゴツゴツと見えるが、この質感が実にリアル。本物そっくりなので手を伸ばしたくなる。


 おそらく、先ほどの空き地に元々生えていた木々を伐採して作ったという設定だろう。林の中に突如として現れた建物の資材は現地調達したはずだから。後で丸太にじっくり触れてみて、ゴツゴツ感を楽しもう。


 屋根の真ん中に小さな煙突が突き出ている。窓はガラスではなく、開閉式の板になっている。こちら向きに二つあるが、おそらく建物の裏にも左右にもあるだろう。ドアは向かって一番右にある。地面から溢れ出る雨水を避けるためか、床が少し高くなっていて、ドアの前に階段が二段ある。


 これを見て、真っ先に頭に浮かんだ言葉は「コテージ」。山小屋とか小さな別荘という意味を持つこの言葉の響きに、私はときめく。


 間違いない。これは「コテージ」だ。いつかは住んでみたいと思っていた憧れの建物が、目の前にある。


 この家をずっと守っていてくれたレッサーパンダさんのことを思うと、胸の奥からこみ上げてくるものがあり、ついホロッと涙が出そうになった。


 逆に考えると、なぜこのゲームにのめり込まなかったのだろう。思い出そうとしても、記憶に厚いベールがかかっていて、思い出せない。


 意地悪なレッサーパンダさんに見えないし、きっと、後でまたやろうと思っているうちに「アール・ドゥ・レペ」にのめり込んで忘れたのかも知れない。


 そんな風にあれこれ考えていると、レッサーパンダさんが自己紹介を始めた。

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