77.お隣さんが見えてきた
しばらくすると、私たちの木を切る音しかしなくなった。手を休めて後ろを振り返ると、オークさんとクラウディアさんの所は、切り倒す木がなくなっていた。代わりに柵が見えた。どうやら、お隣さんの農園の境界線まで達したらしい。
私は反対側のコニーリアさんとカプラさんのいる方を見る。すると、同じく切り倒す木がなくなっていて、柵が見える。あちらもお隣さんの農園の境界線まで達したようだ。
つまり、左右の方向は限界まで伐採したのだ。
残るは、今私たちが伐採している方向と、手つかずになっているコテージの裏側。
オークさんたちが私たちの所にやってきて、どういう分担で残る両方向の木々の伐採を始めようかと打ち合わせていると、コテージの裏側で木を切る音がし始めて、次々と木が倒れていく音がする。お隣さんがこちらに向かって耕地を広げているのだ。
「どうするかのう?」
オークさんが私に判断を求めると、みんなの視線が私に集まった。そこで耳を澄ましてみると、今私たちがいる側からは木を切る音が聞こえてこない。チャンスかも知れない。
「こっちに向かって、行けるところまで行きましょう」
目指す方向を指差すと、みんなは一斉に頷いた。と、その時、カレンさんが「あのー」と言って手を上げた。
「今13時ですけど、この後、どのくらい時間がかかりますか?」
こちらの世界で13時ということは、現実世界では22時だ。オークさんは「うーん」と言って考え始めた。
「そうじゃのう。両隣と接した横方向はおよそ100メートル。今までの2倍じゃ。縦横の長さを同じにするには、木を切るのに後1時間。切り株を片づけて雑草を取るのに、向こうもあるから3時間。柵の木を加工するのに2時間。囲むのに2時間かのう」
オークさんは私の希望をちゃんと覚えていてくれて、縦横が2倍、つまり面積が4倍になるように考えている。でも、終わるまでに8時間かかるようだ。オークさんたちが夜中も働くとして、こちらの世界で21時。現実世界で明け方の6時。
これは、いくらなんでも全部立ち会えない。