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メグ美農園の収穫祭へようこそ(改訂版)  作者: s_stein & sutasan
第2章 スローライフとビジーライフ
74/150

74.偶然にも全員がイン薄になる

 その後、しばらくインゲン豆が大きくなっていくところを観察していると、エレナさんが手を振りながらコテージから出てきた。


「なんだ。一番乗りかと思っていたら、先越されちゃった。今日は早かったね」


「ええ。明日から休みなので、時間一杯楽しもうと。じゃないと――」


 これに続く『月曜日から林間学校に行くから』という言葉が舌の先まで出かかったので、慌てて飲み込んだ。


 エレナさんが私の顔を覗き込む。


「じゃないと?」


「えっと……来週から何かと忙しいから」


「……そうだ、今度の月曜――」


 彼女の言葉に、私はビクッとする。まさか、学校行事のことを言おうとしているのかしら?


「ちょっといろいろあって、月曜からしばらくイン薄になるかも」


 その言い方があったかと感心する。たまにしか来れないという意味だが、これなら丸一日ゲームに現れなくても嘘ではない。


 と、その時、テレーザさんとカレンさんが手を振りながらコテージから出てきた。


「お待たせしました」「偶然、一緒になったの」


 私は両手を振り、「みんな早いですね」と言うと、二人とも「週末だから」と答えた。


「そうだ。エレナさんが忙しくて、月曜からしばらくイン薄になるかも、ですって。私も来週から忙しいので、なかなか会えないかも」


 これには、テレーザさんもカレンさんも、エッという顔をしてお互いに顔を見合わせる。


「偶然ですね。私もです。ちょっと、やることがあって……」


「私もなの」


(何これ……)


 来週から四人が同時に忙しくなるなんて、偶然にしては出来すぎている。


 三人は私の班の彼女たちであるという可能性が、これでゼロではなくなった。


 オンラインゲームでは、プレイヤーが参加できない時間帯や曜日から、その人の行動を推測されることがある。これに会話の中から出てきた単語とかで場所とかで、場合によっては特定されることもある。よく、「揺れている! 地震だ」「停電になった」「事故で電車が止まっている」と状況報告する例があるが、これで行動範囲がどの辺りか絞り込まれる。


 だから、四人が同じ事件に遭遇し、それを語った途端、一気に範囲が狭まるのだ。


「では、来週から時間を合わせず、来られる人だけここに来ましょう。忙しくなくなったら、その時は時間を決めて」


 三人は同時に頷いた。我ながら、話をうまくまとめられたと思う。


「ところで、この農園の敷地を広げないといけなくなって……」


 私は、オークさんの話を三人に伝えた。


 農園の拡張の話はみんな経験で知っていたらしく、急がないと駄目だ、とのこと。エレナさんは「じゃあ、メグ美農園の拡張のために、週末は開墾に専念するか」と言ってくれた。


 私たちは「オーッ!」と右手を高く上げた。そのかけ声が辺りにこだまする。こうして、私たちの開墾作業がスタートした。


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