61.三人は本当に誰なのか
今、目の前でソーダ水を飲んでいる三人が、学校では私と一対一でしか口を利かない三人だと推測できる根拠は2つ。
従業員募集でやってきた三人が自己紹介したとき、現実世界で彼女たちが常に携帯している物の名前が話に出てきた。謝りたくても謝れない人がいると言った。その人は、きっと、私のことだろう。
でも、別人だと推測できる根拠もある。
昼間の現実世界と夜のゲームの世界で、態度が全然違う。
それと、たくさんのオーナーがプレイするVRMMOの農場ゲームに、偶然その三人が私の農園に従業員として志願してきたなんてことがあるのだろうかということ。あるとすれば、「メグ美農園」という名前にひかれて? いや、私は「恵」であって「恵」ではない。
そういえば、よそのクラスに「恵美」という人がいて、彼女を追いかけていた二人がいる。喧嘩したのだろうか? もしかして、あの追いかけていた二人が目の前にいるのだろうか?
つまり、恵美さんと仲直りしたい二人、あるいは三人が目の前にいるのだろうかということ。
(まさか……、夜中の夢はそれが原因?)
だんだん、なぜあの夢を見たのかが、わかってきたような気がする。
でも、「恵という名前の方がよかった」と言う私の愚痴は、クラスの全員が知っている。「恵」を、あえて「メグ美農園」にしているというのも成り立つのだ。
(これからどうしよう……)
気持ちが振り子のように揺れる私は、コップを持ったまま、伸ばした足に視線を落とす。
(こんなモヤモヤした気持ちで、一緒に楽しくゲームをプレイできるのかしら……)
困り果てた私は、堂々巡りのような考えから抜け出そうと、必死になる。悪循環から抜け出るには、割り切りが必要だ。