6.悠久の時を超えて
ゲームから抜けるのは簡単だが、VRゲームでなかなか見ないスーパーリアルな大自然から離れるのはちょっと惜しい気がする。
(素敵な星空を見上げながら、心地よい風にもう少し当たっていよう)
そう決めた私は、もう一度、満天の星を見上げた。
果てしなく広がる宇宙空間に何百億と点在する恒星や星雲が描く光のシンフォニー。
芥子粒のような光の中に、膨大な数の星が詰まっていて、それが遙か遠い昔に放たれた光であるという不思議さ。見えているのは全て、過去の光なのだ。ものによっては、人類より古く、恐竜より古く、地球より古い光が広大な宇宙空間を直進し、地球にようやくたどり着いて私の上に降り注いでいるという奇跡。
あっ、今、流れ星が見えた。
もしかして、星の一つが落下したのか。そんな滑稽なことを考えていると、本当に夜空の星が降ってきそうな錯覚に陥る。
そう。輝いている一つがユラユラと揺れて、ポロッ、シューッという具合に。
草の匂いがする。虫の音が聞こえてくる。
(このゲーム、凄い気合いの入れようね。ここまで自然を忠実に再現しているなんて……)
大自然の精緻な描写にすっかり心を奪われて、ゲームから抜け出ることを忘れていると、突然、前方でガサガサッと音がした。
「キャッ!」
私は咄嗟に、クマでも出たと思い込んだ。それで後ろに逃げたつもりが、草に滑って尻餅をついてしまった。たくさんの草と軟らかい土が私のお尻を受け止める。