58.逆戻り
眠れぬまま朝になった。
遅刻ギリギリに登校してクラスのみんなから注目を浴びた私は、自席に着く前にあの三人の方を見る。ところが、三人ともこちらを一瞥もしない。また昔に逆戻りなのかしら?
(まさか、あの夢は、本当にゲーム内で起こった出来事じゃないわよね? 怒らせてしまったとかないわよね?)
そんなはずはないのだが、理由をそこに求めようとするもう一人の私は気が気でない。
ジッとしていられなくなったので、休み時間に一人ずつ声をかけてみた。すると、彼女たちはチラッとこちらを見るものの無視をする。昨日私に見せてくれた彼女たちの謝罪の姿が、金槌で叩かれたガラスのように砕け散った。
(なぜ……、どうして……)
背を向ける彼女たちの姿は、滲む視界によって形を失っていった。廊下に飛び出て、両手の甲で涙を拭う。
辛い。本当に辛い。
◆◆◆
約束の21時になった。でも、ベッドに横たわる私は農場ゲームに接続していない。「ごめん、都合が付いた」って言いながら「アール・ドゥ・レペ」の仲間と合流する光景を想像し、女魔法使いノアールなんだから軽めではなくもう少し言葉を変えた方がいいかな、などと考えている。
なぜなら、怖いのだ。農場ゲームで待っている三人が。
もしかしたら、機嫌を損ねて、来ていないかも知れない。
(風邪を引いたことにしようかしら……)
仮病を使ったのは、もう記憶にないほど昔だ。嘘がばれるのが怖くて、私は仮病をやめたはず。友達から「あやめぐは嘘をつけない」と言われるが、その通りだ。
(だったら、都合が付いたなんて嘘もやめよう……)
私は、ヘッドギアを装着して農場ゲームに接続した。