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メグ美農園の収穫祭へようこそ(改訂版)  作者: s_stein & sutasan
第2章 スローライフとビジーライフ
54/150

54.ボス戦の勝利

 学校で良いことがあったおかげなのか、「アール・ドゥ・レペ」のボス戦は大きく前進した。


 攻撃の仕方をいろいろ変えることにより、ドラゴンの反撃の癖をようやくつかんだ私たちは、フォーメーションを一部変えて隙を突くことにした。


 私は(おとり)となって攻撃するのだが、もう一人の(おとり)となった仲間が別の角度から攻撃してドラゴンの気を引くと、そちらへ無理に首を向ける一瞬に、防御結界に穴が開いてガラ空きになる――ただし、すぐに再生する――箇所がある。ここを私がピンポイントで攻撃するのだ。


 特大の火の槍を用意してその機会を待つが、針の穴に1回で糸を通すくらい難しいので心臓がバクバクする。チャンスが来たら、コンマ5秒の躊躇も許されない。すると、もう一人の自分が心の中で「出来るわけがないだろ」と(ささや)いてくる。


(ええい、黙れえええええっ! 弱気な自分!)


 自分で自分を一喝した時、ドラゴンの防御結界がガラ空きになる瞬間が訪れた。


 条件反射のように火の槍を投げると、防御結界が再生して穴が閉じ始めた。


(間に合えええええっ!!)


 閉じる結界をこするように槍が滑り込み、ドラゴンの体内へ深く突き刺さる。苦悶の表情のドラゴンが絶叫してもだえ、反撃が弱まった。


 弱まったとは言え、まともに攻撃を受ければかなりのダメージを食らう。かといって、接近しないことには剣が届かない。


 こうなると、互いにHPを削りながらの接近戦に持ち込むしかない。つまり、どちらが先にHPがゼロになるかの勝負。私たち全員が力を惜しまず、猛攻を間断なく続けた。


 ついに、ドラゴンが地響きを立てて倒れ、大量の光の粒をまき散らして消滅した。



 たくさんの報酬を得て、レベルも上がり、私たちはハイタッチをして酒場に繰り出す。


 当然、流れ的には次のクエストに挑むのだが、私は「都合により、しばらくイン出来ない」と伝えて辞退した。まさか、林間学校にヘッドギアを持ち込むわけにはいかないからだ。なお、ノアールのリアルが高校生とは言えず「林間学校」は「都合」とぼかした。


 実際の林間学校はまだ先の話だが、クエストが始まってから「実は」と切り出すよりは相手に迷惑をかけない。人数が少なければそれに応じたクエストを選ぶことになるからだ。


 すると、仲間は私が長期出張にでも出ると思ったのか、「本業を優先してくれ」と許可してくれた。


 快諾してくれて嬉しかったが、寂しくもあった。仲間の顔もちょっぴり寂しそうだった。


 一応、長めに2週間の休みをもらうことにした。理由は、林間学校とその準備の時間に加えて、少し農場ゲームに集中する時間と休息が欲しかったからだ。もちろん、RPG(こちら)が飽きたからではない。さすがに両方を連日やっていると疲れるし、深夜続きで母親から怒られているというのもある。


 寂しそうな仲間を見て「()()()()()()()早く戻るかも知れない」と伝えた。こういう気遣いは、現実世界の自分に備わっている気遣いだ。


(林間学校が終わるまでの暫しの別れ。……そうか。農場ゲームもそうなるな。寂しい)


 乾杯で掲げた祝杯を持つ手が急に重くなった。



   ◆◆◆

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