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メグ美農園の収穫祭へようこそ(改訂版)  作者: s_stein & sutasan
第2章 スローライフとビジーライフ
50/150

50.雨は必ず上がる

 翌朝、黒雲から間断なく落ちる大粒の雨が大地を叩いていた。二階の窓辺に立つ私は、パジャマ姿が外から見えないように左右のカーテンを引き寄せ、それに両側から挟まれた顔をのぞかせて意地悪な雨を恨む。


 まだ農場ゲームからの転移ボケが残る私は、ゲームから落ちる前にあちらの世界で降り出した雨を憂い、作物の収穫が雨で出来なくなるのでは、実が落ちるのではと心配する。


 そんな私を目覚ましのアラームが驚かせ、現実の世界へと引き戻した。


(そうだ。あの二人と会話していない)


 エレナさんが昨日、謝りたい人になんとか謝ったことを報告したが、あれからテレーザさんとカレンさんは「いいなぁ」と羨ましがっていて、それぞれ思うところがあったらしく、野菜を見ながらずっと考え事をしていた。


 テレーザさんとカレンさんが、それぞれ(びー)さんと(しい)さんである保証は全くない。でも、万が一そうだったとしたら、今日、向こうから接してくるはずだ。


(待ってみよう。それで向こうから来なかったら、こちらから声をかけよう)


 そう思って一度は納得したが、それって消極的な行動ではないだろうかと、心の中の女魔法使いノアールがつぶやく。


(訂正。私から積極的に声をかけよう)


「うん、それがいい」


 思わず、心の声が独白となる。



 しかし、登校直後、私の声かけプランは脆くも吹き飛んだ。(びー)さんと(しい)さんが体調不良で休みだと担任の先生から聞かされたのだ。


 こちらまで体調不良になりそうになった。あらゆる状況を想定して用意した声かけ用の言葉が、行き場を失って頭の中で繰り返される。


 きっとそれが原因だと思うが、授業中にお腹が痛くなったので一人でトイレへ向かうと、誰かが後ろを付いてきている気配がした。振り返ると、なんとそれは(えい)さんだったので跳び上がるほど驚いた。


 彼女は小声で「あのさぁ」と声をかけて、間近に迫ってきた。近いとさすがに怖い。昨日の謝罪があっても、慣れていないのでビクビクする。


「一人で悩むことねえよ。あいつらに、うちからガツンと言ってやっか?」


「ううん。私から言うので大丈夫。ありがとう」


「それって、ありがとうじゃねえし。こっちは何もしてねえし」


 彼女は苦笑いして、辺りを(うかが)う。私の直感は、彼女の行動の意図を読み取った。誰もいないことを確認した彼女は、私の目を見て素速く頭を下げた。


「昨日は、ちゃんと言えなかった。ごめん」


 言い終わった彼女は頭を上げる。初めて見る満面の笑み。これが本当の彼女の姿なのだろう。


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