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メグ美農園の収穫祭へようこそ(改訂版)  作者: s_stein & sutasan
第2章 スローライフとビジーライフ

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48/150

48.ゲームの掛け持ち

 学校での出来事は大きな前進だったが、「アール・ドゥ・レペ」のボス戦は苦戦の連続だった。


 せっかくの良い流れをこちらにも持ち込みたいのに、あのドラゴンの攻撃はチート過ぎるとかなんとか、仲間が自分たちの攻撃のまずさを差し置いて文句を言うので、私が活を入れた。それでも弱音を吐くほど、大人たちは半ば諦めムードになっている。


「ノアール氏。そうは言っても、考え得る攻撃は全てやったので、『万策尽きた』ですな」「もうムリっす」「体力持たん」「(つみ)


「何を言う。弱音が出た時点で勝負あり。向こうも追い込まれて必死のはず。奴の反撃の勢いに飲まれなければ勝機はある。万策尽きたと言うが、まだ試していない方法がいくつもあるだろう? 打ち合わせた作戦をよく思い出してみるがいい」


 みんなは顔を見合わせた。


「言われてみれば確かに。夢中になって忘れていたですな。……では、あの方法を試しますかな」


 私たちはもう一度ドラゴンに立ち向かった。必ず勝利をつかむために。



   ◆◆◆



 23時を少し過ぎたので、急いで農場経営ゲームにダイブすると、いつもの通りにお誕生日席に座っていた。コテージの中でゲームを落ちると、インするときはここに座るので、お気に入りである。


 直前までプレイしていた「アール・ドゥ・レペ」では勝利こそ逃したものの、とにかく大きく前進したので、メグ美農園でも嬉しいことがあれば、今日一日いいことずくめである。


 それに期待して急いでコテージから外へ出ると、私が最後の一人だったのには驚いた。テレーザさんもカレンさんも、こちらを振り向いて会釈をする。エレナさんが笑顔で手を振ったときなどは、学校の屋上の出来事を思い出して心臓が喉から飛び出そうになった。


 農地の左半分の手前にはすでに黄色や赤色の実が、奥の方には赤くて細長い実が、いずれも生い茂った緑の葉に見え隠れしている。この色の対比が面白い。


 手前は形がピーマンなので、これがカラーピーマンなのだろう。奥の細長い実は、近づくと意外に太くて長い唐辛子である。鷹の爪というよりは、小型のインゲンに見えた。


 風が吹いて、葉も実も一斉にユラリと揺れる。VRゲームでこのリアリティには毎度のことながら感動ものだ。


 カラーピーマンの実は、普通のピーマンのように軽いので、中に空洞があるのだろう。匂いを嗅ぐと、青々としたピーマンのそれで、自己主張が強い。それにしても、どうしてこういう緑以外の鮮やかな色が付くのか不思議である。


 唐辛子は、触っただけで手が熱くなりそうなほど、燃えるような赤である。匂いも辛そうだ。元々は緑色らしく、完全に緑のもの、途中まで赤くなっているものがある。グラデーションがかかっている部分は茶色っぽく見える。


 実はまっすぐのものは少なく、大抵曲がっている。指で弾くと、イヤンイヤンと首を振るように揺れるのが面白い。


 そこへ、テレーザさんが近づいてきた。


「先に来ていたのは、エレナさんです。3時間前には来たそうですよ」


 テレーザさんに指を差されたエレナさんは、「今日はバイトを早めに切り上げて」と頭を掻く。


「私とカレンさんは2時間前に来て、みんなで実が生るところを見ていたのですよ。本当に面白いですねぇ」


 カレンさんも近づいてきて上機嫌に語る。


「このゲームで野菜の生長を見ていると、早回しのビデオみたいで、何度見ても飽きないの」


 三人とも、ここで実が大きく生っていくところを観察出来たようだ。とても羨ましい。少しRPGのウエイトを減らさないと、それは叶わぬ願いだ。ボス戦が終わったら時々RPGをサボろうかと、真剣に考え始める。


 エレナさんが近づいてきて、「見ていて、とても楽しかったです。こんな素敵な光景を初めて見ました。エレナ農園では、いつも枯れてばかりだったので、羨ましい」と満面に笑みを浮かべて言った。言葉遣いが丁寧に戻っているのはちょっと気になるが、心の底から嬉しそうな彼女の姿を見て、私まで嬉しくなった。

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