44.頭を冷やせ
「コニーリアさんって、自分が悪くて怒らせてしまった人がいた場合、どうします?」
「ん?」
コニーリアさんはゆっくり首を傾げて右手を顎に当て、目をぱちくりさせている。今考え中のようだ。さすがに、AIでもこんな質問を想定していないのか、回答を導き出すのに時間がかかっているようだ。
すると「謝ればいいじゃない」と至極当然な答えが返ってきた。
「いえ、そのきっかけがないのです」
「ん? ということは、相手と話が出来ないということ?」
私は、それが自分のこと――例の三人と話が出来ないこと――も含んでいる思った。なので、答えへの期待がグンと高まった。
「うーん……」
コニーリアさんは、また無言になる。その長いこと。なんか申し訳ないけど、イライラする。
そこへ、土の匂いがする風がまた吹いた。その時、彼女は指を立ててこう言った。
「そういうときは体を動かして、それから考え直すのが一番。きっと、いいことを思いつくわよ。さあ、続きを手伝って」
私以外の三人は、顔を見合わせて苦笑いをした。何で他人事のように言うんだろうと最初は思ったが、「いったん考えをやめて頭を冷やしなさい」ということかと一人納得した。
こういう時に、模範解答――どんな状況でも通用する万能の方法――など、ありはしない。
それがわかっているのに、コニーリアさんに訊いてみた私。それは単に、私が答える代わりに他人に答えを委ねただけだ。それが「救い」の正体。
つまり、私はエレナさんの悩みから逃げたのである。
(やっぱり、体を動かしてから考え直そう)
例の三人との接し方に悩む私は、コニーリアさんからもらったアドバイスを実践するため、鍬をつかんで立ち上がった。
◆◆◆