4.スパーリアルな大自然の世界
この「農場経営Tファーム物語」を一度プレイしているからか、ゲームの初期設定画面やアバター選択画面などはすっ飛んで、私は夜の世界に降り立った。
暗闇ではなかったので、林の中の広い空き地に立っていることがすぐにわかった。
首から下を見ると、長袖のチェック柄の服にジーパンのような長ズボン。チェック柄の色は赤にも思えるが、暗いところで赤は黒く見えるので、確証は持てない。
丈の高い草に膝から下が隠れているが、足を上げてみると長靴を履いていることがわかった。首に何かを巻いているので、それをちょっと引っ張ってから顎を引いて下を見ると、スカーフだった。なんとなく黄色いスカーフに思えた。
夜なのにこんなに明るいのはなぜだろうと空を見上げた途端、度肝を抜かれた。
都会で、雲一つない空だったとしても、絶対に見ることの出来ない満天の星。
頭のてっぺんに天の川らしい透明度20%くらいの光の帯。そこに目をこらすと、粉のように細かい星が集まって出来ている。星は全てが白色ではない。橙色も赤色も金色もある。
これだけの星が大地を照らしているから夜中でも明るいんだ、と星明かりの威力に感嘆した。
微風が頬や耳朶を撫で、木々の葉や草を揺らす。時折、せっかちな風がヒュウと吹いて木々の枝がざわめき、草がお辞儀をする。
スーパーリアルな夜の光景がVRゲームで忠実に再現されている。
私は、思わずつぶやいた。
「ここはどこ?」
もちろん、この問いに答えてくれる親切な誰かさんはいない。周囲を見渡しても、たくさんの木々が私を見つめ、無数の草が私を見上げている。
(そうだ。残っている昔のデータを確認しよう)
私は、さきほどやっていた異世界物のゲームと同じ要領――右手の指を空中にかざすやり方――で操作画面が表示できるかを試してみた。すると、その方法は共通だったらしく、体の正面にA4サイズの明るいスクリーンが現れた。もちろん、レイアウトはかなり違うが、スワイプやフリックの動作は同じである。
まずは、自分のプロフィールを見てみる。