34.土地を休ませる
今日は学校で変化が見られRPGで進展が見られたのだが、最後の最後でガッカリすることになりはしないか。それが心配でならなかった。
私はコテージの中で、コニーリアさんたちが「せっかく準備して待っていたのに遅いじゃない」と言って肩を落とす姿を想像し、ドアノブに手をかけながら立ち止まる。でも、気を揉んでいてはますます遅くなるだけだ。意を決してドアを力強く開けた。
目の前に広がる農場の右半分は、ニンジンもサツマイモも取り入れが終わって、凸凹した土地だけになっていた。私は四人を捜すため視線を左に向けると、ちょうど私に背を向けて左半分の土地を耕している四人が見えた。
「おは、じゃなくって、こんにちは!」
私の挨拶に四人が振り向き、手を振って挨拶を返す。
「こっちは何か植えたのですか?」
右半分の農地を指さす私に、カプラさんが「いいや」とのんびりした口調で答える。その言葉に続いて、オークさんが補足した。
「同じ場所にどんどん作物を植えると、土地が痩せるのじゃ。少し休ませんといかん」
「肥料をあげればいいのではないですか?」
「土には活力というものがあって、それは肥料では補えんのじゃ」
(それってもしかして、土の中の微生物のことを言っているのかしら?)
さらにクラウディアさんが補足した。
「それに、たくさん売ると、市場の人が買い叩くの。多すぎて売れないって」
(やっぱりそうなんだ……)
そこは、現実世界と同じ原理が働いているみたい。過剰供給すると、消費者にまとめて安く売らないと売れないし、余れば腐ってしまう。そんなゴミになるかも知れない物に、市場の人は同じ値段なんか払えない。
50分遅刻して焦ったけど、作物を植えていなくて助かった。
四人は、納得顔の私に背を向けて耕し始める。
「今度は、何を植えるのですか?」
コニーリアさんが鍬を振り上げた状態で、頭だけ振り返り「カラーピーマンと唐辛子よ」と答えた。
「カラーピーマンってパプリカのことですか?」
「カラーピーマンは色つきのピーマン。パプリカは肉厚で大きさも形も違うわよ」
てっきり、同じ物かと思っていた。
「ピーマンって、もしかして緑のあれしか知らない?」
「ええ……」
「唐辛子みたいな格好をして赤いピーマンもあるわよ。白いピーマンもあるし」
みんなは黙々と耕しているが、見た感じでは終わるまでに時間がかかりそうだ。ここですぐに帰ってしまうと悪いと思ったので、休ませている土地の様子を見に行った。
掘り返して凸凹のある土地は、空気を入れているように見えた。VRゲームなのに、このリアリティに再度感心する。きっと、今度こそテクスチャマッピングか何かで描いているのだろうと思って、凸凹に繰り返している部分がないかなど眺めていると、視界の中に動くものが見えた。私は、その動くものの方に視線を移した。
(あれ? 柵の向こうで、誰かがこちらを見ている。誰だろう……)