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メグ美農園の収穫祭へようこそ(改訂版)  作者: s_stein & sutasan
第1章 荒れ地の果てに
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3.放置ゲームを再開してみた

 VRMMOの世界から脱出すると、自分の体がベッドの上で仰向けに寝転がったままなので、まだ頭が現実に戻れない私を現実世界の天井が見下ろしている。


 瞬きをしたり大あくびをしてから力一杯手足を伸ばし、やっと転移ボケから解放された私だが、すぐには起き上がることが出来ない。しばらくの間、天井の細かい凹凸を目で追いながら考え事をする私は、深呼吸をしてため息を吐いた。


 散々考えたものの何も結論が出ず、腹も決まらず、かぶりを振る。


(よりによって、なんで林間学校の話になるかなぁ……。ああ、忘れたい。なんか、気を紛らすのにちょうどいい他のゲームってなかったっけ?)


 もう一度ヘッドギアをかぶって、右横のつまみを操作すると辺りが暗くなり、インストールされているアプリの一覧が目の前に映るので、視線を動かすことでスクロールする。


 ほとんどが、ちょっとプレイして、すぐに放置したゲームばかりだ。一度リストを整理せねばと思いながらさらにスクロールすると――、


(あれ? こんなのプレイしたんだっけ?)


 そう自問する私は、一覧に入っていた「農場経営Tファーム物語」というタイトルが気になった。どちらかというと、RPG系をプレイする私なのに、とてもそんなタイトルには見えない。


 そこで、記憶の引き出しを開け、タイトルと完全一致でなくても部分一致でもいいからその条件で記憶とタイトルを照合する。


 すると、ゲームの一場面――農村風景が脳裏にポワンと浮かんできた。でも、「思い出した!」って感じがしないので、たぶん、言葉から部分一致で拾い上げた画像の断片を元に脳細胞が都合良く生成した画像であろう。


 プレイしたリストには、日付もある。でも、その日付でプレイした記憶がない。ということは、ちょっとやってみたがすぐにやめてしまい、タイトルは記憶から完全に消えてしまったというのが正解だろう。


(つまらないから、やめたのかな? ……だったら、気にもしないはずなのに、こんなに気になるってどういうこと?)


 履歴にタイトルと日付がある以上、このギアを他人に貸した覚えがないから、プレイしたのは自分だ。母親が娘のゲームをこっそりプレイするなどあり得ない。あの人は、そもそもこのヘッドギアの操作を知らないのだ。


 気になり始めると、とことん気になる。今はもう、初めて見るゲームタイトルに興味をそそられた時と同じ気分。


 タイトルの「T」って何だ? うーん、引きつけるための策略か。とまあ、前もこんな感じで目に止まったのだろう。


 農場経営をVRゲームでプレイする。パソコンでもスマホでも出来るゲームの部類なのに、わざわざVRで何をさせるのか。


 きっと、昔もそういうふうに好奇心をくすぐられてプレイしたんだと思う。


 やってみようかと思う気持ちが湧いてくると、不思議なもので、ガッカリしてすぐにやめた、あるいは、大変すぎてやめたというプレイを躊躇するいろいろな言い訳が心の中で湧いてくる。だが、好奇心も負けてはいない。


 熱を帯びた接戦に有効勝ちを収めた好奇心が私を動かし、ただちに「農場経営Tファーム物語」との接続が始まった。



   ◆◆◆


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