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メグ美農園の収穫祭へようこそ(改訂版)  作者: s_stein & sutasan
第1章 荒れ地の果てに
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27.オーナーの行動に合わせた栽培

 昨日と同じくコテージの中のお誕生日席に一人で座っていた私は、急いで外に出る。すると、カボチャがすっかり刈り取られていて、カプラさんとコニーリアさんが耕していたところに何か緑と紫が混じったようなものが植えられていた。


 四人が手を振っている。私も手を振った。今日の日差しは昨日より強いので、ちょっと目を細める。現実の世界もこのゲームの世界も9月初めなのだが、どちらも残暑なのが面白い。ただ、夜は涼しいので、北国を想定しているのかも。


 新しく植えられたところに近づいていくと、緑色の大きな葉っぱに茎が紫色の作物とわかった。茎は、所々に灰色っぽい茶色が混じっている。実は付いていないが、明るい紫の花がいっぱい付いていて、花の中心が黄色いおしべなので、色合いもキレイで可愛らしい。


 茎の色からなんとなく作物がわかったが、一応オークさんに聞いてみる。


「何を植えたのですか?」


 すると、オークさんの代わりにコニーリアさんが得意そうに「秋ナスよ」と答えた。


「メグ美さんって、昨日もこんな時間に来たでしょう? 来るときに実が生っているのがいいか、花から実が生るところを見ていた方がいいか、みんなで考えたの。カボチャは実が生っていたので、私はナスは花をつけた頃がいいかなって言ったの。そしたら、みんな賛成してくれて。ナスは種から実を結ぶまで15時間かかるけど、10時間前に植えたのよ」


 ゲームに登場するキャラクターがプレイヤーの行動を分析して、喜ばせようと考えている。AIのなせる技かも知れないけど、心憎い演出だ。涙が出てくるほど嬉しい。


 10時間前というと、こちらの世界では23時。本当は、真夜中に植えることはないと思うけど、そもそも栽培にかかる時間が現実の何十倍も速いので、あくまでゲーム上の演出だからと割りきるしかない。


 私はしゃがんで花を観察した。茎の色は完全にナスだが、花はそれより薄くて明るい紫だ。授粉してこの花が落ちると、ナスの赤ちゃんが茎の色を受け継いでニューッと出てくるのだろう。植物の茎の色はほとんどが緑か茶色だと思うが、実の色になっているというのが面白い。


「トマトが生っているところを見たことありませんが、茎が赤だったりするのですか?」


「あら、面白いことを言うわね。ミカンの木の幹が黄色とか? もしかして、野菜は食べるだけ?」


「ええ……」


「じゃあ、いろいろ植えてあげるから……って、決めるのはオークさんだけど、これから勉強しなさい。本当は、植える種類によって土を変えたり、土を盛って(うね)を作ったり、土にビニールをかぶせたり、もっと前の季節に種を植えたりするんだけど、それはそういう設定の時に体験することね」


 このゲームは、実際の作物が育つ時期に時計を早めることができるが、コニーリアさんはそのことを言っているのだ。


 栽培したい作物を植える時期に一足飛びに時計を進める。ただ、それでは現実の時間と何ヶ月もずれることになってしまい、例えば今は9月だけど4月とかになってしまう。それがいいかどうかは、オーナー次第だ。管理人――オークさんは委任されているだけで時計を早めることは出来ず、今流れている時間の中で行動することしか出来ない。


(そこまでして植えたい何かがあるとき、そうしよう)


 私は、なるべく現実世界の季節とずれないようにしばらくゲームを進めることにした。

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