148.クイックモード解除に緊張する
いよいよ、日曜日の0時を回った。
いつもなら、起きたら10時をとっくに過ぎていたなんて当たり前で、VRゲームをプレイする以外はダラダラ過ごす日曜日なのだが、今日は真剣勝負をしなければいけないので目が冴える。
そう、ゲームの世界で15時30分きっかりにクイックモードを解除するのだ。ちょっとの誤差は許容するけど。
なんか、目が冴えていけない。
ちょっと一寝入りして……いや、絶対寝過ごす。
いっそのことゲームの世界にダイブしたら……いやいや、向こうで暇を持て余す。
どうしよう、この5時間以上の待ち時間。
仕方なく、深夜アニメを観て3時まで時間を潰し、ネットサーフィンで4時までつなぐ。
(ヤバい……。寝てしまいそう)
机に向かって座る自分が、いつの間にか船を漕いでいる。椅子や机が音を立てて、ハッと目が覚める。
本や漫画を読めば眠気も覚めるかと思ったら、逆効果。頭が重くなって、意識が飛んで、何かの拍子にふと起きて、よだれを拭く。
再度、ネットサーフィンをして、牛乳を飲んだ後、時計を見ると予定の5分前の5時50分。
「よーし! 恵、行きます!」
そろそろこの台詞、換えた方がいいかなぁと思いつつ、ゲームにダイブした。
◆◆◆
お誕生日席に座ったまま、指で画面を表示させて、ゲームの世界の時刻が15時30分になるのをひたすら待つ。
パタパタと分単位の数字が変わる。
8秒で1時間、つまり60分。1秒で約8回表示が変わっていく計算だ。
時限装置の時計がもの凄く早く動いていく感じ。
いやー、緊張する緊張する。
止めるのが早すぎることにならないか遅すぎることにならないか、瞬きも出来ずヒヤヒヤしながら待つ。
それにしても、現実世界とゲームの世界とで計算が面倒な時差になる。これはどこかで時計を進めて調整が必要だ。それは後で考えよう。みんなの意見を聞こう。
と、考えていたら、意識がそっちに持って行かれた。
ハッと気づいて時計を見ると15時を回っていた。4秒で30分が経過する。
(あわわわわっ、10分、20分)
30分の2桁目の3が見えた瞬間、画面をタップしてクイックモードを解除した。
危ない危ない。
もし『解除しますか? はい/いいえ』のダイアログが出たら、「バカヤロー」って叫んだかも知れない。
時刻は15時32分。
私は急いでドアを開けた。空を見るとちょっと雲の多い天気だ。
畑に目を移すと、いつもいるはずのオークさんたちが見えない。
気を揉む私は、コテージの裏へと走った。