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メグ美農園の収穫祭へようこそ(改訂版)  作者: s_stein & sutasan
第3章 収穫の時
144/150

144.復帰した三人

 恵美さんの気持ちはわからないでもない。現に、私もエレナさん、テレーザさん、カレンさんが誰なんだろうって気になっていた。


 でも、スタンスが違う。


 エレナさん、テレーザさん、カレンさんが身近にいる(えい)さん、(びー)さん、(しい)さんになんとなく似ているから気になっただけなのだ。そうでなければ、最初から「この人、リアルでは誰?」なんて思わなかった。



 教室に戻ると、ほとんどのクラスメイトが登校していて、私は拍手喝采を浴びた。


 おそらく、ユウが「()()()()は恵美さんとバトりに行った」とか何とか登校した同級生に吹聴したのだろう。


 予鈴のチャイムが鳴る。本鈴が鳴る。


 でも、(えい)さん、(びー)さん、(しい)さんは現れなかった。


 こうなると、心配で仕方ない。入院の延長になっていないだろうかとか、来る途中で事故に遭っていないだろうかとか。


 なんだか、家族みたいな心配の仕方だ。



 気がかりで昼食も喉を通らないでいると、教室にのそっと体を入れてきた人がいた。


 松葉杖を2本突いた(えい)さんだ。


 彼女を歓声と拍手が出迎える。


「みんな、心配かけて、ごめん」


 頬を染めて照れ笑いをする(えい)さんが自分の席に向かおうとすると、近くで食事をしていた数人の生徒が手助けしようとする。


「いいって、いいって。こういうの、自分で出来ないと本当に病気になっちゃうから」


 ゆっくりと危なっかしそうだが、机の間を移動して自席に「よいしょー」っと腰を下ろし、松葉杖を立て掛ける。


 続いて、(びー)さん、(しい)さんがゆっくり登場した。二人とも、松葉杖を1本突いている。


 彼女たちも退院の祝福を浴びた。


「みんな ありがとう」と、はにかみながら小声で応じるのは(びー)さん。


「大袈裟だよね、これ」と松葉杖がない方の手で松葉杖を叩いて笑うのは(しい)さん。


 心配しすぎて肩まで重かった私は、背負っていた荷を下ろしたかのように体が軽くなった。


 一番喜んだのは私。そして、感動して泣いてしまったのも私。


 一人ではしゃぎすぎてしまった。


 でも、こういうときは、これくらい、いいよね。


()()()()、泣き虫だなぁ。みんなまで泣かしちゃって、責任取れよ」


 そう言って、教室のあちこちで涙に誘われたクラスメイトを眺めながら、(えい)さんは豪快に笑った。


 しかし、その(えい)さんも、(びー)さんも(しい)さんも、うっすらと涙を浮かべていたのは見逃さなかった。


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