142.現実世界での再開
待ちに待った木曜日になった。ベッドから跳ね起きて居ても立っても居られない私は、母親特製の焦げ目の多いトースト、焼きすぎて固くなったベーコン、白身に茶色い縁取りのある目玉焼きを完食して、家を飛び出した。
校庭で廊下でたくさんの友達に挨拶の言葉をかけながら追い抜いて、一路教室を目指す。
息を切らして教室に飛び込むと、浮かぬ顔をしたユウとアカネが待っていた。
「おはっ! どうしたの?」
言いにくそうに顔を見合わせる二人の姿にピンときた私は、恵美さんの来訪を確信した。
ユウが心配そうな顔を向けてきた。
「あやめぐってさ、あの恵美って人と知り合いなの?」
やっぱりそうだ。わかっていても、ゾクッとして総身に粟立つ。
「あの人、ヤバいゲーマーって噂だよ?」
「知ってる」
「やっぱ、知ってたかぁ。あやめぐもゲーム好きだし。仲間内では有名人?」
私はユウたちが知らない意味で「有名人」と答えた。
「で、恵美さんがどうかしたの?」
「さん付けかぁ」
「いや、突っ込むとこ、そこじゃないし」
「体育館の裏に来てくれって」
「今から?」
「そう」
ユウとアカネに見送られて、私は体育館の裏へ向かう。さっさと終わらせたいので、駆け足で急いだ。
指定の場所に来てみると、後ろを向いて何度も背伸びをして人待ちをする長身の恵美さんが見えた。
さすがに、近づくと、足が後ろに引っ張られる感じがして重くなる。
彼女は、私の気配を察知してクルッと振り返ると、唇を三日月のように曲げた。