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メグ美農園の収穫祭へようこそ(改訂版)  作者: s_stein & sutasan
第3章 収穫の時
141/150

141.失ったものと失われなかったもの

 握手を交わしていると、ジャンヌさんがニヤリと薄気味悪い笑いを浮かべた。


 私はそれに違和感を覚えて、彼女の心の内を推量した途端、はめられたことに気づいた。


 4桁台のランキングにいる話は、高原ホテルで私が恵美さんへ伝えた話。このとき、私はノアールであるとは一言も言っていない。


 その話を私に向けられた今、ノアールは「何のことでしょう?」と(とぼ)けもしないで「はい」と答えてしまったのだ。


(やられたぁ!)


 これで、(みのり)(ぞの) (あや)とノアールが結びついてしまった。


 手足から血の気が引く。脂汗まで出てきた。


「後でどこかでお会いしましょう」


 その言葉を残して、ジャンヌさんが私に背を向けて立ち去った。


 行く手を塞ぐ野次馬たちが、彼女のために大きく道を空ける。敗者にねぎらいの言葉をかける者は誰一人としていない。


 彼女は、このゲームの世界で名声の絶頂から転落した。失ったものは大きいが、私はそれ以上にいろいろなものを失った気がする。



 彼女に背を向けて歩くと、野次馬の中に四人の仲間の姿があった。私は、ばつが悪そうに(こうべ)を垂れる。


「みんな。見ての通りだ。本当にすまない」


 これが隠し事の謝罪であることは、仲間にもわかってくれたはずだ。


「ノアール氏。顔を上げてくだされ」「見たことがないド派手の魔法、お疲れっす」「剣姫相手によくやるよ」「乙」


 仲間の声が胸に突き刺さる私は、顔向けが出来ない。


「昔、噂でしたが、チート能力を使う魔法使いがいると聞いたことがありますが、まさかノアール氏だったとは……」


「今まで隠していてすまなかった」


「ノアール氏。隠す理由もわかりますぞ。今まで相当悩まれたでしょうな」


 私は力なく頷いた。


「でも、剣鬼の鼻っ柱をへし折ってくれたのは、爽快でしたぞ」


「言うでない。好きで決闘などやってはおらぬ」


「わかっておりますとも。我らのパーティーに剣鬼の取り巻きどもが近づいてきたので、辛い決断をなさったのでしょうな」


「うむ」


「みなを代表して感謝いたしますぞ」


「その感謝の言葉、痛み入る」


「で、これからどうなさるおつもりで?」


「決まっておる。一緒にクエストだ」


「そうこなくては」


 四人の仲間は破顔一笑した。



   ◆◆◆


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