136.女剣士登場
広場に戻った私は、道行く人に見てくれと言わんばかりにわざと顔を向けた。魔法使いのローブ姿は何かと目に付くので、何人かはジロジロとこちらを見ていて、ヒソヒソと囁き合っている。
さすがに「ノアールここにあり」みたいな台詞は恥ずかしくて吐けないので、見つけてもらうまで待っていると、果たして冒険者風で強面の男が三人近づいてきた。
「もしや、ノアールさんで?」
険相で屈強な体躯の男に、さん付けで呼ばれるのも微妙だが、
「いかにも。して、何用か?」
と、恍けてみせた。
「ジャンヌの姉さんが呼んでますんで、ちょっくらご同行願いましょうか?」
「決闘か?」
「誠に、相すみませんが」
「決闘を申し込まれる筋合いはない、と伝えよ」
「いえ、そこんとこを、何とか申し込まれて欲しいんですが」
言っている男がごつい手を揉むのも珍妙である。
「断ったらどうするつもりだ?」
男三人がお互いに顔を見合わせた瞬間――、
「ぶちのめすまで」
低い女性の声がしたと思ったら、三人が後ろを振り返って、驚いたように左右へ避けた。
その間隙を縫って、銀色のミニスカートの鎧を纏った美女が、銀髪をなびかせながら薄気味悪い笑みを浮かべて現れた。
女剣士ジャンヌ・ド・ポワティエである。