132.作物の病害
現実世界で翌日曜日はいろいろ忙しかったので、農園の様子を見に行ったのは17時頃だった。
ゲームの世界では日が傾いていて、窓から伸びる光が部屋の中央にある椅子やテーブルの上も照らす。
そんな中、私はいつものようにドアを開けると、作物の葉の色が昨日と違って濃い緑色ではないことに気がついた。黄色が混じり、部分的に枯れているようなのだ。
私が手を振るとオークさんたちも手を振ってくれるが、心なしか元気がない。
「どうしたのですか?」
コニーリアさんが肩をすくめて首を左右に振る。
「病気で全滅したの」
「えっ!?」
近寄って、変色した葉に顔を近づけると、黄色や白の斑点が見える。カビか何かの病気なのだろうか。
「せっかく植えたのに、これじゃ収穫ゼロ。残念よねぇ」
コニーリアさんはがっくりと肩を落とす。オークさんは、そんな彼女の背中をポンポンと叩いて言った。
「動物と同じく植物も病気になる。年中無病息災とはいかんのじゃ」
確かにそうだ。
現実世界でも、病気に限らず、害虫や鳥獣の被害も起こる。そんな自然の脅威の中、必死に世代を残そうと実をつけるのだ。
これはもちろん、ゲームのイベントだと思う。
順調に生育してたくさん実をつけて、それを出荷してPTも貯まる。このサイクルに慣れてくると「なんだ、簡単じゃん」となって安易にゲームを進める。順風満帆のさなかに、このイベントが発生して現実を思い知らされる。
きっと、害虫や鳥獣もそのうち現れるのだろう。イナゴは見たことがないので、不謹慎な言い方だが、逆に見てみたい。
「さーて、一からやり直しね!」
コニーリアさんは腕まくりをするポーズを取り、ニッと笑った。
今回、4種類の作物とも全滅するという痛手を被り、費用、特に時間を無駄にした。でも、やり直せばいいや、と簡単に割り切ることが出来た。
ゲームだからこの程度の心理的ダメージで済んだが、現実世界ではどうだろう。
(私なら、作業に手が付かないほどガッカリしちゃうなぁ……)
果樹園だって、いろいろ被害があるはず。風が吹いて、せっかくの実が落ちることだってあると思う。
「さあ、やるわよ!」
コニーリアさんのかけ声で、片付けが始まった。なんだか、このメグ美農園は、オークさんよりもコニーリアさんに仕切られつつあるようだ。