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メグ美農園の収穫祭へようこそ(改訂版)  作者: s_stein & sutasan
第3章 収穫の時
127/150

127.三人の涙

 同室の他の患者さんが、看護婦さんに付き添われて病室を出た。うるさかったわけではなく、リハビリの時間らしい。


 しばらく談笑した後、さて、そろそろおいとましようかとなって、私たち五人で軽く手を振りながら三人に別れを告げる。


 そうして、私が最後に「お邪魔しました」と頭を下げて廊下に出ようとしたとき、(えい)さんが「(みのり)(ぞの)さん」と私を呼んだ。


 その意味がわかった私は、ユウたちに先に受付まで戻ってもらい、扉を閉めて彼女のベッドへと向かった。


「あのさぁ」


 彼女の問いかけに、私の心臓がズキンと音を立てた。やはり、彼女のこの言葉には、構えてしまう。


「心配かけちゃって、ゴメン」


「ううん。全然」


「お見舞い、ありがとう」


「いいえ。当然のことをしただけだから、気にしないで」


「なんか……優しくされると……優しくされると……」


 彼女は、涙が(せき)を切ったように溢れ出る。そして、嗚咽し、顔を手で覆った。


 これには私も(びー)さんも(しい)さんも、もらい泣きをしてしまった。


 しばらく泣いていた彼女は、真っ赤に目を腫らした顔を私に向けた。


「悪いけど、内緒な、泣いたこと。うちらの班だけの秘密な」


「わかった。約束する。早く良くなってね」


「うん。()()()()()()。待ってて」


 すると、(びー)さんも(しい)さんも声を揃えた。


「いくから」「待ってて」


 私は、これが()()()()()ことだと普通に解釈した。



 三人に別れを告げて受付に戻ると、ユウたち四人が待っていてくれた。


「ゴメン、待たせて」


 すると、ユウがニコニコして、早く何かを言いたそうな顔をする。


「普通に、いい奴じゃん」


「誰が?」


「あいつ。いや、あいつらかな」


「うん。みんないい人たちだよ」


()()()()のおかげだね。どんな魔法使った?」


「なんで魔法使い扱い?」


「いや、なんとなく」


「それより、来て良かったぁ。みんなの退院も早そうで、安心したぁ」


「乙」


 この時、私は、まさかユウがVRMMORPGの「アール・ドゥ・レペ」をプレイしていて、うちのパーティーに入ってやしないかと疑いの目を向けたのだった。



   ◆◆◆

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