118.ヘビーなVRゲーマーに絡まれた
「戦闘系は、今パラレルでいくつかやっているの。これでも――自慢しちゃうけど――全部上位にいるのよ」
自慢するのが嬉しそうだが、目は鋭い光を放ち、私を射すくめる。
「VRMMOですよね? そんなにいろいろとプレイされていらっしゃるのですか?」
「そうよ。RPGは私の生き甲斐。全ての時間を捧げるの」
「そうなんですか」
「あなた、そのVRMMOなんてサラッと言う感じ。もしかして、あなたもそっち系のRPGプレーヤー?」
言葉の調子から、私に急接近してきた感じがする。グイグイと身を乗り出してきて彼女の体が迫ってくるから、なおさらだ。
「あなた、何をやっているの?」
もちろんこれは、担任の先生が得意の叱責ではなく、ゲーム名を尋ねているのだが、最近先生に怒られてばかりなので、この言葉で条件反射的に私の心臓が跳ね上がった。
言うか言うまいか迷っていると、彼女が「ねえ、ねえ」と急いてくる。
「あ、あ……」
「ちょっと待って。当ててみましょうか? えーと、……『あ』だから……『アール・ドゥ・レペ』! どう? 当たり?」
ギョッとして目が泳いだ。
これはもう、白状したようなものだ。
その時、何人かの生徒の集団がそばを通りかかった。みんなこっちを見ている。「あの恵美と話している」「つかまったみたいね」「大変だわ」とヒソヒソ声が遠ざかる。
(ヤバい……。どうしよう……)
もしかしたら、ヤバめのゲーマーに関心を持たれたのかも知れない。
目の前にいる恵美さんは、私の怖い夢の中で登場したのが単なる偶然ではないような気がしてきた。
どこかで接点があったのだろうか? いや、まるで記憶がないから、初対面のはず。
「その顔は当たりね。私、『アール・ドゥ・レペ』の上位3パーティーにいるのよ。当ててみる?」
これは恐ろしい話だ。
上位3パーティーは4位以下の一桁上を行くパーティーで、三つ巴でしのぎを削っているので、他をどんどん引き離していく上位三傑だ。
「うわー、当てられそうだなぁ。なんか、知ってるって顔しているし」
恵美さんの唇が、キューッと三日月のように曲がった。