117.VRのゲーマー
同じゲーム仲間がいた。ちょっと嬉しくなって、恵美さんに近づける気がした。
「……ああ、もしかしてVRゲームに誘いたかったとか?」
「え、ええ……」
もちろん、これは嘘。単に、話を合わせているだけ。
でも、今にチャンスは来る。何を話していたかを推測できる言葉が出てくるはず。
「何のゲーム?」
恵美さんがちょっと乗り気になってきた様子。早くもチャンス到来。私はズバリ切り出した。
「の、農場経営――」
「興味ない」
一瞬で真顔になった彼女が、私に言葉を投げつける。
キーワードを口にしただけで速攻でリジェクトされ、頭の中が真っ白になった。
「なんか、おんなじこと聞く人いるけど――さっきもそうだけど――やらないわよ」
やっぱりそうだ。
英さんたちは、メグ美農園のオーナーを探っていたのだ。
恵美さんは、そのまんまの名前だから、まずは最初に疑われる。それが違うとなると、クラスの「めぐみ」関係の名前の人に一人ずつ当たるだろう。
――そうして、私に行き着く。
まずい。それはまずい。
これからどうしようと悩む私は、なぜか恵美さんの顔を見つめていた。蛇ににらまれた蛙とまではいかないが、気に入らない相手をバッサリ斬り捨てるような彼女が怖かったのは確かだ。
「何見てるの? どうしてもプレイして欲しいの?」
「い、いえ」
「他にないの?」
「えっ? 他ですか?」
「私、こう見えてもゲーマーなの。特にVRゲームに目がなくて。あっ、農場経営なんて、だるい系はやらないけど」
「なら、戦闘ものオンリーとか?」
「当然」
恵美さんが、何かを思い出しながら楽しそうに語り出した。