114.みんなで星空を眺める
地方ルールのない単純なゲームほど、不思議と場が盛り上がる。ルールの違いがあると、自分だけ不利な気分になって遺恨が残るからだろうか。
時が経つのも忘れ、無邪気に遊んでいると、廊下の割と近くの所から「消灯時間が過ぎている! 早く寝なさい!」と甲高い声が聞こえてきた。
「ニューライスの襲来確認! 撤収!」
英さんから警報が発令され、みんなはそれぞれ自分のベッドに戻って布団を頭から被り、私は散らかったカードをそのままにドアのそばのスイッチを押して消灯し、ベッドに戻るや否やカードとともに布団を被った。
すると、タッチの差でドアが開き、「寝ているの?」と担任の先生が問いかけたので、思わず吹き出しそうになった。こういう問いかけをする先生は意外に多いが、その誘導尋問に「はい」と答える生徒なんかいるはずがない。
もちろん、寝ていない。いや、眠れるはずはない。だって、楽しいから。
その後、みんなも寝静まったと思われる頃、私は布団から抜け出して、音を立てないように窓辺に立って夜空を見た。
ホテルの周囲に防犯のために明かりが付いているので、あの農場ゲームで見るよりは星が少ないが、それでも都会よりは断然多い。明かりで見えない星を、ゲームで見る夜空の光景から補完していると、両隣に人の気配を感じたのでちょっと驚いた。
なんと、三人とも窓辺にやってきたのだ。窓ガラスに顔がくっつくほど近づいて、無言で星空を眺めている。私は、誰に問いかけるわけでもなく、独り言のようにつぶやく。
「周りの明かりがなかったら、プラネタリウムみたいに見えるのかしら」
すると、英さんが「かもね。でも、そこに行かなくてもVRゲームで体験できるから」と答えた。
私は、「VRゲーム」の単語に息が止まった。
今度は椎さんが「そう。最近のVRゲームってグラフィックが凄くて、五感にも訴えるし、バーチャルを通り越してリアルに迫っている」と言葉を継いだ。
さらに美さんが「いってみると、えがきたくなるくらい、きれいで、どきどきする」と言う。
(そのVRゲームって何、って聞いてみようかしら?)
しかし、急に聞くのが怖くなって口をつぐんだ。