君が最後に居た場所は
あなたがこの手紙を読んでいるという事は、きっと私はこの世に居ないという事なのでしょう。といってもこの手紙は遺書と云った類の手紙ではないので、どうか安心して最後まで読んで頂けると幸いです。
それは私が20代後半の頃の話です。私は一身上の都合によりとある町へと一人引っ越しました。そしてその町の役場に勤める事になり、そこで戸籍、転入転出といった業務に就いておりました。
ある日の事、1人の女性が役場にやってきました。俯き加減に歩く30歳前半と思しきその女性は、転入届を提出すると直ぐにその場を立ち去ってゆきました。私はその町が過疎と高齢化という問題を抱えている聞いていたので、そのような若い女性が転入してきた事に少なからず驚きました。
その2カ月後、今度は50歳代の男性が転入してくれました。更にその1カ月後には20歳代の男性が転入しに来てくれました。毎日のように転入者が現れる訳ではありませんが、当初聞いていた過疎の話は何だったのかと、若い人も来てくれているじゃないかと、それで過疎になるならこの町自体に何か問題があるのではと思いましたが、当然そんな事は口に出来ません。小さな町ではちょっとした一言が命取りになりかねませんからね。私は20代の若造ですが、それ位の忖度は心得ています。
ただ少し疑問がありました。工場等の働き口がある訳でもありませんし、名産品と言える物もありません。そんな何がある訳でも無い小さなこの町に、何故に来てくれるのかと。そんな疑問を抱きつつも又一人、今度は20歳前半の女性が転入しに来てくれました。
「失礼ですが、この住所で合ってますか?」
私のそんな質問に対し、女性は一瞬にして目を大きく見開くと無言のままに俯いてしまいました。私は受け取った転入届を見て「どこかで見た事のある住所だな」と、そう軽い違和感を覚えて何の気なしに聞いただけだったのですが、その女性の反応に困惑し、私も黙り込んでしまいました。そこでスッと、私が手にしていた転入届の紙が背後から伸びた手により奪われました。
「申し訳ありません。確かに受理しました」
振り向くと、そこには同じ課で働く木下さんという40過ぎの先輩男性が立っていました。木下さんのその言葉に、女性は下を向いたままに軽い会釈で以って返事をすると、そそくさとその場を去っていきました。私はその様子をただただ無言で見ていました。
「岩見さん。これはこのまま処理して下さい。急いでね」
無言のまま佇んでいた私に対し、木下さんはそう言いました。その言葉には「何も考えずにさっさとやれ」と、そんな意味が込められているように感じました。私は「分かりました」と、ちょっとだけ不貞腐れながらも大人しく指示に従いました。
「やっぱり……」
木下さんが去った後、私は直ぐに確認しました。すると案の定、女性が書いたその住所は最近転入してきた方々と同じ住所でした。とはいえ、同じ住所にマンスリー的に住人の異動があったとしてもおかしくはありません。とりあえず今の私は波風嫌う公僕でもあるが故に「何か不思議だなぁ」という感想を以って、その場を良しとしました。
しかしその不思議な状況は終わりません。1,2カ月毎にやってくる転入者は皆同じ住所を転入先としてやってきます。幾らなんでも不審過ぎると思ったので、私はその住所に関する情報を調べました。
結果、私が受理した転入先の住所は全て同じ住所でした。更に調べてみれば、ここ数年内に転入してくる方々の全てが同じ住所であり、それは私が役場で働き始めるずっと前からそんな状況が続いていました。更に驚く事に、そこに転入してきた人は全てお亡くなりになっていました。そして亡くなった直後に新たな人が転入してくるという、そんなサイクルが続いていたのでした。更に驚かされたのが、亡くなられた方々の死因全てが自殺という事でした。私は何かとてつもない事に足を突っ込んだのではないかと、知ってはいけない事を知ったのではと、来てはいけない町に来てしまったのではないかと背筋が凍る思いでした。しかし同時に好奇心がくすぐられました。何も無い過疎の町で何やらミステリーな事が起きていると。
ということで私は意を決し、その住所の場所へと出かけました。
田んぼだらけの集落。集落と言っても殆どが空き家。住まわれている方と言えば、すこし大きめの家に独りで住む高齢のお婆さんだけ……いえ、続々と転入していくる方たちの2人だけといった方が正解でしょうか。そのお婆さんの家から200メートルほど離れた場所こそが、続々と転入していくる方々が転入先とする場所であり、先のお婆さんが大家となって貸している家があるという事でした。
元々は農具を納めていた倉庫を改造した6畳一間という小さな平屋建てがあるという事なのですが、生い茂った木々に囲まれて、外からでは全く見えずどのような家なのかすら分かりません。道路、といってもアスファルトで整備された道では無く、車がたまに通るであろう為に出来た、轍のある道に面した敷地の少し奥にあるはずの家なのですが、入口付近から覗いてみるも家に繋がる動線が直角に曲がりその動線伝いに木が生い茂り、中の様子どころか木々が邪魔して家の存在すら確認できません。とりあえず御挨拶っていう名目で敷地内に入ろうとしたところ、後ろから声をかけられました。
「あんた誰?」
声を掛けてきたのは高齢のお婆さん。その方が大家さんと思われます。
「あ、別に怪しい物じゃありません。私、役場で働いている物です。ちょっと此処の住人の方に――――」
「そんなん、邪魔なだけやき。とっとと、いね」
いね。帰れという言葉です。そのお婆さんは笑顔で私の言葉を遮り、すぐに背を向け去っていきました。私はその様子に「これ以上はまずいかな」と思い、仕方なくその場を後にしました。
「ねえ、岩見さん。あなた、あの家に行ったらしいじゃない。何しに行ったんですか? それに過去の情報を住基システム使って何か調べてたでしょ?」
次の日の朝、役場に出勤した私に対して開口一番、木下さんがそんな事を聞いてきました。
「え? どうして木下さんが知ってるんですか?」
役場の住民基本台帳システムを使用すると使用ログが残ります。なので、私がシステムを使用して何かを調査した事は分かるにしても、休日の私の行動を何故知っているのか不審に思い質問してみました。
「岩見さん。今日、仕事が終わってから時間空いてます?」
木下さんは私の質問に答える事無くそう言いました。その言葉に少しだけ威圧感を感じた私は従うほかなく、夕方5時の終業後、隣町との境近くにある小さな居酒屋へと2人で向かいました。
「岩見さんがあの家の付近でウロウロしてるって連絡が入りましてね」
「連絡? 誰からですか? あのお婆さんからですか?」
「…………」
木下さんは答えてくれません。
「あ、別に忍び入ろうとか思った訳じゃないですよ?」
「分かってますよ。別に岩見さんに悪意があったとは思ってませんよ。でも良くない。うん、良くないんですよ。まあ、話していない私達も悪いんですけどね」
「まあ、何となくですが、いわくつきって感じは私にも分かります……」
木下さんは俯きながらに溜息をつくと、ゆっくりと顔を上げ、天井を見上げました。
「岩見さん。あの家は自死専用の家なんですよ。我々の間では、あの住所は幽霊番地って言われてます」
「自死専用? 幽霊番地? 何の話でしょうか?」
「ズバリそのものです」
「…………」
「始まりは20年前位だったかなあ。あの家を1人の中年男性が借りてましてね。で、その方があの家で首を括ったって事があったんですよ。そんな事があった家を借りてくれる人なんて中々居ないだろうからって事で、大家のお婆さんは仕方なくリフォームをして家賃を下げて募集をかけた。まあ、非常に家賃が安い事もあってか直ぐに次の人が入りました。が、その新しく入った人も入居から数週間後、あの家で首を括った」
「…………」
「流石に大家のお婆さんも2人続けてとなると心が折れそうになったらしくてね、もう家を貸すのを辞め、その家を取り壊そうとしたらしいです。元々農具を納めてた倉庫でしたしね。それほど家賃収入を当てにしなくても生活も出来ていたそうですし。で、その事を知人に相談した所、『ならば、そういった人達の為に、最後の地として提供し続けても良いんじゃないだろうか?』と、そう言われたらしいです」
「最後の地……ですか?」
「ええ。まあ、その大家さんもそういう人達もいるのだろうと、そういう事をする場所や手段を探すのも大変なのだろうという絶大なる理解を示して、部屋の天井に太くて丈夫な梁を設置する様に、再びリフォームを施した」
「太い梁……」
「まあ、敢えてその理由は説明しません。で、貸りる側のメリットとして、水道や電気のインフラ代は2か月間は無料、つまり大家さん側が持つって事で再び貸し出した。なので、家賃2カ月分と礼金1カ月の前払いで、自分で電気水道を契約せずとも入居後即インフラを使用できるって訳。保証人も不要でね。言ってみればウィークリーやマンスリー的な感じかな」
「2か月は無料……ですか?」
私は思い至りました。その住所に転居して来る人は、数週間から1,2か月以内に亡くなっていました。
「分かりますよね?」
「いや、分かるって言うか……」
「じゃあ、はっきり言いますけどね、自殺志願の人に対して貸しているんです。今まで住んでいた場所、まあアパートなり実家なりに迷惑を掛けたくない。かといって何処で自殺すればいいのか分からない。そりゃ、社会への迷惑を顧みなければどこでも良い訳ではあるけれども、そういうつもりもない。かといって深い山の中で一人も怖いというか、場合によっては不審者って事で警察に通報されて、更に親族に連絡されてってのも困る。最後は狭い家ながらも、ゆったりとした気持で過ごした後にって感じですかね」
「いや、でも、そもそもの話になりますけど、そういう場所だって言うなら警察が見廻りに来たり周囲の誰か、若しくは我々役場の人間が自殺そのものを止めようとしそうですけど……」
「だからさ、そこはそういう場所って事で、まあ、警察も含めた周りのみんなも理解しているんですよ。そこに来る人たちの覚悟って言うのかな。そういうのを理解するっていうかさ。あ、でも、条件が1つだけあったな」
「条件?」
「ええ。借りる為の条件として、1人である事」
「複数人で住んでは駄目と言う事ですか?」
「そう、あくまでも自殺志願者用なんだよね。複数人だと無理心中とかさ、殺人的な可能性もある訳だしね。あくまでも自殺であると即断定できる状況にしておくことって言うのかな。なので1人で住む事ってのが条件だったね」
木下さんと話をしていて、ふと視線を感じました。私が振り向くと、お店の中にいた他のお客さんがチラチラと私達の方を見ていました。なんとなくですが、その居酒屋にいた他の客が私達の話を聞いているように思えました。そこでようやく理解しました。この話はこの町の暗黙の了解。警察を含む、行政、町民の暗黙の了解事項なのだと。
あの家で亡くなられた方はあの集落の端にある、廃寺の無縁墓地に埋葬されているという事でした。その費用は役場が出しています。親族がいらっしゃる方もいたでしょうが、無縁という扱いだそうです。警察も協力しているという事から、今までも問題になった事は無いそうです。最初に聞いた時には良い事では無いと思いました。でもそれが悪い事なのかと問われれば、そうは言い切れない気もしました。亡くなった方を一律に無縁として葬っている事には、いささか問題や疑問が無い訳ではありませんが、それ以外の事に違法性を感じません。単にそこに転居した人が自死しただけです。
誰かに話せば「何故止めないのだ」と言われるであろう事も分かってます。しかし、転居までしてわざわざ来た人達です。そう言った覚悟を持った人たちです。亡くなった方からすれば、そういう場所を提供してくれた大家さんに対しては感謝していると思います。静かな最後を遂げられた事に感謝している人が大半と思われます。だから私はそれ以上の事を問う事はしませんでした。
それからもどういうネットワークでそういう物件だと知るのかは分かりませんが、あの家には途切れること無く、引きも切らずに入居してきます。そして入居後、落ち着いたと思われる頃に、この世を去っていきます。そしてまた別の人が直ぐに入居します。
この事は町全体の暗黙の了解事項です。しかしながら、この事を自分の中に納めておくのも心苦しいという思いもあり、この手紙に記しておきます。
私にはどうする事が正しいのか分かりませんでした。ある種の福祉のようにも思えました。しかし亡くなった方がそんな最後で成仏出来るのかと問われれば疑問符が付きます。ここで亡くなった方の魂が成仏するように、この手紙を読むあなたに託させて下さい。
◇
そんな事が書かれた手紙を見つけた。地下にある倉庫を整理していて見つけた。手紙に書いてあるその町は複数の町と合併し、現在は存在しない。故に、この手紙は随分と昔に書かれたようだ。
っていうかさ、まじで? 今更? ちょっと待ってくれよ。だって、その場所って、ここだよね? そんな場所とは露知らず、アミューズメントパークを作ってしまったんですけど……
道理でね、なるほどね、そういう事ね。なんか停電だったり電気の瞬断だったりが度々起こるんだよね。ずっと気のせいと思っていたけど物が勝手に動いてるなと思える事象が度々あったしさ。他にもスタッフの数が多い、見た事の無いスタッフがいるなんて話も度々出てさ、数えるとそんな事は無いなんて事も多いしさ。
なるほどねぇ、ポルターガイストってやつね。何度調べても原因が分からなかった訳だわ。って事はだよ? 手紙の主の言うように成仏してないって事かあ。
つうかこんな手紙、色々とやばすぎでしょ。それにこんな事を託されてもね……うん、証拠隠滅しないとな。後々色々調べられて更にとんでもない話が出てこられても困るしな。
と言う事で、私は誰にも知られない様、手紙の完全消滅を図る事にした。すると先程まで点いていた部屋の電灯がフッと消え、真っ暗になった。いつもの瞬断かなと思ったけど真っ暗のまま。仕方なく一旦部屋の外に出ようかと思い、暗闇の中、手探りでドアノブに手をかけ開けようとしたその瞬間「ガチャ」と音がした。
「ん? 鍵が閉まった? ちょっと! まだ人がいるんだよ! 開けてくれ!」
ひょっとして誰かが間違って閉めたのかと思いそう叫んで見るも、外からは一切の反応は無かった。
「ったく、誰だよ」
仕方なく手探りでもって、ドアノブのすぐ下にある鍵を触ると確かに鍵が掛かっていた。まあ間違いは誰にでもある。それは良いとして直ぐに鍵のつまみを回そうとするも、何故だか一切つまみが動かない。何度もガチャガチャと鍵やドアノブを回すも一切動かない。
「ちょ、マジかよ。おーいっ! 誰かいるか! 開けてくれ!」
ドアをガンガンと叩きながらにそう叫んでみるも、その声に何も反応はない。ひょっとして私は従業員に嫌われているのだろうかと思ったが、私は自分の取り分を少なくしてでも福利厚生等に力を入れてきた。嫌われる要素は一切無いとは言い切れないにしても、ここまで性質の悪い悪戯をされる覚えはない。
「おーいっ! 誰かーっ! 開けてくれ!」
再び叫んでみるも何ら応答はない。本当にこれが悪戯であるなら幾らなんでも悪質すぎる。好かれてはいなくともここまで嫌われる覚えはない。
「おいおいマジかよ……」
そこでふと思い至る。幾らなんでも従業員がここまでするとは思えない。ひょっとして証拠隠滅を図ろうとした事で怒ったのかなと、そんなオカルト的な発想に思い至る。
「証拠隠滅はしませーん! だから開けてくださーい!」
私は独り大声で以って、馬鹿みたいだけどそう叫んだ。すると何という事でしょう! 電灯が点くと同時に「ガチャ」と鍵が開く音がした。そして「キィィィ」という音と共に勝手にドアが開き、電灯がチカッチカッと点滅した。
「えぇぇぇ……まじで……」
無事に部屋から出た私はとりあえず宣言通りに証拠隠滅は止めて、過去の事を色々調査してみる事にした。その調査の結果、その手紙に書いてあった問題の平屋が建っていた場所には、現在メリーゴーランドが建っている事が分かった。そのメリーゴーランドは回転が不規則になったり、煌びやかな照明が演出のように点滅、というか瞬断するって感じで、施設の中でも一番おかしな場所。お客がいないはずなのに「まだ何人か乗ってますよ」なんていう話もしばしば。変なキャラクターの着ぐるみを着た奴が乗っていたとかいう話もあったりで。なるほどね、そう言うことね。
そういった話を信じる信じないはひとまず置いておき、とりあえずはセオリー通りにって事で、施設の休館日にお祓いをしてもらった。が、効果は無かった。もう万事休すって事でデメリットをメリットにって考えで、メリーゴーランドを潰してお化け屋敷に変更した。その結果はというと……
『あの5体のお化け、こわかったー』
『天井に居た女の人、まじで怖かったー』
『ゾンビっぽいのに足掴まれた。ちょっとちびったわ』
『あの照明の感じイケてる』
『音が怖かったー』
なんて。そんな感じで高評価がネットに踊る。でもね……
お化けは5体じゃなく4体なんだよね。
天井に女の人のオブジェなんて無いんだよね。
足を掴むような仕組みは無いんだよね。
照明も勝手に瞬断したり、電圧が勝手に増減してるだけなんだよね。
音響設備は特に設置してないんだよね。
そう、ゴーストとの共存共栄を図ることに成功した訳だ。客が真実を知る必要はなく、十分に楽しめればそれが何であろうとも問題は無いだろう。さてさて今日の売り上げをパソコンに入力しないとなと思った所で「プツン」と、パソコンの画面が消えた。
「あ~あ、また停電だよ…………あ、そうか。忘れてた。早く行かないと」
私は直ぐにお化け屋敷の地下へと向かった。そのお化け屋敷の地下深くには慰霊碑がある。設計担当の人に「お化け屋敷の地下に慰霊碑を作ってくれ」と言ったら「何の為に?」とか聞かれて、なんとか誤魔化しながらもわざわざ作った自慢の地下慰霊碑だ。成仏してもらえるよう色々な手段を講じてはみたが、一向に成仏はしてくれなかった。なのでお化け屋敷を建てると同時に慰霊碑も建て、毎日お参りする事で共存共栄を図るという策に出て、それが見事に奏功した訳だ。
そして私は花とお菓子を慰霊碑に手向け、手を合わせる。すると地下室の照明がチカッチカッ、チカッチカッ、チカッチカッと、リズムよく点滅する。よかった。どうやら彼らは喜んでくれているようだ。しかし彼らが私の前に姿を現す事は無い。当然お化け屋敷の中に入った事もあるが、お客さんが言うような女の人とかを見たこと無いし、足を掴まれるなんて経験も無い。恥ずかしがっているだけかもしれないが、なぜか彼らは私に対してだけは一切姿を見せてはくれない。とはいっても、私がパソコンで作業をしている時、後ろの窓から何かが覗いている事には気付いているんだけどね。時折その何かがパソコンの画面に映り込む事があるから、彼らが傍にいるのは分かっているんだよね。思い切って私が振り向くと、そこには誰もいない。ほんとにシャイな者達である。しかしちょっとお参りが遅くなったというだけで停電や瞬断を起こすのは止めて貰うと助かるんだけどな。まあ、私が出勤したら自動で照明を点けてくれたり、ドアを勝手に開けたりしてくれるから楽は楽なんだけどね。
実際、問題の平屋でどれくらいの人が亡くなったのかは分からない。どのくらいの魂が成仏済みで、どれくらいの魂が未成仏なのかは分からない。そんな未だに成仏せずここに棲む者達は皆、楽しんで手伝ってくれているように感じなくもない。であれば、いつか成仏するその日まで、手伝ってくれるとありがたい。
私は当施設の経営者にして支配人。毎日のお参りを欠かさずにやるのが最優先の使命である。
2021年02月25日 4版 誤字訂正他
2020年04月22日 3版 誤字訂正
2019年09月11日 2版 句読点多すぎた
2019年06月24日 初版