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第5話 紅華? ベニカ?

 衝撃の事実が判明したのがまさにショックだったのでしょうか? 何だか少し頭がクラクラします。


「おや、ベニカお嬢様はお腹が良くなってお眠かい?」


 お眠……ああ、言われてみれば……あれ? ワタクシ昨日から丸一日以上寝てましたよね? まだ眠れるんですの?


「コーデリア様、あのワタクシは昨日一日中寝てましたよね? まだ眠いんですけど……変じゃありませんか?」


「変? そうだねえベニカお嬢様は成長期だからねえ、寝る子は育つっていうだろ?」


「成長期? そうですの?」


「ふふ、まあそれは冗談だが」


 あの……コーデリア様? ワタクシ、信じましたのよ?


「何にしても倒れたばかりだ、無理をするものじゃないよ。それにお腹が良くなって、胃の方に血液の流れが集中すると眠くなる。特にベニカお嬢様は貧血気味で血が足りてないからね」


 ちゃんと科学的な理由があるじゃありませんの! コーデリア様ったらワタクシ揶揄ってますわね! ううぅ、それにしても眠いですわ。


「コーデリア様、申し訳ありません。ワタクシ本当に眠気が限界ですわ……」


「ふふ、気にするんじゃないさね。昼食時までは私も控えているからね。ゆっくりお休み、お嬢様」


「コーデリア様、お嬢様のお昼食は如何いたしましょう?」


「ふむ、軽い物なら平気だろう、栄養薬に頼り過ぎるのも良くないからね、蜂蜜入りのパン粥はどうだい? ベニカお嬢様もそれなら食べれるだろ? ミルクは栄養価もバランスも良い」


「承知いたしました、そちらを準備いたします」


「おや? すっかりお休みの様だね」


「ふふ、お嬢様ったら、コーデリア様がいらしてくれて安心されたのでしょうね」


「寝顔は本当に天使だね、もう少しふっくらしてくれると私も安心なんだが」


「これからは小まめに間食を準備いたします」


「そうしておくれ」


 目を閉じたワタクシの耳に入って来た会話はここまでですわ、その後は本当に意識が無くなって……



 私は、少し混乱していた。うん、間違いなく私だ……


 しかし……何故なの?? 意識が途切れるまで私は確かにベニカだったよね? そして間違いなく紅華でもあったわ、なのに……


 今の私は紅華……いや違う、そうベニカとしての記憶もある。先程までの私がベニカに紅華を足したような感じ、そうね主体がベニカだった感じ、けど、今の私は紅華にベニカを足した様な感じ、主体が紅華である私。


 私はベニカと統合されて、交じり合って消えたんじゃなかったの? いや、ベニカの時にも私の記憶が別の意志を持って騒いでいた様な気配は有った。今も私が表に出てきてベニカの記憶が混乱している様な気配がする。


 二重人格なの? 紅華の時の記憶、前世の記憶を思い出して、人格が分裂した? その割に私はベニカでもある。ベニカだと自覚があるわ。人格が二つある様な気がしない……表と裏? 表裏一体? 一つの人格の表と裏の様な奇妙な感覚の方が強いわね……


 別人の身体に憑依したわけではないわよね? だって私はベニカだって確信があるわ、13年間過ごしてきた思い出もある。しかし34年間過ごしてきた紅華としての思い出だってある。


(どちらの意識がより強く表に出ているか、それだけの違いなの?)


 この意識の切り替わりの条件、それは何? 昨日朝目覚めた時は間違いなく私は紅華だったわ。あの時はベニカの意識も記憶も無かった。紅華の私はヤケ酒を飲んで、その意識の続きで目覚めた……


(あの後、一日かけて紅華とベニカが統合されたの? うん、何となくそんな感じね。それまでのベニカに紅華としての記憶は無かったわ。それで丸一日寝て居たって所かしら?)


 まあその辺は追々考察しよう。先ずは現状把握が第一!!


 問題がある、非常に由々しき問題だ。


(先ずはギロチン、これだけは絶対に回避! 何としても回避!)


 そう寄りにもよって転生したのが悪役令嬢! 何故なの? いやベニカが嫌いなわけじゃない、嫌なわけじゃないよ。こんなに美少女に転生させてもらって嬉しい! しかも貴族のお嬢様! 夢にまで見たセレブ生活! ……けど悪役令嬢なのよね……こんなに私良い子なのに何故?


(うん、とっても良い子、それはそうなんだけど……)


 そう問題の二つ目はこのお嬢様、ベニカ自身だ。このお嬢様ヤバい、もう訳が分からない程ヤバい。本人にも自覚が合って矯正しようとする意思が有るのは分かる。分かるんだけど……


(真正のドSよ、もうどうにもならないくらいドS!)


 ……シオン、そうシオン、ベニカはシオンを見ると、縄で淫靡に縛り付けて拘束、羞恥に頬を染めたシオンを眺めてウットリしたくなる。鞭で叩いて可愛い悲鳴を上げさせて、怯える子ウサギの様なシオンに許しを請われて、身を震わせたくなるの。そして土下座をしているシオンの背中をヒールで踏んで、高笑いを上げている……そんな妄想が脳内で再生されてるわ……紅華の知識、記憶が加わってそれが悪化している感じがあるけど、もうねSとしての素養が高すぎる……


(ダメでしょ? いやベニカそれはダメよ?)


 実際にやったわけではない、そんな記憶はベニカには無い。ベニカは姉の様にシオン慕っている。


 しかし……そんな妄想が、頭の片隅で燻り続けている。


(シオン……そうシオンも不味いのよね、彼女、本当に極上のMよ。もうね見ただけで分かる位極上よ。他の侍女も美少女揃い、調教したらそりゃとても映えるでしょうけど、シオンだけはレベルが違うわ)


 ベニカとの相性が最悪だわ……ある意味最高なのかもしれないけど、私にとっては最悪。ベニカのSを刺激してやまない彼女の存在は非常に危険。


(それにシオンは、彼女間違いなくそっちの趣味、いや彼女がMって訳じゃないのよ、シオンはベニカが好き、本当に大好きだと思う。そう性的に好き、シオンは……絶対に同性愛者……百合? いや……そんな可愛いモノじゃないレズね)


 私の思い出せる範囲、そうベニカの記憶の中のシオンは、何時も優しく、ベニカに尽くしてくれている。しかし、彼女はもうどうにもならない位ベニカの事が大好きだ。


 お風呂では侍女がベニカを洗う、そう体の隅々まで彼女達がベニカをあらう……


(他の侍女も、ベニカを好きよ? 若干百合な娘ばかりなのは分かってるんだけど……シオンは別格、彼女、ベニカの身体を洗いながら性的に興奮してる。もうね、指使いが抑えきれてない……まだベニカは13歳なのよ? シオン、お願いだからもう少し抑えて……)


 ベニカの事が大好きなシオンと、シオンの事が大好きなベニカ、相思相愛、相性もSとMでバッチリ!


(止めて……お願いだから止めて! これ以上ベニカをSにしないで!!)


 そうこのままだと間違いなくザマァな展開一直線だ。乙女ゲーの第二弾のイベントで、Mの素養の有る主人公にベニカな女王様がS調教を仕掛けようとするイベントが有ったのよ! 主人公が苦しんでいる姿に、ベニカが陶然しているのよ!


 それどころかイケメン達相手にベニカがS調教を仕掛けるイベントもあったわ! イケボで悶えるイケメンの姿に、乙女たちが心震わすボーナスイベント。そうベニカったらノリノリでイケメンを調教するの!


 別に本格SMじゃないわよ? ボンテージファッションでSM部屋でとかじゃないの、魔法学園の競技やなんかで偶然、そんなシチュエーションで主人公やイケメンが苦しんでいる様を見て、ベニカが妄想の中でって奴なんだけど、ボンテージファッションで女王様なベニカがまさにって感じで……Mな男子にも大人気のイベントだったわ……


 けどね、ベニカは悪役令嬢、そう必ずザマァな展開が有るのよ! この後、彼女はドジっ子の本領を発揮して、自分が同じように苦しむ事になるの!


 しかも! そうしかも! ベニカはMなのよ! ベニカったらクララに調教されている自分を妄想して悶えているのよ! どうなってるのこの娘!! ドSでドMって!!


 ザマァな展開でもその苦しい状況に最初悔しがってるけど途中からウットリして悶えて周りからドン引きされる、レディにあるまじき羞恥を晒すザマァ!


 生き恥じよ? 気高く美しいベニカお嬢様がドMだって周囲にバレるのよ? もうね生きて行けないわ! ってかお嫁に行けないわ!


 ……そうクララも不味いのよ、彼女もドS! これは本当に間違いないくらいドS。昔からクララはベニカの為に、心を鬼にしてベニカを躾けているのだけど、ベニカが苦しむ様をみて、顔を上気させている事が有るの……無論表面上は真剣にベニカにレッスンしている風なんだけど、レッスンが厳しく成ればなる程クララったら絶好調よ。


(相性よね、ドSでドMなベニカの周りに、シオンとクララが居る不幸。素養の有る娘の性癖を刺激しまくるこの二人……)


 でも二人がベニカを本当に大事にして愛してくれているのは事実。そしてベニカも二人を姉の様に慕っているのも事実。


(引き離す事なんて出来ない、そんな事、私だって考えたくもない。ならベニカには絶対に無理)


 そうベニカが心を強くもってその性癖を抑え込むしかないのだけど……しかしベニカは女性だってイケル口……


(この娘どれだけ業を背負ってるの……? 美少女に成った代償なのかしら? 見た目は兎も角性癖がアブノーマル過ぎる!!)


 私が可能な限り前面に出た方が、今後ザマァ展開を回避しやすくなると思うんだけど……前面に出てくるための条件が分からない。私の中のベニカの記憶も私が前面に出る事には賛成している風があるのに……


(何とかして、この入れ替わりの条件を探る必要があるわね。少なくてもベニカが暴走しないように抑える手段を見つけないと不味いわ)


 そう私は自身に問題を抱えている。他にも問題山積なのに、先ず私自身が問題なのだ!


(くぅぅぅ、けど嘆いてたって問題は解決しないわ、先ずは現状把握の続きよ)


 この異世界、そう乙女ゲーの世界……の筈な異世界にも問題が山積している。


(なんで私が設定していない、色々な設定が出てくるの?)


 問題はそこだ、この世界には、私が設定した覚えのない事が沢山ある。この世界は本当に私の作った乙女ゲーの世界なのだろうか?


(そもそも第一弾なのか第二弾なのか……第三弾って可能性も有るのよね。大体乙女ゲーの世界って何? そんなものに入れるの?)


 だが現実問題、私はイザベラ・ベニカ・フォン・アシュリーになっている。


(早急にこの世界が、私の作った乙女ゲーと何処まで一緒なのか確かめる必要があるわね。今の所、私の作った乙女ゲーだと分る証拠はベニカ自身、そしてベニカの記憶にある二人の兄の容姿だけ)


 そうベニカの二人の兄は私の作った乙女ゲーの第二弾のソシャゲーで追加された攻略対象のイケメンだ。


 ベニカの記憶にある。ライト・バルト・フォン・アシュリーとジーク・アイス・フォン・アシュリーは私の知っている乙女ゲーのイケメンと瓜二つだ。


 長兄のライト兄様は今年で16歳、知的で優雅な貴公子よ。本当に智謀に富んでいて、まだ家督は継いでいないのに、魔法学園に通いながら既にお父様から領地経営を一部任され辣腕を振るっているわ。


 将来が約束された次期侯爵。


 アシュリー侯爵家の者の特徴、金髪碧眼、男性なのに雪の様に白い肌、妹である私から見ても美しい青年。


 性格はやや冷淡にも見える程クールで冷静。しかし実は情熱的で一途なの。ゲームでは最初、主人公に冷たい態度をとるのに、一度その恋を自覚してからは、主人公を自分が傷つくことも厭わず守る。男のツンデレだ。


 そして主人公を嫌うベニカとの間に挟まれ苦悩するのよね……それでも決して主人公を見捨てることは無いほど一途。その容姿や普段のクールさにも関わらず、裏では主人公にだけ甘い言葉を囁いてくれる……その二面性にファンも多かった人気キャラだ。


 次男のジーク兄様は今年で15歳、誠実で勇敢な騎士ナイトだ。兄のライトを支え、将来は伯爵位を拝爵して伯爵になることが決まっている。現在は魔法学園に通いながら近衛騎士団にも所属していて、近衛騎士団では小隊を任されている小隊長だ。


 若輩ともいえるこの年齢で武の才能を開花させた若き天才剣士、既にこの年で、近衛騎士団でもトップクラスの剣の腕前なのよ、すご過ぎよね。更に魔法にも優れた魔法騎士として、その名を国中に轟かせている若き俊英よ。


 少し赤い金髪に、優しいブラウンの瞳。アシュリー侯爵家の者としては珍しく釣り目が目立たない。あれ程強いにも関わらず、穏やかな性格でとても優しい。ライト兄様と本当に仲が良く、ライト兄様を支える剣になると公言している。


 ゲームでは、最初から主人公に対して優しく、誠実。しかし自分の立場を自覚していて、ライト兄様への遠慮と、主人公を嫌う妹への思いから苦悩するの。ゲームでは最終的に愛している主人公と結ばれることを選択し、アシュリー侯爵家を出ることになるわ。何処までも主人公を愛し、護る誠実な騎士としてこちらもファンが多い人気キャラだ。


 この二人はベニカの記憶でもゲームのキャラそのまま、若干ゲーム時よりも若いけど、それはベニカも同様、だからここはゲーム開始時よりも以前の世界なのだろう。


(そう私だけなら偶然もあり得るけど、他に二人もゲームと全く同じキャラが居る。そんな偶然あり得るの? しかも名前まで一緒……)


 偶然とは流石に思えない。それに今日は休日で魔法学園は休みのはずよね? ジーク兄様はまだ学生でもあるから今日は騎士団もお休みで家に居る、昼食時には食卓にお二人ともいる筈だから、少し話して確認してみようかしら?


(ベニカの記憶にある二人のお兄様は、間違いなくゲームの中のイケメンと一緒。けど……まあこの二人は安パイよ、私がお兄様達に手を出す主人公の邪魔さえしなければ、ザマァ展開にはならない筈)


 兄妹なので私が唯一関わっても、というか関わらざるおえないイケメンだ。可能な限りその動くご尊顔を拝見したい。記憶には有るけど現実とは違う、そう私の中で紅華がそれを見たがっている。


(はぁぁ、お昼、まだなのかな?)


 薄目を開けて確認すると、チェーンとハンナがベットの脇で椅子に座って静かに本を読みながら控えている。私が起きたらすぐにお世話をする為だろう。なんて忠実なんだろうこの世界の侍女は……


(そうなのよね、メイドじゃなくて侍女……)


 その服は立体縫製で、胸を強調するかのような上半身は、身体にピッチりそった形状、それでいて細く搾った腰から下は、フレアスカートの様に優雅に広がっている。スカート丈はひざ下、長すぎないのは動きやすさ重視なのだろう。色はアイボリー、みんなお揃い格好って事は制服な筈よね? なのに細かな刺繍が施してあってとても高価に見える、侯爵家の侍女としての品位を示すためなのかな?


 そのワンピースの上から、優雅なパフスリーブの付いた濃紺の上着を羽織っている。何故か、胸の上と下で前を止めてその美しい胸を強調するデザインなのよね、誰の趣味なのかしら? 細く絞った袖にも優雅に刺繍が施されていて、袖口の飾りボタンもとても綺麗。この飾りボタン、宝石に金の台座に見えるんだけど本物? まあ貴族のご令嬢お付きの侍女がニセモノなんて身に付ける訳ないか……流石は名門貴族と言ったところよね……侍女の制服にかけている値段が半端じゃ無いわ。


 足元は白いストッキングに同色のパンプス。ヒールは三センチと言ったところかな? これも飾りが綺麗ね銀? いえプラチナね! 頭の上のレースも優美なヘッドドレスも可愛いわ。皆、髪をアップに優美に纏め、動きの邪魔にならないようにしているけど、髪を下ろせばそれなりの長さよね? はぁ~本当に美少女揃いね、なんてレベルが高いの、これで侍女?


 それにしてもこの侍女服、造りも素材も半端なく高級そうね。紅華の知識だと、一着でうん十万、いや飾りボタンなんかのアクセサリーを入れれば数百万円かな? それを制服として侍女に着させているアシュリー侯爵家は、一体どれほどのお金持ちなの?


 それにベニカは本当に箱入り娘よ。この家の外の知識が殆どないわ。同年代の友人もいないし、この五人の侍女と一緒に、幼少の頃からずっと屋敷の中で過ごしている。そしてそれが貴族の令嬢として当たり前だとベニカの記憶が告げるわ。


(けどこれからはそれじゃあダメね。もっと情報を集める必要があるわ。何としてでも生き残る! その為には情報を集めながら自分を鍛え、そして自活の道を探らないとダメね)


 『魔法を鍛える』このベニカの方針に私も賛成よ。他に方法はないわ。ベニカの華奢な身体では武術の方はあまり期待できないからね。ただジーク兄様のあの才能を見る限り、その血を引いているベニカも、才能が無いわけではないと思う。


 それにこのままでは自分の身を守るために、逃げる事も出来そうにない。身体も適度に鍛えるしかないわね。


(なに私だって学生時代はバレー部のキャプテンだったのよ。運動は得意よ。このひ弱なお嬢様の身体も立派に鍛え上げて見せるわ)


 前世では死ぬ直前は余り運動は出来ていなかったが、学生時代は鍛えていたのだ。多分大丈夫な筈。


(それにベニカは人間じゃないのよね? エルフに牝牛人族? 他の種族の血を引いているんでしょ? エルフって言えば身軽な森の民。華奢に見えても案外動ける? まあやってみないと分からない。早速明日くらいから特訓開始よ!)


 何故今日からじゃないかって? 倒れたばかりのベニカがそんな事を今日から始めたら全力で止められるわ。明日からだってどうだかわからない位よ。


 ……もうねベニカって本当に甘やかされて、大事に大事に育てられてるの。


 両親はやっとできた待望の女の子として、目の中に入れても痛くない程の溺愛っぷりよ。


「ベニカは無理して嫁に行かなくても良いからな! 大丈夫だ、私が一生ベニカを面倒みる!」


「貴方ったら、けどそうよベニカ、貴方は華奢ですからね、変な男の所に嫁いでも……貴方はお嫁に行かなくても、お兄様達が居るのですから、大丈夫ですよ」


 貴族の令嬢は普通、政略結婚の駒にされるのが当たり前なのよ。だけどベニカは別、アシュリー侯爵家にはルイバトン聖公国での確固たる地位が既にある。それにベニカはエルフの血が濃い事による華奢さを、ずっと家族に心配されているから、政略結婚の駒とは考えられていないらしいわね。


 今回の第三王子との婚約も、公爵家からの要望に沿う形で進められている側面が強いのよね。国内の大貴族との関係を保つために、各侯爵家で候補者を出して、その中から選ぶようにしている見たい。だけど、アシュリー侯爵家はそれに乗り気ではないのよね。


 さっきも言ったけどルイバトン聖公国内でのアシュリー侯爵家の地位は盤石。今更公爵家と関係を強化する必要が全くないわ。その為、第三王子との婚約も先方が望んだ結果……


(にも関わらず、この第三王子は婚約破棄しちゃうのよね……イケメンだけどそれってどうなのかしらね? だってそれってベニカが可愛いから、見た目だけで選んで自分から婚約を望んで、他に女が出来たから、そう主人公が現れたからって一方的に婚約破棄でしょ? 普通に考えて最低漢よね? まあだからこそ、婚約破棄された娘の名誉の回復の為って事で第二王子と婚約しちゃうんだけど……)


 取り敢えず、この婚約は断る。断固拒否よ! アシュリー侯爵家の誰も望んでいない婚約の所為で、ギロチンなんて冗談じゃないわ。


(昼食の席でそれを両親にお願いしてみよう、お兄様も味方してくれる筈!)


 お話を聞く限りでは二人の兄は共に、この第三王子と反りが合わない見たい。どちらも何方かと言えば第二王子と仲が良いようね。そして何よりベニカに激甘だわ。


「ベニカ、お嫁になんて行かなくても俺が一生養う。親父の所? なんでそんな所にベニカを預けないとダメなんだ! 大丈夫だ、俺は絶対ベニカと仲良く成れる嫁を貰う。だからベニカは俺の所にずっと居れば良い」


「ライト兄さん、それはでは嫁候補の選定が益々困難になるよ。ライト兄さんはアシュリー侯爵家の跡取りなんだから。ベニカの事は僕に任せて、アシュリー侯爵家の将来を考えて結婚してくれないと。僕は次男だからね、最悪結婚する必要もない。ベニカの面倒は安心して任せてくれていいよ」


「お前だってアシュリー伯爵家を興すんだろ! 既に領地だってあるんだ。そんな訳に行くわけないだろ! ズルいぞジーク!!」


 とまあこんな感じだ。若干釣り目で大変生意気で高飛車に見えるベニカだけど、家族はベニカがお付きの侍女にだけでなく、屋敷内の全ての使用人に対して優しく、見た目よりもずっと素直で可愛い事を知っている。


 見た目で損をしがちな可憐な妹が可愛くて仕方がないらしい。


(まあ中身はドSでドMで、更に男女両刀なんだけどね!!)


 本当にベニカは何でこうなんだろう……優しくて素直で可愛いのは間違いないが、見た目で損と言うか、性癖だけは見たまんまだよね?

 ……私の中でベニカの記憶が頭を抱えているのが分かる。


(うん、まあ生まれ持った性癖ばっかりはね、本人にはどうにもならないよね)


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