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第10話 アシュリー侯爵家の人々

 気合い入りまくりと思いきや、いきなり手加減して宣言にお兄様達は二人ともテーブルに突伏してます。


(ああっ、イケメンはズッコケてもカッコいいわね)


「ベニカ、流石に今のはどうなんだ?」


(うん、スッと表情を改めたライト様は、やっぱりクールよカッコイイ! 氷の王子様だわ!)


 ああっ、安心したら、お腹空いたかも知れない。そうよ、明日に備えて、涙を拭ってお昼を食べないと!


「ベニカ、楽して強くはなれないよ?」


(キリリとした表情が似合う!! はぁ……イケメン! なんて凛々しい! ジーク様素敵!)


 なんにしても、先ず身体作りの基本は食事よね! 良い匂い!


「二人共、何を言ってるの、訓練当初から貴方達が出張ってくるなんて、ベニカを潰す気ですか! というわけでここはワタクシが!」


 パン粥か食べるの初めてかも! お粥の『パン』バージョン? けどミルクなのよね? リゾットの『パン』バージョン? 初めての食べ物はこう最初の一口が緊張するわ。


「母上こそ何を仰っているのやら、スケジュールにそんな空きは無い筈ですが? それに昨日はベニカの所に随分と入り浸っておいででしたよね?」


 あっ、美味しい! これ美味しい! 優しい甘さ! 何だろ? 蜂蜜だけじゃ無いわね……何か別の甘さがあるわ……


「母上、昨日キャンセルした予定の振替でスケジュールが押せ押せなのでしょ? えっ? ああ、僕やライト兄さんは自分の訓練の時間に、ベニカの訓練を序でに見れば良いだけなのでご心配なく」


 これはっ! この優しい甘さ! コーンだわ! スイートコーンね! けどコーンスープ程濃くない……これ隠し味に少しコーンスープ入れてるのね! コンソメの風味も微かに感じる、流石だわ料理長……こんな簡単料理にまでこの工夫!


「くぅぅ、けどやっぱりダメよ許可出来ません、貴方達と訓練なんて最初からハード過ぎるわ! クララ、シオン、チェーン、ハンナ、アニス、侍女の方でベニカの訓練をなさい。エルリックの許可は出ました。今後は魔法訓練を解禁します、よろしく頼みましたよ」


 バターの風味が良いわね……コクが加わって……芳ばしい感じ、普通に入れたんじゃ無い? 焦がしバターかしら? 甘さの中に程よい塩気、有塩バターねコレ! クルトンも美味しい! クルトンもバターで揚げてる!


「はい奥様お任せを、明日までに訓練メニューと訓練時間を組み込んで変更しましたスケジュールを提出致します」


(あら? スケジュール? クララ今そう言ったわよね? えっ……今までも私にスケジュールがあったの? 何だろう……時間とか気にしないで、侍女に勧められたりした事を、やったりやらなかったりして、なんとなく過ごしてたわ……気分が乗らないと断って別の事してたけど……もしかしてその度にスケジュール組み直してたの?!)


 パンは完全に溶けたものとそうで無いものが混じってるわね……溶けて無いものは少し芳ばしい……トーストしてから入れているのかしら? 手間暇を惜しんで無いわね、流石セレブ料理!


(うわぁ……最初から教えてよ! そうすれば断ったりしなかったわ! なんて手間をかけてるの! しかもお母様に提出してるの? ダメね今後は侍女のお勧めは断っちゃダメだわ!)


 何かしら私も大分と並列処理に慣れて来たわね、一度に3つ位なら平気で思考を処理できるわ。まあ試すのはここまでね、今無理する必要は無いわ。今のところハードの限界より、私のソフトの対応が3つ位で限界。それがわかっただけでも収穫ね。


「母上、最初からそのつもりでしたね? 手回しが良過ぎる!」


「侍女達の訓練も有るからね、いつから計画していたんですか母上」


 うん、私、頑張った! ここまで手間の掛かった料理だもの……残さないように頑張ったのよ! 本当よ信じて!


「何を言っているの貴方達、これは予想された事態よ? いつベニカがそれを望んでも良いように、万全の備えをしてあるのは当然でしょう。母親を舐めないことね」


 3匙目位から厳しかったわ、でもね頑張ってそこから更に3匙食べたのよ。でもね……もう限界なの……これ以上入らないの! なんて事なの! なんて胃の小ささ! こんな料理を残すなんてなんて勿体ない……


「お嬢様、ご無理はなさらないでくださいまし。大丈夫です。後で侍女が美味しく頂きますので」


「本当、シオン? ごめんなさい。後、料理長にも謝罪を伝えて、こんなに美味しい料理を残してごめんなさいって、工夫どれも素晴らしかったわ。料理長は本当に料理の天才ね」


「まあお腹が空いて無い状態で、6匙も食べたんだ上出来だろう、シオンの言う通り無理は駄目だよベニカお嬢様、吐いたら何にもならないからね」


「コーデリア様、分かりました…………あれ? 6匙ってコーデリア様数えてらっしゃったの?」


「私はベニカお嬢様の主治医だよ、当然だろう? なんの為に昼食に参加したと思ってるんだい? しかし、ベニカお嬢様が6匙も食べた料理かい、少し気になるねえ……余ったのを貰えるかい?」


「コーデリア様、お言葉ですが食べかけをお客様に提供は出来かねます。今新しいものを持って来させますので、しばらくお待ちくださいませ」


「シオン、私がそれで良いと言ってるんだよ。ベニカお嬢様も残して心苦しいのだろう。ならそれを食べて片付けた方が良いだろう」


「コーデリア様、大丈夫ですわ、後で侍女一同で分けて食べますので残ったりは致しません」


 何故でしょうか、コーデリア様と侍女達の間に火花が飛ぶのが見える気がします。この緊迫感は何?


「ふぅ、何事ですか貴方達、今回はお客様であるコーデリア様が望まれているのです。譲りなさい、良いですね? 大体、貴方達は何時も食べているでしょ」


 あれお母様『何時も』? シオンが今回に限ってでは? いえ、使用人が主人達の食べ残しも食べている事は知ってますが、それは口を付けていないものでしょ? 残飯は敷地内の豚小屋でエサにしていると聞きましたよ?


「奥様、しかし、ここ二日程お嬢様がお食事をなさらなかったので」


 えっ! チェーン、何を……もしかして侍女は、主人が口を付けた物しか食べれない、とかって決まりが有るの? 私初耳よ?


「奥様、侍女一同はこれが楽しみ……」


 ん? アニス、今楽しみとか言わなかった?


「お黙りなさい、普通の食事で我慢なさい、良いですね」


 ……あれ、普通の食事? 良かった普通に食事が出るのね?  って、貴方達! 貴方達は何をしてるの! えっ? それって……そうなのよね? どれだけベニカが好きなの! いやちょっとこれは流石に引くわ……


「クッ、ジャンケンに勝ってさえいれば遠慮なんてしなかったのに……」


 背後でクララが小声で愚痴をこぼしているわね、何の話し?


「シオン、クララったら何の話し」


 それを聞き咎めたのかハンナがシオンに小声で尋ねているわ、そうよね、私も気になるわ。


「お嬢様がクララにも望まれたけど、ジャンケンで負けたでしょ? それで断ったのよ」


 私が望んだ? ……今朝の口移し!! それね! えっ、じゃあシオンはジャンケンに勝ったって事? クララが断ったのってジャンケンに負けたから? クララってルールに厳しいものね……


「あら……運が悪いわねクララ……」


 ってちがーーう! 違うわ! 侍女達ってもしかして想像以上に百合? 想像以上にベニカ大好き?


 ちょっと待って、コーデリア様も美味しそうに食べてらっしゃるけど……侍女と争ってるって事は……コーデリア様も、もしかして百合でいらっしゃる?


 確か……うちの神殿には女性神官しか居ないけど、それはコーデリア様が女性だからよね? そっちの趣味で女性ばかり集めている訳では……無いですよね?


 ああっ、お父様、お母様、それにお兄様達まで、物欲しそうな顔で、コーデリア様の食べている私の食べ残しを見つめないで!


 これは……私の周りにはまともな性癖の方が居ませんね! ベニカの性癖だけが変なわけじゃなくて、この家の人間は全員、性癖が変だわ!


 皆さん、悲しいお知らせです。私、生まれ変わったら、変態な性癖の美少女でした。そして家族含め、周りが美形ばかりだと喜んでいたら、全員、変態な性癖の持ち主でした。


(何なのこのアシュリー侯爵家って!!! 理念は立派、やってる事も立派、皆優れた人達ばかりで、超お金持ち! なのに変態ばっかりって!! なんだろう……ザマァされるのも分かる気がするのは気のせいかしら? この家全体がザマァされて、少しはその性癖を抑えろって思ってしまうわ……)


 私? 私は普通よ、普通にイケメンが大好きなだけ! そうよ少し『妹激ラブ』な変態なお兄様だけど、ライト様もジーク様もやっぱりイケメン!! もうね兄妹でも良いわ! 二人同時でも良い! ……ヤバい……ヤバいわ……私も変態かも!!


 まって! 一応兄妹だけど、私は紅華成分強めだからね、身体は兄妹かもしれないけど心は違う、セーフ!! ……セーフよね? ……はぁ~どっちにしても不毛ね。身体がアウトな段階で決して結ばれることは無いわ。こんなにイケメンなのになんでよ! 据え膳なのに食べられないなんて何てことなの!


 けど大丈夫、この国、結構イケメンが多いわ。だって執事や侍従もイケメンばかりよ。侯爵令嬢のままだと結婚出来ないけど、家を出れば結婚できる! そうよ攻略対象のイケメンを避けさえすればザマァは無いわ! 後のイケメンはより取り見取りよ、負けるな私! 負けるなベニカ!



 気合も新たに、食事を終えた私はリビングに移動してきたわ。何をするって? 寝るのよ、午睡よ。


 ……分かってる、私にだって分かってるわ、『お前どんだけ寝るんだよ』ってそんな事は分かってる、けどね、私が寝ないと侍女達が食事できないの!


 リビングルームには専門の別の侍女達が居るわ、この侍女たちは望めばマッサージをしてくれたりするの。で、私達はマッサージをして貰ったりしながら、午睡で身体を休めるの。その間にお付きの侍女達は食事と休憩をするのよ。彼女達の為にも寝ないとダメなの……ちっとも眠くないんだけどね。


 仕方ないからマッサージを頼んでみたわ。うんとっても気持ちいい。美女に優しくマッサージして貰える喜び。あれね、紅華の頃だったら毎日だってマッサージして貰ったわね。残業に疲れた身体にこれとか、最高のリラクゼーションよ。エステみたいに本格的じゃあないんだけど、これはこれで極楽だわ。


「お嬢様、如何ですか? この位の力加減でよろしいでしょうか?」


「はい、ああぁ、そこです、そこ良い感じです」


「ここですね?」


「そうそこっ、んん♪」


「倒れられて寝てらしたから、この辺が凝ってるんですね」


「ワタクシ、寝ていただけですけど?」


「はい、お嬢様、同じ姿勢を保つとどうしても一か所に負荷が集中しますから」


「そうなのね、あっ♪」


「ふふ、ここら辺ですね」


「ふぁあぁ」


 何時の間にかうつ伏せで寝てました……ええ、もう本当に気持ちいいの♪


 エステ、そうエステも別室で受けることが出来るのよ。お母様はそっちね。お母様の衰えを知らない美貌は、日々の弛まぬケアの積み重ねなのね。まあお母様、爆乳ですものね。肩も凝るだろうし、日々の激務の疲れを癒しているのでしょうね。


「お母様、エステはなんで別室なの?」


「それは服を脱ぐからよ、男性厳禁なのよベニカ。そうね……一度実際に体験するのも良い経験ですわね。ベニカ、試してみる?」


「いえ、今回は良いですわお母様」


 このエステやマッサージは使用人にも大人気で、エステは予約制で順番待ちが出来るほどだとか……アシュリー侯爵家って何気に使用人の福利厚生が充実してるわね、カフェもそう主人最優先だけど、それ以外の時間は使用人にも殆どの施設が解放されているの、食事なんかも主人とほぼ同じものが提供されているそうよ。


「別にすると手間が増えるでしょ? それに色々食べた方がバランスが良い、ワタクシやベニカは別メニューの事が多いから、日替わりの幾つかのメニューから選んで食べて貰っているのよ」


「料理長さんの料理は本当に美味しいです」


「……あまり褒めてはダメよベニカ、益々張り切るから……」


「何か不都合が? 食費が凄いことになってるんですか?」


「いえ、まあ食材費は予算内に納めているから良いのですけどね。普段の食事の凝り方ではなくなって来てるのよ……晩餐会の食事ではないのだから普段はもう少し手を抜かないと、他の料理人が力尽きてしまうわ」


「侍女から聞いたのですけど、この家の使用人って他家から可成りスカウトが来てるそうですよ」


「ウチの使用人は皆優秀ですからね……使用人は奴隷では有りませんからね……残念ですけど仕方ないのでしょうね」


「いえ、お母様、誰も絶対他家に勤める気にならないって言ってましたわ、食事が美味すぎるって」


「他家のスカウトを追い払うのに役に立っていると……困りましたね」


 そう貴族夫人ってもっと優雅にダラダラと過ごしているイメージだったけど、お母様は忙しい。お父様は対外的な業務が主なの、各種公国の省庁との折衝や他の貴族家との折衝ね。更に領地の運営のお仕事があるからそれだけで手一杯。だからこのお屋敷内の業務、管理、運営は全てお母様のお仕事。そうでなくても広大なこのお屋敷、使用人の数だけでちょっとした村の人口に匹敵するわ。更に領地にある別宅の管理業務なんかも加わっているらしくて……激務よね……


 更にこれに貴族同士の付き合い、貴族の御婦人方とのお茶会に出席されたりしていて、スケジュールは分刻みでビッシリなんですって。まあ、お母様のお付きの侍女達も、優秀な人ばかりだからある程度任せているみたいなんだけど、本人が直接出向く用件が多く……何時も足がパンパンだと嘆いてらしたわ。


「けどねお母様、それって本宅が広すぎるのが原因だと思うの」


「貴族家の本宅は、お客様を迎え入れる為でもあるの、その威容が家の格となるのよ、利便性だけで決められるものではないのよベニカ」


「ではお母様、お客様をお迎えする本宅とは別に、普段生活する別邸を分けては?」


「そう思って建てられたのが別邸よ、けどねベニカ、よく考えて、お客様をお迎えするたびに別邸から本宅に移動するようになるのよ?」


「あっ……返って移動距離が増える?」


「酷暑期や酷寒期には別邸で過ごしているでしょ? あの時期以外は無理なのよ、アシュリー侯爵家はこれでも名門貴族、色々お付き合いがありますからね」


 お兄様達も結構お忙しい、平日は午前中は魔法学園での授業を熟し、午後からは、ライト兄様はお父様から任されている領地の運営業務、最近は魔物が活性化しているようで、その対応に追われているみたい。第二弾のゲームのイベントでもあったわ、この魔物の襲撃ってやつ。このライト兄様の任されている領地は、ジーク兄様が伯爵になられたら任される領地なのだそうで、ジーク兄様の為にと張り切ってライト兄様は運営されているみたい。


「態々分ける意味が有るのライト兄様、お父様と一緒に運営されては?」


「それでは父上に頼ってしまう、それではダメなんだよベニカ、将来俺は一人で領地を運営しなければならない。そこに甘えは許されない」


「厳しいのですね、でもライト兄様の運営されている領地はジーク兄様の領地ですよね?」


「そうだよベニカ、これは将来ジークに渡すために、家臣団やその他の領民、そして領地のインフラを整える意味もある。俺は将来の領地運営の練習にもなるし、ジークには整備された領地を渡せる。誰も損をしない、流石、父上だ」


「ジーク兄様はアシュリー侯爵家を出ていくのですね……」


「別に家族には変わりない。寂しがることは無いさベニカ。それにジークは優秀だ。あの才能を俺の家臣団に埋もれさせる……それは絶対ダメだ。かと言って近衛騎士として国に仕えて一生を終えるのには惜しい才能だ。そうだろベニカ」


「はい、ジーク兄様は大変優秀です」


「あの才能を伯爵なんてモノに押し込めるも勿体ない……だが俺にも長男としての意地があるから、侯爵を譲る気はない。なら大伯爵、そう呼ばれるだけの物を渡す。それがジークを押しのけてアシュリー侯爵家継ぐ者の義務だ。そうだろうベニカ」


「ライト兄様!」


 ライト兄様は他者の才能を素直に認める度量をお持ちです。そしてそれに嫉妬することなく、自らを高めようとされる。尊敬できるお兄様なの……素敵すぎますライト様!!


 家臣団と、領民と合同の領軍を組織されて、魔物を組織的に狩っているって仰ってたわ。専門家として冒険者の方の協力も得て、彼等を重用しているから、冒険者ギルドとの関係も良好なのだそうよ。冒険者が居るのねこの世界!


「冒険者に興味があるのかベニカ?」


「はい、憧れます」


「……ベニカ、危険な職業だ、彼等は命懸けだよ? そしてその命を懸けるにあたって、その任務をこなす為の修練を怠らず、その技能を身に付けた人達だ。憧れだけで成れる職業ではない、分かるねベニカ?」


「ライト兄様、ワタクシは憧れる事すら禁止なのですか……」


「うっ……いや、禁止じゃない。けどね、不安なんだ。ベニカが修行して強くなる。もしそうなったら……ベニカは冒険者になってしまいそうで不安だ」


「……何故ですか? 理由を伺ってもよろしいですか?」


「ベニカ……外に興味があるだろ?」


「はい、お外に出られるように頑張ります」


「そうそれだ……ベニカの中には冒険心がある。だから不安なんだよ。いいかいベニカ、お外に出るのも冒険だ。ならお外に出られた後、その冒険心は何処に行くのだろうね?」


「……」


 ライト兄様にはお見通しみたいね……将来アシュリー侯爵家を出ても良いと考えている事がバレてるみたい。


 そんな優秀なライト兄様の率いる領軍と冒険者の御陰か、アシュリー侯爵家は魔物の被害が少ない事で有名なのだとか。だけど他家では可成り被害を受けて大変な所も多いそうよ。


(魔物ねえ、どんなモノなのかしらね? 猛獣みたいなモノなのかしら?)


 この国には昔から魔物の襲撃自体は有ったそうだけど。最近魔物の数が多いらしくて何処も苦労されているみたいね


 一方のジーク兄様は授業が終わったら、そのまま近衛騎士団に顔を出して訓練をしているそうなの。最近はどうせだからと、公都の近くで魔物を狩っているそうよ。『実戦に勝る練習は無し』がジーク兄様の信条みたいね。近衛騎士団の主な業務は公都の防衛なので、公都付近の魔物を狩る事は業務でもあって本来なら問題がないそうよ。


「魔物と戦って危なくはないのですかジーク兄様」


「何と戦うにしても危険はあるんだよベニカ、騎士の戦いと言うのは、お互いに命を懸けて行われるものだ。その相手が人でも、魔物でも変わりはないんだよ」


「そうなのですね……しかし、ジーク兄様、魔物討伐は近衛騎士の義務ではないのですよね?」


「ベニカ、それは違う。近衛騎士団の任務は公都防衛だよ。魔物は脅威だよね? ならその脅威を取り除くことは公都防衛、そうだよね? いいかい本来これは義務なんだよ。他の騎士達に強制はしない。だけど僕はその義務から目を逸らすことはしたくない」


 そう……しかし、魔物の討伐は近衛騎士に相応しくないと言っている騎士もいるようで、中々難しい見たい。ジーク兄様は若い事もあって色々周りのやっかみも強くて苦労をされているようね。けどジーク兄様はご自分の信条を曲げる気はないようで、他の騎士団とも連携して彼方此方に魔物退治に行かれているわ。


「ジーク兄様、幾ら剣の腕が立つからと、小隊長に無理やり任じられて辛くはないのですか?」


「そうだね、小隊長は僕が望んだことじゃない、押し付けられた。剣の腕が立つからと粋がっている青二才への試練の心算なのだろうね。けどね、任された以上、その任から逃げたりはしない。僕はアシュリー侯爵家の代表として兵役の任に付いている。アシュリー侯爵家の名に泥は塗れない!」


「ジーク兄様、しかし、アシュリー侯爵家は家臣を多数、騎士団に供出してます。ジーク兄様が兵役に就く必要は無いのですよね」


「そうだねベニカ、本来は兵役に就く必要はない。アシュリー侯爵家として貴族の義務は果たしている。けどねベニカ、僕には戦う力がある。そしてそこに魔物の脅威に苦しんでいる民がいる。僕自身の貴族の義務としてそれを放置しては置けない」


「ジーク兄様……」


「それがアシュリー侯爵家の人間だよ。父上だってそうだろ? 近衛騎士団長になるまでその義務に邁進した。だからこそアシュリー侯爵家の今がある。他家がアシュリー侯爵家に対して強く出れないのは、この家の者は貴族としてその義務から逃げないからだよ。ライト兄様だって領地での魔物討伐に加わっている。我がアシュリー侯爵家は貴族としての責を全うしている。そう堂々と公言できる。だから名門なんだよベニカ」


 アシュリー侯爵家の者はその貴族としての義務を果たす。だからこそ領民からの信が厚い。そう貴族に生まれたから、貴族だから命令に従えと命じるのではなく。貴族としての義務を果たす、それを見せることによって貴族だと認められている。だからこそアシュリー侯爵家の地盤は盤石。


 危険がないわけではない、お父様の御兄弟、それにお爺様は、その為に命を落とされている。しかし、お父様をはじめとしてアシュリー侯爵家の男性はその義務から逃げない。そしてその危険を少しでも軽減する為の努力を怠らない。


 ジーク兄様の任されている小隊は、すべてアシュリー侯爵家の生え抜きの家臣で構成されているので、内部から足を引っ張られることがないのが救いだって仰ってたわ。けどこれって内部は無くても外部はあるって事よね?


 そしてお二人共通常、夕食までには業務を終わられて、夕食後夜に屋敷内の訓練場で戦闘訓練をされている。ジーク兄様は騎士団で訓練してウチでも訓練……ハード過ぎないかしら? 更に寝る前にお勉強をされて、それから御就寝されているのですって……話を聞くだけで私、過労で倒れそうなんだけど……お兄様達は化け物ね。それは午睡も必要な筈ですよね、他がハード過ぎるでしょ。


 この世界は貴族でいることのハードルが高い。いえ、アシュリー侯爵家の者でいることのハードルが高いのでしょうね……何処までも気高くその高貴な心を示す。


(筋金入りの貴族で、更にイケメン、もう心の底からイケメン、なのにそんな二人は兄妹、手が出せない! 今のこの状況が私にとって最高にザマァじゃないの? 47年間守りたくもないのに守って来た処女を散らす為には、禁断の兄妹愛も考慮に入れた方が良いのかしら?)


 変態? 最高の誉め言葉ね!



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