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第1話 目覚めると……

 ワタクシはイザベラ・ベニカ・フォン・アシュリー。

 家族や親しい者からは『ベニカ』と呼ばれていますわ。無理やり呼ばせてる? ……きっと気のせいですわ、皆さんもそう呼んでくださいまし。『イザベラ』はワタクシ好きでは有りませんの……だって……そこはかとなく響きが……んふっ、ダメですわね。両親から頂いた名前ですもの、大切にしませんとね。


 ルイバトン聖公国でも名門の誉れ高い、アシュリー侯爵家の長女、今年で13歳、それがワタクシ。そう、名門貴族のお嬢様、深窓の御令嬢。高嶺の華ですわね。盛り過ぎ? 自分語りですから、構いませんでしょ? だって誰にも聞かれない脳内ですもの……


 自画自賛? いえいえ、それはこれからですわ♪


 金髪碧眼の見め麗しい美少女、瞳はサファイアブルー、宝石が霞む位輝いておりますわ。切れ長な瞳、睫毛なんて自分でも驚くほど長いですわ。これサングラスとか掛けられるのかしら? レンズに当たらないのでしょうか? まだ掛けたことは無いし、そんなモノが存在しているのかも知りませんけど……


 話が脱線しましたわ、ええ、瞳は気に入ってますわ。何時までだって鏡を眺めていたいくらいです。ただ……若干釣り目気味なのがいただけませんわ。ワタクシ、こんなに心優しい筈ですのに、何でなのかしら? この所為で少しキツイ印象を与えてしまいます。両親に似たので致し方ありませんけど……本当に残念です。


 形の良い鼻も自慢の一つです、ええもう大きすぎず小さすぎず、スッと鼻筋が通って、自慢の一つですわ。こうツンって感じで……


 お口は少し小さいでしょうか? けど顎が細くて尖り気味なのでこれは仕方ありませんわ。口紅は注さなくてもピンク色でプルプルですわ。形も文句は無いのですけど何故でしょう? 笑うと『オーホッホホ』って感じになるんです、不思議ですわ……


 自分でも小顔だと思いますわ、なのに瞳がクッキリ大きくて、眼力でしたっけ? 強いかもしれませんわね……けど、どう見ても美人だと自分でも思います。染み一つない白磁の肌。頬もツルツルなんですよ? ニキビとか出来たことも無いですわね。そんな小さな顔を豪華に艶やかな金髪が彩ってます。


 長い艶やかな髪も自慢ですわ。もう本当に長いんです。お尻の下までありますのよ? 座る時に気を付けませんと自分で自分の髪の毛をお尻に敷いて、引っ張られてとても痛いんです。何故切らないかって? 切らせてもらえないからですわ。長い美しい髪の毛は貴族の子女の嗜み……毛先を整える事すら滅多に……お風呂では何人もの侍女たちが苦労して手入れしてくれてます。朝のブラッシングだけでも一苦労でしょ? 本当に心苦しいので切りたいんですけど……


 ええもう何故か縦ロールです、緩くですけどね、こうしないと髪の毛が長すぎて纏まりませんのと、寝る際に巻いて寝ますでしょ? 自然とこうなるんですわ。髪の毛が細すぎるのもいけないんでしょうね……ストレートなロングヘヤーにしたいんですけど……無理でしたわ……


 背はまあそれほど高すぎはしません……しないと思います、ちょっと高いかしら? ヒールの所為ではないかしら? まあ小柄では有りませんわね。しかし大女では有りませんわよ?


 とても華奢ですわ、お胸以外に贅肉なんてついてませんもの。細いけどスラッと伸びた手足、折れそうな程細い括れた腰、小尻ですけど形の良いお尻で、可愛らしいでしょ? こんなに細くて華奢なのに奇跡の様に豊かなお胸、脱いでも凄いんですのよ、侍女達がお風呂の度に溜息をついて陶然とする程の美乳ですわ♪


 脚は自分でも偶に見惚れるほどの形の良い美脚です、細いピンヒールを履けば多分踏んで欲しい殿方が殺到するのではないでしょうか? いえ、そんな趣味はございませんわよ、オホホホ。


 コホンッ、腕は折れそうなほど細いですわね、けどガリガリでは有りませんわよ? しっかり肉も付いてますわ。細い滑らかな指、そう綺麗に整えられた指にもどこにも節なんで無いですわ。骨格が細いだけですわね。まあ痩せていないのはお胸を見ればわかると思うのですけどね。


 手は小さめでしょうか? 大きくは有りませんわね、指先まで本当に綺麗ですのよ? 指先でスッと侍女の頬を撫でてあげると皆顔を赤くしますの、もう全くなんて可愛らしいんでしょう♪


 今日も侍女達にドレスを着せられて、これから庭で御茶を楽しもうしているワタクシ、姿見に映るワタクシは今日も美しいですわ。もう完璧ですわね。ええ、文句の付けようの無いお嬢様ですわ。そうその凛とした立ち姿、滲み出る高貴さ、どこに出しても恥ずかしくない侯爵令嬢。


 ええ完璧に悪役令嬢ですわ!! もうこれ以上ない程に悪役令嬢です!!



 私の名前は衛宮 紅華、アラサーの会社員よ。34歳はアラサーじゃないって? はぁ~? 四捨五入すれば30歳! アラサー! 異論は認めない!

 無論独身! 何故って? こっちが聞きたいわよ! 子供の頃の将来の夢は『綺麗なお嫁さん』よ? ねえ私のお婿さん何処?


 コホンッ、都内のゲーム会社で乙女ゲーのプロジェクトを任されているプロジェクトリーダーよ。結婚を諦めた? ほっておいてよ頼りになるのはお金よ! 独り身アラサー女性にはそれしかないのよ!!


 『乙女ゲー』分かる? 女子の妄想を詰め込んだ夢のゲームよ。イケボなイケメンとラブチュッチュな甘い一時を過ごさせてくれる。乙女に癒しの一時を与えてくれるゲームよ。それを私は企画しているの! 趣味と実益を兼ねてね! 分かる? 自分の想い通りのイケメンを作り出せるのよ! この話が社内で持ち上がった時、私は真っ先に手を挙げたわ。当然でしょ? 野郎なんかに乙女ゲーが作れるわけないでしょ?


 もうね本当にのめり込んだわ! 何日も会社に泊まり込んで、私の妄想と欲望の限りを詰め込んだ意欲作よ! 美麗なイケメン男子のイラスト、痺れるようなイケボ声優さん達の甘い囁き。渾身の出来よ! 兎に角イベントと選択肢を増やして様々な場面で、そのイラストとボイスで乙女達を痺れさせる。


 売れたわ!そりゃあ売れる。私でも買うわ! 『乙女ゲー』としては異例のヒット作だったのよ! そう『乙女ゲー』としてはとても売れたの!


 けどね……世の中スマホなのよ……スマホゲームなの。無論私の『乙女ゲー』はスマホにも移植して売れたわ! けどさ、スマホゲーと言ったらソシャゲなわけ、『乙女ゲー』だと買いきりでそこでお終い。


 おじさん達は何が不満なのかしらね? あの偉そうなだけのジジイ共が!!


「はあ『乙女ゲー』ね? 『乙女ゲー』としては売れた? はぁ? ウチのソシャゲの売上知ってるのキミ?」


「売り切りでこれでは、話にならんな」


「固定ファンがいる? ふーーんそれで? それって会社の売り上げにどう繋がってくるの?」


 切れたわね、ええ、切れたわ、『だったらソシャゲを作ってやろうじゃない!』って啖呵をきって作ってやったわよ第二弾をソシャゲで!


 第一弾の世界観と登場人物はそのままに、イケメンを更に追加! 課金要素として領地運営システムを盛り込んで、もちろん行動力とか付けてそれを消費して色々領地開発をするの、領地を様々な方向性で発展させるとそれに関するイベントが発生するようにして、イケメンとラブチュッチュな時を過ごすのをエサに課金を促すのよ!


 ただ……『乙女ゲー』ってこう一人のイケメンの攻略ルートを決めたら、そのルートに固定されるの。他のイケメンと楽しむのなら、一旦戻って最初からまた始めるの。何回もクリアして全員クリアを目指すのよ。まあ中にはハーレムモードがあるゲームがあるんだけど、よく考えなくてもハーレムモードの主人公の女の子ってビッチになっちゃうのよ。イケメンをとっかえひっかえって訳でしょ?


 『乙女ゲー』って告白して付き合って終わりじゃないの、こう直接的な描写はR18ではない限り無いんだけど、行為前と行為後にベットでイケメンに甘い言葉を囁いて貰えるムフフなイベントも売りだったりするし、無論私のゲームもそれが売りなの! だから私のゲームにはハーレムモードは無かったの!


 けどね私のゲームをソシャゲで再現するとね……イケメン一杯なのが売りなのよ。みんな色々なイケメンと色々なイベントを楽しみたいの。一回リセットして初めからって訳にはソシャゲはいかないの。当然主人公の女の子はビッチになるわけよ。そりゃ出来るだけそう感じないように、色々工夫してるわよ?


 けど何回か色々なイベントをクリアしていくと『この主人公、何回ベットシーン熟してんだ? 純情そうな顔して何回やってんだ?』ってなるわけよ。けどさ皆、ベットで色んなイケメンさんに甘く囁いて欲しいのよ。


 そこで第一弾では一人しか居なかった主人公のライバル、悪役令嬢を増やすことにしたの! 苦肉の策だけど、主人公のビッチ振りをクローズアップさせない為にも、ライバルの悪役令嬢に虐げられても頑張る、主人公の健気さに焦点がいく様にしたかったのよ。


 だけど、第一弾で出した高飛車な意地悪お嬢様だけだとね……ソシャゲでイベントが多いから『このお嬢様暇人か? 何処にでも出て来るんだけど』状態で主人公やイケメンよりも目立つのよ。


 そこで裏の顔が有る後輩小悪魔キャラやら主人公のビッチ印象を薄めるための清純系ビッチを追加したの。清純系ビッチはイケメン寝取りは無しよ、ユーザーの乙女がイケメン寝取られたら阿鼻叫喚だから。色々な男に声を掛ける浮気なだけの報われない尻軽女よ?


 これで悪役令嬢も正統派高飛車お嬢様と後輩小悪魔と清純系ビッチの三人態勢、この三人で主人公に色々仕掛けて意地悪して困らせる事ができるわ。


 けどねこれもソシャゲの辛い所なんだけど悪役令嬢にザマァして退場させると、その後のイベントが続かないの。第一弾のゲームでは主人公に色々やっていたのがバレて、ギロチンに掛けられて処刑されたり、狒々ジジイの元に嫁に行かされたり、国外追放になったりとね色々出来たんだけど……


 でまあソシャゲの方はちょっと罰って言うか、スケベジジイに言い寄られたり、セクハラされたり、恥をかかされたりでこう『クヤシィー!! キィーー!!』ってなる程度にしたわけよ。これならその恨みを晴らすために何度も主人公に意地悪をするって事でイベントが続けられるでしょ?


 計画は順調だったのよ。ゲームの骨格も決まって、各シナリオも発注して……


 あの男が我儘を言わなければね!


 そうあの男、イラストレーターで私の大学時代の後輩! 売れないイラストレーターで主に美少女ゲーム系で燻ってたんだけど、こいつ、男の癖に、イケメン描くの超上手いの! 判子絵の美少女は今一なのにイケメンだけはすっごい上手いのよ!


 そこで第一弾ではお金で頬を叩いて、超絶美麗なイケメンイラストを沢山書かせたんだけど、頼んでもいない主人公や悪役令嬢のイラストはその倍描いてくる馬鹿野郎な訳よ。


 第二弾のソシャゲでも一杯イラストを描かせたんだけど……主人公ちゃんのイラストがスッゴクショボいの……なのに悪役令嬢のイラストはアホみたい描いて送ってくるの! しかも気合入りまくりで!!


 まあね、一応発注通りイケメンは描いて送ってくるし、主人公ちゃんのイラストは第一弾で没にしたストックが大量にあるから何とかなるんだけどね。


「ビッチとか描きたくねえから! 死ねビッチ!!」


 って私に言ってきたから張り倒してやったわ! こちとら未だに処女じゃ!! ピカピカの新品じゃ!


 コホンッとまあ一部問題が発生したんだけど、いざ発表して売り出したらさ、バカ売れ!


「ジジイども見たか! ザマァ!!」


 って打ち上げの飲み会で叫ぶほどの売り上げだったわ。


 たださ……予想外の出来事が発生してね、一応ソシャゲーだけど『乙女ゲー』なわけよ? ターゲットは『乙女』! 女の子な訳!

 なのに……悪役令嬢の子が可愛いって、こう変に一部男子から支持があってね。ちょっと張り切って悪役令嬢にも声優さん使ったのよ。


 そうしたら……


『ドジっ子ツンデレ女王様可愛い! 踏んで!』

『ウッカリ小悪魔っ子マジ可愛い! 叩いて!』

『天然純情ビッチ! ぶりっこ可愛い メロメロ!』


 って変な男子から受けたの、イラストは大量にあったから、まあ折角だからって色々採用したんだけど、それが不味かったのかしらね?

 後は声優さんがどうも人気の子達ばっかりだったみたいでそれもあって何故か悪役令嬢が大人気。

 こうザマァで悔しがってる彼女達も音声付きだったのが更に良くなかったみたいで『マジ萌える』『一粒で二度おいしい』と謎の人気……


 けどまあ、売り上げは結構あったのよ……たださ、アイテム一杯ガチャ一杯なわけじゃないの。あくまで『乙女ゲー』だからね。第一弾のファンを大事にする意味でも。領地運営の要素を入れた軽い課金で楽しめるゲームにしたの。


 これが良くなったわ……売り上げに気を良くしたジジイ共が第三弾を作る事を命じてきたの、しかも!! こんどのソシャゲはガチャ満載で魔物を討伐するRPG風のゲームにしろって、魔物を討伐するのにイケメンたちに武器ガチャからのアイテム装備させて、それに色々効果付けてって!!


 ねえそれ乙女ゲーでやる意味あるの? ないよね? 何処が乙女ゲー? 私の求める乙女ゲーは何処?


 ええ、私はしがない会社員、上が命じたら、まあ、どんな仕事でも全力でやりますとも……けどさぁ……


 で、私も腐ってたんだけど今度はシナリオライターがブチ切れちゃってね……まあね、もう第一弾の影も形も無いからね。


「魔物討伐する『乙女ゲーム』? 違いますよね? 乙女ゲームに求められているのはイケメンとの胸躍るイベントに、ベットでの甘い囁きでしょ」


 って詰め寄られたのよ。分かってるわよ!!! 私だってそう思ってるわよ!!

 彼女も大学時代からの後輩で、この乙女ゲーに婚期を捧げた同士、当然処女!! なにせ彼女の妄想こそがこの乙女ゲーの宝! この乙女ゲーの要。処女を拗らせまくった彼女の妄想から吐き出される、甘い囁き。イケメンたちとの甘く切ないエピソードの数々が、イケボと共に乙女を痺れさせるのよ。


「彼氏? 結婚? 私の彼氏は私の原稿の中にしかいないわ!!」


 それが彼女の口癖、私の心強い同士……共にアラサー独身女子の固い友情に結ばれた私達だったのに……そんな彼女にまで詰め寄られて、私は自棄になっていたんだと思う。もう明日が見えないの、方向性がさっぱりだったのよ、軸がブレブレ……そしてやけ酒を飲んでへべれけになった……そこまでは記憶が有るんだけど……



 気が付いたら見たことがない、豪華なベットで寝てました。うんもうフカフカ! 一瞬『これが噂に聞くラブホ? 私もやっとロストバージン?』とか思ったんだけど、そんな、ちょっと豪華風じゃないの! もうこのベット私の給料の何か月分? って感じなの!

 驚くどころの話じゃないわよ!


「一体全体どうなってるの? 私、酔っ払って誰にお持ち帰りされたの? 王子様?」


 うん自分でも34歳女性のセリフとしては痛いのは分かってるけどね。寝ぼけてたのよ大目に見てよ。


 声を上げたのが不味かったのか、軽く部屋のドアをノックされると、返事も待たずにメイドさん達が部屋に入って来たわ。

 ええメイドさん達、一人じゃないの五人も入って来たの、しかも秋葉原にいる様なチャラい感じじゃない。ビクトリアンメイドよりも更にキッチリした格好の……メイドと言うよりも侍女? 彼女達が、


「お嬢様、お目覚めに成られましたか? 昨夜は良くお眠りになられたでしょうか? ご気分はいかがですか?」


優しく語り掛けてくれるの。お嬢様よ、お嬢様! 34歳にもなってお嬢様! しかも明らかに自分よりも年下の子達によ!


 正直悪い気分はしなかったわ。寧ろ嬉しかった。だってお嬢様よ。お世辞でも嬉しいわ。


 そこで気が付いたの、へべれけに酔っていたのに頭がスッキリしているのよ。それに何だか身体が軽い。連日の残業で心身共に疲れ果てていた筈なのにとても快適。


(お酒飲んでスッキリしたのかしら? それともこの快適なベットの御陰?)


 そんな感じで一人思い悩んでいたのが悪かったのか、


「お嬢様、どうなさいましたか? 何処かお加減でも? ……大丈夫でごいますか? お医者様、お医者様を……」


メイドさんが慌てだしたの。


「いえ、どこも悪くないわ、ごめんなさい、ちょっと考え事をしてただけ」


 メイドさん達は心底ほっとした顔をして、胸を撫でおろしていた。本当に心配を掛けたみたい。もしかして昨夜の私って、酔って酷い状態だったのだろうか? それで心配されている?


「それはようございました。お嬢様、朝の身支度を致したく存じます。どういたしましょう? ご気分が優れないようでしたらもう少しお休みになられますか?」


 体調は近年稀にみる位スッキリ快調、それにもうすっかり目も覚めてる、それに……お恥ずかしながらお腹が空いていた。昨日結構飲み食いした筈なんだけど……もしかして何処かで吐いたのだろうか……否定できない……


 ここが何処かは兎も角、こんな綺麗なメイドさんには絶対に危険はない、何せちょっと黙り込んだだけで慌てるほど心優しい。なら昨夜のお礼でも言いつつ、朝食を強請っても罰は当たらないのでは? メイドさんがこれだけ居るって事は私を拾ってくれた親切な人は金持ちよね?


 迷惑掛け序に、それ位OKな筈、女もね30超えたら少し厚かましい位じゃないと生きて行けないのよ! 若い頃みたいにチヤホヤしてくれないの、自分から求めないと与えられないのよ!


「大丈夫です。もう起きれます。ありがとう」


 そう言ってベットから身を起して、ベットから降りようとするとメイドさん達が甲斐甲斐しく手を引いてくれたり立ち上がるのを手伝ってくれる。


(めっちゃ気分良い! なにこれ本当にお嬢様になったみたい! 何のサービス? これ月一、いや年に一回で良いからこんなサービス受けれるならここに泊まる! 自分ご褒美よ、その位許されるわ! 一泊何万円? いや……ホテルじゃないんだから無理か……お金持ちって凄いわね)


 ただ……


(あれ? ちょっとまって、私背が……いや違う、これ私の腕? 細くない? あれ? ……酔っ払って事故にあって暫く寝たきり? いやその割には絶好調よね? 何処も痛くないし……けど介護されてる??)


 何やら体調は良いのに、自分の身体に妙な違和感が有る。自分の身体が自分のモノでない様な……寝ていた時には余り感じなかったのに動くと矢鱈と変なかんじ……


 メイドさんに手を引かれるまま豪華な化粧台の前に座らされる。化粧台も豪華でお洒落だ。品が良い、とても良い趣味をしてると思うけど、これ幾らするの? っとその時大きな鏡に見知らぬ美少女が映っているのに気が付く。そう見知らぬ筈だ……だけど何処かで……いや間違いなく……つい最近も見た筈だ……


(こんな凄い美少女に有ったら忘れるはずないわよね? ってか外国人! 金髪碧眼! はーー世の中には、こんな美少女が本当にいるのね! まるで絵の中から飛び出してきたみたい! 現実感がないほどの美少女……絵の中から……)


 そう……そうだ……間違いなく見た……あれは絵だ、けど目の前のこの美少女は現実だ。多少その分の差はある、しかし!!


「えっ!! これ悪役令嬢! イザベラ・ベニカ・フォン・アシュリーよね? 何でここにいるの?」


 鏡の中の美少女がそう、可愛らしい声で叫んでいた。


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