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Aconite

遅くなりましたぁあああああ!!

三話以上書いたことない人なので無理やり詰め込んじゃった感じになりましたが終わりましたお待たせこーちゃん巧くんんん!!

ヴェールくんの一人称が変わった話。ほんっとヴェールくんなに考えてんだろうね!?!?



敬愛する師匠とその想い人であろう彼をおいて、逃げるように洗面所へと駆け込む。

微かに聞こえる水の音。...どうやら、雨が降っているらしい。

水垢で汚れた鏡に己の顔が映る。唇を噛み、眉を顰め、光のない目を向けたその姿は自分でも気味が悪いほどで。

自嘲気味に笑う。全くどうかしてるよ、と。

「僕なんか、いなくなっちゃえばいいのにな」

この雨に打たれて、何事もなかったかのように。僕という人間が、最初からいなかったかのように。

跡形もなく、痛みの一つも感じずに、霧のように消えてしまえたらどれだけ楽だろう。

声も、顔も、思い出も、弟子の存在そのものも。全部綺麗に忘れたって、きっと師は、彼と笑って明日を生きるのだ。

それならばもう、”僕”が此処にいる意味はない。


(昨日までの僕を、僕自身で殺そうか)

自分のしたことは、自分で責任を負うのが礼儀だ。と、昔母に教わったことを思い出した。

嫉妬に歪み、師匠に嘘をつくような奴は「ヴェール」であってはならないのだ。

___最初からこうすればよかった。

躊躇いなく、少しだけ笑って、”僕”は細首に手を伸ばす。何も怖くない。

ただ僕が、”僕”でなくなるだけ。儀式的で合法的な殺人。

「...っ、...かひゅ、ぁ”...っ」

阿呆らしいな、とは自分でも思っていた。紐も使わず絞めるのだ、死ねるわけがない。わかっている。ただ、自己満足でも、一度消えた事実を記憶に遺しておきたかったのだ。

これは、「ヴェール」という人間が変わるために必要な通過点。無駄じゃない。…無駄じゃない。

目前がちかちかと点滅してきたところで、首を絞める手を緩めた。体中が求めていた酸素が体内に取り込まれる。鼓動が早くなる。

ふう、と、大きな呼吸を一つして。

“俺”は笑った。純粋な心で。

師匠やディオ兄に褒められることが堪らなく嬉しいと、子供のような顔をして。



*******


「あ、ヴェールおかえりー。随分遅かったけど、もしかして体調悪い?」

席に戻ると、イルが心配した様子で声を掛けてくれた。普段から表情が読みにくいディオも、心なしか眉が下がっている気がする。

「ううん、大丈夫。ごめんねー、遅くなっちゃって」

軽く返して、先ほどまで座っていた席に戻る。

つい先日に過ぎた誕生日により飲めるようになったお酒は、まだ少ししか減っていなかった。

”僕”が消えたことなんてその程度なのだ。気づく人のほうが少なくて、でもそれを悪いことだとは思ってなくて。

「...ふふっ、あははははっ」

過ぎてしまえば笑い話になるとはよく言うが、今の俺がまさにそんな様子だった。

自分しか知らない事実。大切に想う二人にも、きっと伝えないこと。

子供のする内緒話のような。何とも言えない楽しさを感じて、抑えようと思っても笑いが込みあげてしまう。

「え、ディオ...明らかにヴェールおかしいよね!?」

「ああ、医務室にでも連れていくか...?」

そうやって、気にかけてくれる人がいるだけで幸せなのだ。幸せと思わなければいけないのだ。

その優しさを独り占めしようとしたなんてやっぱりどうかしていた。

これでいい。ヴェールはイルとディオの家族、それで何の不満もない。

「何でもないよ、驚かせちゃってごめんね。.....ねぇ、仕切り直してもいい?」

俺一人我慢すればいいだけの話。昔から何も変わってないんだ。

気づいてしまえばちっぽけで。簡単に吹っ切れてしまった。氷が解けて水が滴ったグラスを手に取る。

「俺の戦勝と、此処に三人が集えたことに、乾杯」

カァン、と。心地よい音が響いた。

これは、誰も知らない幸せな結末。

*****












「そういえばヴェール、いつの間に一人称が変わったの?

ついこの前まで僕って言ってたけど....子供っぽいからって変えたとか?気にしなくてよかったのになぁ...ちょっと残念」

「何言ってんのさ師匠。俺は昔から”俺”のままだよ」




前話もそうでしたが、サブタイトルがお花の名前になってます。調べてみたら面白いかも...(?)


今度はなんの話を書こうかなあ。リクエストどしどし待ってますよー!!

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