変化する
あの日を境にダイとの関係は少し変わった。
ダイは気まぐれなところがあるのでいつもSNSに顔を出しているわけではない。
なので、毎日ではないがお互いのつぶやきにコメントを残しあい、お互いの生活を把握しながら日々を過ごす仲のいいフォロワーとなっていった。
不思議なことにダイは私に興味がないようにふるまってくる男の人だった。
今までの煩わしい「連絡先教えてよ」や「料理上手だね」「遊ぼうよ」という言葉を私に一切かけない。
どちらかというと「クソババア」「クソガキ」など言葉で私を挑発することのほうが多い。私はしっかりその挑発に乗っては口喧嘩のような会話を楽しむことを気に入っていた。
一方現実の世界での私はやっぱり毎日大量のレポートに追われていた。
そっけなく、連絡頻度が減っている彼のご機嫌をとることにも追われた。
その中でも彼の家に泊まりに行ってはご飯を一から作るということを繰り返していた。
「今日はハンバーグじゃないから」
「おう、飯ありがとう。いただきます」
ダイと仲良くなってから不思議なことに現実世界の恋愛がうまくいくようになった。
「今日漬物あるんだ、俺こういうの好きなんだよね」
「よかった」
漬物とはいっても浅漬けだ。
さっき市販の漬物のもとにつけただけのもの。しっかり作ったご飯より彼はそっちのほうが気に入ったらしい。
「ごちそうさま」
「おそまつさまでした」
今日は機嫌がいいのか「いただきます」も「ごちそうさまでした」も言ってくれたし、珍しく文句もつけられなかった。
汚れが落ちやすいうちに洗い物を済まさないと、と思いキッチンへ向かった。
スマートフォンをポケットに入れて食器を運ぶ。
キッチンでSNSをチェックする。今日はダイがいない。いつも通り気まぐれなのだろう。
洗い物を済ませ、リビングに戻ると彼はお風呂に入ったようでいなかった。
ふと目をやると彼のスマートフォンが光った。
うっかり目に入ったそれは、私の知らない女の名前だった。