口の悪い女
ちゃんと現実を生きているんだと彼に引き戻された私はナツミのアカウントでタイムラインをたどる。
「街コン行ってまた失敗!今日も飲んで忘れるぞ!」
前にも見たようなつぶやきの正体はダイだった。彼の過去のつぶやきをを見ていってわかったことの中の一つで彼は一度たりとも合コンも街コンも成功したことなどないことがある。「俺よりもスペック高い生き物なんてほんと神様って不平等だよな!」「彼女欲しい」なども同じくらい呟かれているがなぜだか本心が伺えなかった。理由はわからない、なんとなくの直感だった。そのつぶやきに「いいね!」をするとダイから
「なんでフォローしてくれたの?」
と私宛にコメントが返ってきた。本来のあゆなら「面白そうな方だったので!」とか「気楽に話せそうな人だったので」なんて返すのだろうか。でもあくまでもここで私はナツミだ。ナツミなら…なんていうだろうか…
「彼女できない30のジジイとか絶対ヤバいやつだから」
今まで誰にも使ったことのない言葉を投げかけてしまった。あゆもナツミもこんなことは言わない。
「は?余計なお世話だよクソババア」
とコメントが返ってくる。ただこの言葉にも本心は伺えなかった。不思議と言葉も胸に刺さらない。
「うるさい、私まだ20なんだけど」
「20でもなんでも関係ないの、口の悪いクソババアだわ (笑)」
最後についた(笑)というところに少しだけ言葉の温度を感じた。
「口の悪いじじいに言われたくないわ(笑)」
いつも使わない口調、あゆでもナツミでもないふざけた悪い言葉を使う私に、私は違和感を持たなかった。その不思議な感覚を持ったまま私は何か清々しい気持ちになっていた。