適当な人
頑張って作った料理の写真には「いいね!」がたくさんついた。偽りの幸せを発信しても、みんなそれを本当だと受け止める。それがSNSなんだなと身にしみて感じた。
あくまでも現実を受け止めながら生きている私は、SNSでは自分を違う人格だとして発言をしていた。マイナス思考で人の言葉に傷つきやすく、言いたいことの言えない"あゆ"を隠して、プラスな言葉を人にかける優しく、自分の意見をしっかりと持った芯の強い理想の女の子であるナツミを無意識に演じていたのだ。そのため、求めていなかった繋がりが増え、ナツミという人格が現実化してきたことを感じた。
そんな時、タイムラインに「今日も合コン失敗、飲んで忘れればいいや、乾杯」という文字が流れた。「広告か」と思い流し見しようと思ったがなんとなく興味がでて、その人のアイコンをタップしてしまう。
プロフィール欄を読み込んでいくとハンドルネームはダイ。どうやら30歳独身、今まで恋人ができたことがない、お酒を飲むことが大好きということを読み取れた。
「酔っ払いの方が適当な話を聞けて頭を使わなくて楽なんだよね」
その人の過去のつぶやきを見るとさらにわかる。
「この人、適当な人」
ナツミはこういう人とも関わるだろうなと考え、ダイをフォローすることにした。
するとダイからも無言でフォローが返ってきた。
面白そうな人だから、タイムラインこれから少し楽しみになるな。そんな気持ちで私はレポートに取り掛かった。