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嘘つきな私

SNSを初めて少し時間が経った。

「今日のご飯」と写真を添えて呟けば

「おいしそうだね!」

「作り方教えてよ!」

「俺も食べてみたいな」

「彼氏さん羨ましい!」

そんなプラス思考な言葉が返ってきた。これは私にとってなにより欲しかった言葉であった。始めは人との繋がりを目的としていなかったが、新しい他人との付き合いがこんなにも楽しいものだと私は知った。誰もが秘めていた自分を認めてくれる気がした。その度に晴れて行く心をしっかりと感じ取った。普段、彼に言えないこと、そして自分が幸せであることをたくさん書き留めていけことが新しい幸せだと感じるようになっていった。


「お前ハンバーグしか作れないのかよ」

2年半の記念日に恒例となっていたハンバーグを作ると彼にため息をつかれてしまった。

「だって、記念日はいつもハンバーグってルールみたいに…」

「くるたびにこの料理だもんな、はぁ…」

最近お互いに忙しいことも多く、会える日が格段に減り、記念日しか料理を振る舞えないことが続いていた。「私だって忙しいのに。1から材料買って料理したのに」そんな怒りがこみ上げてきた。でも私が怒ったらきっと喧嘩になってしまう。

「サラダ取ってくるね」

一旦キッチンに戻って大きくため息をつく。そしていつも通りの笑顔を作った。

「ごめんね、忙しくてメニュー考えられなかったんだ」

私は謝って机につく。そして料理の写真を撮った。

「いただきます」

と私がいうと彼は不機嫌そうに何も言わずにテレビを見て食事を始めた。せっかく会えたのにこんな態度取らなくてもいいでしょ…?イライラする気持ちを抑えてテレビの話題に触れて、笑って見たりするが全部彼の耳には届かないらしい。1人で食事をするより気が重かった。

「ごちそうさまでした」

そういったのも私だけだった。この後も一緒にいるのか、頭の中で面倒という言葉がよぎる。いけないいけない、私はこの人の彼女だ、この人が好きなんだ。気持ちを切り替えて

「今日泊まって行くでしょ?」

「明日バイト」

冷めた目で私を見る。俺はお前と違って忙しいんだよと言われたような気持ちになった。

「じゃあ帰るわ」

彼は私の家を出ていった。

空になった食器がいつもの倍。このあと洗って片付けなくては。明日は課題がまだ残ってたっけ。


私はポケットからスマートフォンを取り出してさっき撮った料理の写真をSNSに投稿した。

"彼氏と2年半記念日!ハンバーグ美味しく食べてもらいました!これからもよろしくね!"


心にはなんとも言えない傷が残ったままだった。

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