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黒い魔剣使い  作者: マクドフライおいもさん
グレイランドⅡ
75/77

岩山に吹く風

 ゼティス教徒の報復を警戒し夜中の強行軍も厭わず先を急いだレグス達。

 明くる昼時には彼らの姿はテサルの街より北に離れた小高い岩山地帯にあり、粗い石の混じる道なき道を馬から降りて引き進んでいた。


「ひどい風ね」

「風?」


 傍を飛ぶ精霊の言葉にファバは怪訝な面持ちを浮かべた。

 風はひどいどころか意識してみねばわからぬほど穏やかなもので、彼女の言わんとする事が少年にはわからない。


「毒気を含んでいるわ。北の大地の穢れが風を呪い。瘴気となってこの辺りに流れてきているのよ。そのせいでここらは草木も生えないハゲ山になってしまった」


 かつて岩人の洞窟へと向かうに通った鳴き谷も岩だらけの地ではあったが、あそこでは少ないながらも低木や色づく草々を目にする事ができた。

 比べてこの辺りはまったくの不毛。石混じりの土くれと岩ばかりの赤茶色い世界が一面に広がっていた。


「その北の大地を今から通ろうっていうんだろ、大丈夫なのかよ」

「長居をするような場所じゃない事は確かね」

「だからこそ通る価値がある」


 二人の会話にマルフスが口を挟んだ。


「蛮人達は呪毒を恐れ、悪食のオークやトロルですら獲物の少ないあの土地に好んで踏み入ろうとはしない。誰も近づきたがらない荒野だ。準備さえ怠らなければ、北に向かうにこれほど安全な道はない」


 どこか自慢げに聞こえる小男の声。

 それもそのはず、彼の言う準備とは壁の民の知識あってこそ可能なものであったのだ。それをなくしては彼の地を通ることなどできない。

 岩山の先に広がる呪い毒された大地。かつて古の大巨人の血に染まったというその地を人々は『赤の荒野』と呼んでいた。


 マルフスの言にファバ達が顔を見合わせていると、先頭を行くレグスの足が止まる。


「どうした?」


 カムの問いには答えず黒剣を携える男は黙って後ろに手をかざした。

 何かの気配を感じとったのだろう。自然と誰もが口を閉じて土色の世界の端々へと目を配った。


 そのとき一陣の風が吹き抜け、やがて雷の音のようなモノがやや遠鳴りに聞こえてくる。


――ヒヒーン。


 落ち着きを失くした馬が嘶き、ガドーはそれを必死に静めようとした。


「おいおい、こいつはいったい何の音だ」


 空の様子からして、まさか本当に雷鳴などという事はあるまい。


「獣の鳴き声? 狼のモノとは違うようだが……」


 他の者たちと同様に判断に迷う表情を浮かべるカムであったが、彼女の直感は迫る危険を告げている。


「くるぞ」


 レグスが口にした直後、それは岩峰の先からのそりと姿を現した。

 ジリカの戦象ほどはあろうかという巨躯、その胴に特徴の異なる二つの頭が乗っかっている。四足の鋭い爪は岩肌を圧し潰すようにつかみ、堂々たる立ち姿からは抑えようのない凶悪さが放たれていた。


 双頭の怪物を一目してセセリナが言う。


「キマイラ」

「キマイラ!? あれが?」


 精霊の言葉に強く反応したのはガドーであった。魔境の怪物にさほど詳しくない彼とてその名には覚えがある。

 解放戦争において狂王の軍勢が使役し猛威をふるったという怪物たち。その中でも獅子と山羊の頭にサソリの尾を持つ怪物『キマイラ』の名はフリアの人々にもよく知られていたものだったのだ。

 されども、伝え聞いた狂王の怪物にまさか灰の地で出会うとは思いもしていない。


「なんだってこんな場所に……」


 疑問に答える者はなく、代わりにキマイラが大地を揺るがすかのような咆哮を一帯にとどろかせる。その猛りは野生の獣が発する警戒や戦いを避けようとするがゆえの威嚇とは明らかに異なっていた。

 邪悪な響きを伴い、歪んだ二つの獣顔には血を好み求める残虐性が強く浮かびあがっている。


「俺が注意をひきつける。カム、隙を見て奴の目を潰せ」


 判断早く指示を飛ばすと、馬を残してレグスはひとりキマイラの方へと向かった。

 彼が返事も聞かずに動き出したのは、カムの射ち手としての実力を疑いもせず信頼している証である。

 対して双頭の怪物もゆっくりと岩峰を降り始めた。


 やがて大小二つの影の距離が十分に縮まると、キマイラは自らの力を誇示するかのように眼前の男を吼えつけた。

 邪悪で陰惨な威嚇。

 しかしレグスの顔色には微塵の動揺も生まれず、彼はただ相手の巨体を見据えながら黒き剣を構える。

 それが面白くなかったのだろう。

 怪物は不機嫌そうに牙をむいて猫がネズミを押しつぶすがの如く飛びかかった。


 だが、レグスもまた素早く飛び退いてその攻撃を回避する。

 続け様にキマイラは前足を払うが、その間合いも彼は冷静に見切っていた。


――この程度か。


 レグスの目からすれば怪物の一撃は力強くとも敏に欠けていた。

 その後も二度三度と振るわれる爪は空振るばかりで、キマイラはわかりやすく苛立ちをつのらせていく。


――そうだ、それでいい。


 自分の役目はあくまで注意をひきつける事にある。

 本命は別。狙い通りに獣顔は共にレグスへと向いていた。


 その隙を女狩人は逃さない。

 風を切る一矢が怪物の死角より飛来し、獅子顔の左目に直撃する。


――グォオオオー!!


 たまらず悲鳴をあげてよろめくキマイラ。しかし山羊の頭だけは向きを変え矢の射ち手を睨みつけていた。

 それは兆し。怪物の内に荒れ狂う殺意が向かう先を変える。


――まずい。


 レグスは瞬時に作戦を変更して勝負を決めにかかった。

 彼は手にした魔剣の力の一部を引き出すと狙いを変えた怪物へと力強く振り抜く。


 ある程度の手応えはあったが、『ある程度』ではキマイラの脚は止まらない。


「カム!!」


 危険を知らせる声が響く。

 怒り狂った双頭の怪物は脚の傷もそれを負わせた者のこともまるで構わず、新たに定めた標的へと一直線に向かっていた。


「こっちに来やがった」


 迫らんとする怪物にガドーら男たちは思わず慌てるが、そんな彼らを尻目にカムやべルティーナの対応は落ち着いたものだった。

 片方が二射目を構えて、もう片方は手をかざす。

 まもなくして大きな爆発が起こると、キマイラの巨体が再びよろめきその動きを止めた。


 べルティーナの魔法の一撃。

 それに合わせてカムは狙いすました二射目を放つ。


――グォオオオー!!


 矢は獅子顔の右目に直撃した。

 魔剣の一撃を受けてなお走りまわるほどの強靭な肉体を持つ怪物も眼球ばかりは鍛えようがない。

 わずか二本の矢でキマイラは獅子の両目を失ったのである。


「べルティーナ、セセリナここは任せる」


 それだけを言い残すとカムは愛馬の背へと跨り走らせた。

 不毛の悪路を物ともせずに速度を上げるフウバ。見事な騎乗でキマイラへ近づくと、彼女はそのすれ違いざまに三発目を射掛ける。

 だが……。


――弾いたか。


 山羊は首を振り矢を弾き飛ばす。

 キマイラとてやられっぱなしになるつもりはない。すかさず怪物は尾を振るい反撃する。

 それは刹那の攻防。並の人馬には避けようもない一撃だった。


――フウバ!!


 乗り手の指示よりも早く馬は反応していた。

 地面を強く蹴ったフウバの体が宙に浮きあがり、そのまま巨大なサソリの尾を飛び越えて着地する。

 驚くべき反応と跳躍力。


――オオォー!!


 狙いの一撃を外した山羊の悔しげな咆哮が岩山にとどろくが、それで攻撃の手が休まるわけではない。

 駆け抜けた人馬をキマイラはすぐに追い始める。

 狂乱する怪物の目にはもう彼女らの姿しか映ってはいなかった。


――食いついた。


 猛追してくる巨体を確認するとカムはファバ達の方から離れるよう愛馬を動かす。

 岩山の悪路を緩急をつけ飛んで跳ねて走りまわるフウバ。

 足の置き場一つ踏み外す事を許されない中で冷静でありながらも迷いなく大胆に。一対の人馬はまるでブルヴァの草原地を駆けるかのように風を切ってキマイラを翻弄する。


 その光景に、遠目に見守る仲間たちは感心しガドーが口を開く。


「ったくたいしたもんだぜ。この山の中をあれだけ自由に馬を走らせしちまうなんてよ。草原の民ってのはみんなああなのか?」

「まさか。彼女は特別よ」


 古き精霊はそれが天賦の才であることを知っていた。


「種族を問わずいろんな遊牧の民を見てはきたけれども、あの娘ほど馬の扱いに長けた者はそう何人といるものじゃないわ」

「カムのやつだけじゃない。フウバあってのものさ」


 セセリナの評にディオンが付け足した。


「いくら乗り手に技術があっても並の馬じゃそれについてはこれない。草原育ちだっていう良い馬を何頭も見てはきたが、あれほど走れる馬を俺は初めて見たね。速いだけじゃない。賢いうえに体力もある。あれだけの馬ならどこの大貴族だって大枚をはたいて欲しがるだろうよ」


 フリア、ユロアを問わずある層の人々にとって馬は単なる家畜とは一線を画す存在にある。

 騎士にとっては頼りになる相棒であり己の武力を象徴する財産。戦場から距離を置く道楽者の貴族達とて優れた馬を所有する事を名誉とし、己が権威と見栄の為に大金を注ぎ込み競う者は少なくない。

 フウバほどの駿馬を出すところに出せば、途方もない金額がつくに違いなかった。


「……とはいえ、逃げまわるだけじゃ勝負はつかない。いずれ逃げ足にも限界はくる。その前にどうにかキマイラの足を止めないと」


 ディオンの懸念は当人とてわかっている事。

 双頭の怪物を引き付けながらカムは半身を返し矢を射っていく。

 しかし激しく揺れ動く不安定な馬上、それもすでに二本の矢を食らい警戒を最大限にする相手となればさしもの彼女も必中とはいかない。

 矢は山羊の両眼から外れ、弾かれるか別の部位へ突き刺さる。

 ただの獣相手ならともかく、分厚い皮と肉の鎧を纏うキマイラにはそれでは十分な手傷を負わすことはできない。


――さて、どうしたものか。


 そんな迷いが頭をよぎったカムの目にレグスの姿がふと飛び込んでくる。

 その瞬間、言葉を交わすわけでもなく二人の意図が自然と一致した。


 彼女はフウバを黒き剣の使い手の方へと向けて走らせた。

 窪地より斜面を駆け上がるフウバ。その馬足がほんのわずかに鈍る。

 体力的なものではないだろう。愛馬は坂の先に背後に迫る怪物以上の危険を感じていたのである。


「大丈夫」


 カムが優しく声をかけると、フウバはあらためて速度をあげた。


 追われる者と追いかける者。

 急勾配の斜面を駆ける二つの影がその先へと消える。

 待ち受けていたのは黒い突風。駆け抜ける人馬の背後、勢い良くのぼってきたキマイラへレグスの一振りが放たれる。

 強力な魔剣の一撃は、今度は手応え十分に命中した。


 巨大な脚がいとも簡単に斬り飛ばされ、四肢の一つを失った怪物は体勢を崩し地面に転がり落ちた。


――グォオオオー!!


 怒りと苦痛にまみれたキマイラの叫び声が響く。

 三本足となった怪物はどうにか立ち上がろうとするが、巨体を支えきれずにのたうちまわるだけでもう誰の目にも勝負は見えていた。

 レグスが止めを刺そうともがくキマイラへと近づき、怪物も双頭の獣顔を伸ばし噛みつこうと必死の抵抗を見せるがそれも無駄なこと。

 彼の振るう黒剣は獅子顔を深く切り裂き 返す勢いのままに山羊の首を斬り飛ばす。

 大量の血を吹き上げてキマイラは巨大な骸と成り果てた。


「助かった。礼を言う」


 怪物の死体を横目にカムは短く謝意を伝えるが、それはレグスにとって不本意なものでしかない。


「最初に見誤ったのは俺だ。お前達にはいらぬ手間をかけさせた」


 魔剣の秘める力に頼らずキマイラを仕留めきるつもりだった。

 だが結果として見立ては甘く、皆を余計な危険にさらす事となってしまった。

 止めを引き受けたのも彼にしてみれば自らの不覚、その始末をしただけにすぎない。


「レグス!!」


 戦いを終えたレグス達のもとへファバがやって来る。

 自分の馬を放って真っ先に駆け付けた少年の顔には興奮の色が浮かび、そして何を言わずともその瞳は巨大な怪物を仕留めた男を称えていた。


「間近で見ると本当にでかいな、こいつ。こんなのをぶった斬っちまうんだからほんとにすげえよ。ああ、俺の剣にもそれぐらいの力があればな……」


 壁の地で受け取った己の短剣と見比べてファバは言う。オリハルコン製の武器も魔剣が持つあの力の前には霞んでしまうと、少年にはそう思えていたのだ。

 だがそんな彼をいつもの口調でレグスは注意する。


「どんな道具も使い手次第で活きも死にもする。フレイニル、それだけの業物ならキマイラごときを仕留めるには十分だ。俺が使えばの話だが」

「なっ!!」

「外法の力を頼る前に、己の腕を磨け。器に収まらない力を求めたところで扱いきれずに破滅する事になる」


 厳しい指摘にファバは不満気な表情をしていたが、事実剣技未熟な彼には反論の言葉を見つけることができない。

 むくれる少年をどう慰めたものか。傍らのカムが苦笑しながら眺めていると、遅れて他の面々も彼女らのもとへとやって来た。


「お疲れさん二人とも。カム、見事な手綱さばきだったぜ」


 ガドーの労いにカムは愛馬に手を添えながら答える。


「この子が上手く走ってくれただけだ」

「そりゃまたご謙遜を。でもまあ馬が良いってのは確かだな。ディオンの奴とも話してたところさ、乗り手がどれだけ良くたって馬が応えてくれなきゃ無意味だって。フウバあってのカム、カムあってのフウバってわけだ」

「ああ、そうだな」

「結構、結構。人馬ともに仲よろしきことで」


 そう言って視線を変えるとガドーは斬り伏せられた怪物に話題を移す。


「しっかしこんなデカブツをライセンのやつが見落とすとはな」

「岩陰に隠れて見えなかったのだろう」

「空からの目も万能じゃねえってわけだ」


 上を見やれば空を旋回するライセンの姿が見えた。

 その飛び方がどこか気落ちしているようにも見えたのは彼の思い過ごしというわけではないだろう。


「……ところで気になってたんだがよ。巷の話じゃあキマイラってのは魔術を使って作り出すそうじゃねえか」


 男の問いかけにセセリナがその口を開く。


「ええ、血の魔術と呼ばれる穢れた禁術の力を使い生み出す魔造の怪物よ。作り出す以上に制御するのが困難で、製法を知ったところで並の魔術師に操れるようなものではないけれど」

「けど狂王に仕えた魔術師達はこの怪物を飼いならしていた。こいつにも飼い主がいるんじゃねえのか? そうなるとどこか近くにそいつが潜んでるってことになる」


 ガドーが示した懸念に一部の者達は思わず顔を強張らせたがレグスは違っていた。

 彼は落ち着いた口調でそれが杞憂にすぎないと仲間たちへ告げる。


「気配を探ってはいたが、他に誰かいる様子はない。ライセンもあの様子だ。恐らくこのキマイラは野生化したものだろう」

「野生化……」

「制御に失敗したか、あるいは術者の寿命が先に尽きたか。ずいぶんと古い個体だからな」

「古い? どうしてそんなことがわかる」


 訝しむガドーにレグスは無言のまま歩み怪物の死体の傍らへと立った。

 そして彼がその体毛をかきわけると、強い腐臭を放つ黒ずみ膿んだ皮膚があらわとなる。


「体の一部の腐敗が進行している。禁術の力を得た怪物とて不死にはなりえない。いずれ強靭な肉体も腐り、朽ち果てる。だが、よほどの失敗作でもないかぎり百年足らずの年月ではこうはならないはずだ」


 レグスの説明に精霊も同調する。


「そうね。少なとも三百年は経過してるかしら」

「三百年!? そんな昔から……」

「驚くような事じゃない。グレイランドは古くから罪人達の追放先の一つとされてきた地でもある。追放者の中には身分を理由に極刑こそ免れたものの、邪法に手を染めていた事を疑われていた者もいる。魔道を極めんと自らこの地に赴く者も存在し、そうした者達の中にキマイラを従えた者がいたとしても不思議はない。この魔境はそういう場所だ」


 わかってはいたことだった。

 それでもあらためて告げられる事実に、並の人間はその恐ろしさを再確認せざるをえない。

 このような怪物が当たり前に存在する世界。壁を越えるとはそういうことなのだと。


 とはいえ彼らに引き返すという選択肢は無い。

 キマイラの襲撃を切り抜けたばかりというのに、レグスの指示のもと一行は休む間もなく岩山越えを再開する事となった。


「ねえ、大丈夫なの?」


 出発から程なくしてセセリナが先頭を行く男へと声をかけた。

 さすがにこれだけ移動し続けたともなればファバ以外の者達にも疲労の色が浮かび始めている。そして誰よりも気遣わねばならない状態の者が目の前にひとり。


「どういう意味だ?」

「ごまかしたって無駄よ。私が気付いてないとでも思って?」


 一見表情の変わらぬレグスの異常を彼女はしっかりと感じ取っていた。

 いくら体力に自信のある男とはいってもこの二日の間にどれだけの負担がかかっていたか。限界まで引き出すわけでなくとも呪われた剣の力に頼る代償は軽くはない。

 深く繋がる精霊には彼の損耗具合がよくわかっていたのである。


「他のみんなもさすがに疲労がたまっているわ。やっぱりこの辺りで一度休みを入れた方が……」

「駄目だ」


 心配する精霊の提案をレグスは即座に切り捨てた。


「何のためにこれだけ先を急いだと思っている。ここで足を止めれば追手においつかれる危険が増すだけだ」

「可能性の話でしょ? こんなボロボロの状態であるかもわからない追手を警戒するより、魔物の襲撃に備えてしっかりと英気を養った方がよっぽど良くなくて?」

「日が沈むまでには赤の荒野に入れる。呪毒の地にはゼティス教徒とて簡単には足を踏み入れられないだろう。あるかもわからない魔物の襲撃を警戒をするよりもそちらを優先する。それが俺の判断だ。ついてこれぬと言うならお前たちだけで勝手に休んでいろ」

「もう……」


 もとより不確定要素の強い旅路。何が正解だったかなど後にならなければわからない。

 どちらを選ぶにせよ相応の危険はついてくる。となれば、セセリナもそれ以上強く言うことはできない。

 毒気が強くなっていく風に吹かれながら一行は北へ北へと進んでいった。

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