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after story   作者: かつどん
狡猾な裏切り
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狡猾な裏切り 17

ども、かつどんです。


上の人から言われたことをしたら怒られた。何故言われたことだけなのかって言われた。確かにそうだけど、不必要な事をしたら怒られるかもってプレッシャーに負けたのだ〜。

阿部「へぇ、ご苦労さん」


俺が阿部さん達に合流した時にはすでに戦闘は終わっていた。

どうやら酒々井側の勝利らしい。

レースの総大将財府を捕らえたのが勝因らしい。

しかし当初の目的、レースの殲滅は出来なかった。

だから俺が須奈を殺したことはかなりの功績者らしい。


小川「かなりの功績者って…」

阿部「でもさ、君は本当に酒々井がレースを殲滅しようとしてたと思うか?」

小川「えっ何で?」

阿部「本当はレースの総大将さんが酒々井 兎樹本人の手で捕らえられるのが酒々井側、そしてレース両方の筋書きであって全てその筋書き通りになったと思わないか?」


でもそれだと…


小川「それだと酒々井とレースって裏で手を組んでいたって事になるのでは?」

阿部「そう、そうなんだよ、だけど残念ながらハズレ」

小川「いや、一瞬ビックリりましたよ、当たりかと思いました」


本当に手を組んでいたら、こんな戦いまったく意味がない。


阿部「うん、確かにハズレだけどさ、勢力的にはハズレなんだけどさ、酒々井 兎樹個人とレースで言えばそれは正解なんだ」

小川「は?」

阿部「後でその場にいた尾嶋にも聞くと思うけど、酒々井 兎樹ってレースなんだよ」

小川「は?」

阿部「そしてレースのニューリーダー財府 芦亜とは恋人同士なんだ」

小川「は?」

阿部「つまりだ、これはレースと酒々井、いや、両方のレースによる出来レースだったってことさ、レースだけに」

小川「は?」

阿部「そこはは?って言われると傷付くわ」

小川「と言うことはレースの殲滅なんて…」

阿部「初めから無かったんだよ、あっでも酒々井 兎樹以外の命令された酒々井十六忍武は本気で殲滅する気だったよ、だって主からそう命令されたんだもの、そのくらい本気じゃないとこっちが死んでしまうってね、まぁ俺からしたら全て一緒なんだけどさ」

小川「じゃあ酒々井がレースに対抗出来る唯一の勢力って言うのは」

阿部「それも嘘じゃない、酒々井だけが今のところレースに対抗出来る勢力だよ、ただ酒々井のボスがレースに恋人がいるだけでさ、本当に殲滅する気だったならあの二人の武士がいなかったからな」

小川「二人?」

阿部「鎧の武士と檜山さん、二人ともお留守番だったらしい」

小川「その二人を投入していたらレースを殲滅出来てたのか?」

阿部「それはないな、だけどレースにダメージを負わせる事は出来る、今回はノーダメージ…いや、君がナッシングを殺したからノーダメージじゃないか」

小川「………」

阿部「それより火神を殺せたのは本当におめでとう!ナッシングはついでだったけど本命の火神が死んだなら相当の痛手だと思うよ」

小川「火神さんは俺に全てを託していただいたんだ」

阿部「…ま、初めての人殺しの感覚は覚えておいた方がいいよ、普通は慣れる物じゃない」

小川「うん、そうする」


阿部さんはレースでないにも関わらずレースのリーダーを殺したと言われてるが、やはりレースとの違いはこう言った優しさにあると思う。


阿部「さぁ、君は今からその新井って娘を召喚してもらいに行くのだろ?」

小川「そうです、阿部さんは…」

阿部「残念ながら僕の仲間に第十二世界の人間はいない、だから木吹に頼むしかない」

小川「そうさせていただきます」

阿部「うん、じゃあ俺たちはこれでお別れだ」

小川「………えっ?」


お別れ?どう言うこと?


阿部「今酒々井側に着いている奴らは何人かが一度死んだ奴らだ、酒々井 兎樹やら木吹もそうだ、そして俺もその一人、みんな野木博士に蘇生させられたんだ」

小川「野木博士!」


知っている。堂主館で火神に撃たれた人だ。

でも一度死んでるだなんて…


阿部「野木博士の生前と言うより第二世界の戦争時、野木博士はレースを倒すために俺たちを蘇生した、しかし第二世界で高山が大敗した後、野木博士は高山を護るために酒々井達を蘇生した」

小川「蘇生させられた時期が違うってこと?」

阿部「そう、そしてつまり、俺たちと酒々井では蘇生させられた目的が違うんだ」

小川「目的?」

阿部「俺たちはレースを倒すために、酒々井は高山を護るために、野木博士亡き後俺たちや酒々井はその目的のために動かなければならなくなった」

小川「ならなくなったって…」

阿部「反抗出来ないんだよ、一度死んだらその身体には死因となった箇所がある、例えば俺は首だ、かつて俺はピリオドに首を斬られて死んだ、だけど野木博士の機械によって俺は生命を維持している生物に生き返った、そして俺の生命を維持している機械は俺の思考と行動を操っている、それがレースを倒すように操っている」

小川「つまりあなたは、あなたたちは…」

阿部「そうさ、みんな操り人形さ、操っていた人が死んで、既に入力されていた事しか出来ないロボットと言っても合ってるかもしれないな」

小川「………」

阿部「そんな悲しい顔はするなよ、俺は楽しいんだ、そして俺たちの事は置いといてだ」

小川「問題は酒々井さん側ってことですか」

阿部「そう、俺たちはレースを倒すためだが酒々井に組み込まれた機械が命令している内容は違う、さっきも言ったが酒々井は高山を護るために生き返らせられたんだ、だから酒々井は高山を護るために動いている」

小川「阿部さんはレースを倒すため、酒々井さんは高山を護るため、しかし何であなた達が別れる必要があるんです?同じく敵であるレースと戦うのでしょ?」

阿部「いや、その考えは間違っている、酒々井は高山を護るためにレースを味方にしたんだ」

小川「えっ、レースを味方に?」

阿部「そう、今回の戦でレースのリーダー財府が酒々井に捕らえられた、普通それはレースが酒々井に逆らえなくなったと言っても良い事だ、あいつらの場合次のリーダーを出すとか絶対ないからな、まぁ方法としては酒々井の所に侵入して財府を助け出すって手もあるけど、それも無いだろうね、つっても酒々井がレースのリーダーを捕らえた理由の大半は愛だからそれも無いだろうね」

小川「愛?」

阿部「酒々井と財府は恋人同士だ、恋人同士なんだから例え人質だろうと一緒にいたいと思うだろ?」

小川「でも酒々井さんと財府って両方とも女じゃ」

阿部「お前それレースの前で言ったら殺されるぜ?今時女同士の恋愛なんざ普通だろ?俺は誰が誰と付き合ってようが一緒だけど」

小川「………」

阿部「まぁ、お前がここで常識に着いていけようと着いていけてなかろうと一緒だ、結果は一言、レースが酒々井の味方になった、その場合俺たちはどうなるか分かるよな」

小川「レースの敵でなければならないあなた達は酒々井と手を切ると言うこと…ですか…」

阿部「正解だ、だから君とはここでお別れと言う訳さ」

小川「ちょっと待って下さい!俺だってレースと戦うためにここに入ったんだ、俺も連れて行って下さいよ」

阿部「別にいいけど、その場合新井の召喚はどうするんだ?」

小川「あっ」

阿部「言っておくが俺たちには第十二世界のディメンションハンターなんていないぜ?」

小川「でも!」

阿部「いや、君は酒々井にとどまってくれ、それにすぐにレースが酒々井の味方になるって訳じゃない、レースは今第一世界に縛られている所だ、まだ暫くはレースは敵であり、戦闘も何度かあるだろうね、でも俺たちはそれには参加出来ない」

小川「まだレースと戦うって事はあるのですか?」

阿部「ああ絶対だ、そして君の考えが変わるかもしれない、まぁそこは分からないから一緒だけど…、それにさ俺たちだって今まで一緒に戦ってた人たちとただで別れるのって気が引けるんだ、だから君は酒々井へのプレゼントになって欲しいんだ」

小川「プレゼント!?」

阿部「送別のプレゼントさ、そしてどうあれ俺たちは酒々井を裏切ることになる、だから次会う時は敵同士だ」

小川「………」

阿部「と言っても俺たちは別の世界に行くつもりだけどね、それがどの世界かはまだ決まってないけど、だからもう会えないかもしれない」

小川「もし…」

阿部「ん?」

小川「もしもレースの情報が知りたい時は聞いて下さい、知ってる限りの事は話しますよ」

阿部「自らスパイになるってことか?あまり考えない方が良いよ」

小川「それでも、あなたには大変お世話になりましたから」

阿部「うーん、ま、考えとくよ、ありがとう、それじゃあね」


手を振って、阿部さんは仲間の元へと向かった。

そして俺は新井さんを召喚してもらうべく、酒々井の本拠地へと向かった。


木吹「阿部たちは行ったのか?」


俺が木吹さんに相談しようとすると、先に木吹さんから質問された。


小川「はい、先ほど仲間を連れて別の世界へと向かいました」

木吹「そうか、俺はてっきり君も阿部と一緒に行くと思っていたのだが」

小川「俺もそうしようかと思いました、ですか阿部さんからは俺はプレゼントだって言われました」

木吹「プレゼント…そうか、尾嶋の事かと思ったが君のことだったのか」

小川「えっ?」

木吹「阿部が前に言っていたんだ、自分たちが出て行く時はプレゼントを置いていくってな」

小川「そんなことを言っていたのですか」

木吹「それより、君の活躍は聞いている、第三世界の管理者 火神 鏡を討ったようだね」

小川「確かにそうですが、あれは…」

木吹「ああすまない、恩師だったんだな、事情は聞いている」


そして俺は俺の主題を取り上げた。


小川「実は、木吹さんにこの人を召喚して欲しくて」

木吹「召喚?っ!新井 あずみか」


木吹は新井さんのカードを見て驚いていた。

そして木吹さんは沈黙した。


木吹「………」

小川「えっ、あ、もしかして召喚出来ないとか?」

木吹「いや、召喚は出来るし、こちらからもその申し出はありがたいのだが…それでいいのか?」

小川「えっ?」


思わない質問が帰って来て、少し驚いてしまった。


木吹「新井がカードになっていると言うことは、新井は一度死んだと言うこと、そして彼女は君のクラスメイトであり、人間の生活を普通にこなせていた、ならば彼女には人の心があることくらい想像出来る、君も彼女には人の心があると思っているだろ?」

小川「はい、もちろんです」

木吹「では新井を召喚すると言うことは彼女には今一度生を受けさせると言うことだ、それは理解出来るな?」

小川「ええ、まぁ」

木吹「つまりだ、新井の召喚は彼女には死の苦しみをもう一度味わってもらうことになると言うことだ」

小川「死の、苦しみ…」


死の苦しみ、確かに生を受けると言うことはいつか死の苦しみを受けると言うことになる。

須奈や阿部さんはその事を理解していたのだろうか。

分かってて俺にアドバイスしたのだろうか。


木吹「もちろん君が今召喚に反対をしても俺は酒々井のために新井を召喚しなければならない、だから俺が君に求めるのは反対の気持ちではなく、覚悟の気持ちだ」

小川「覚悟の、気持ち?」

木吹「そうだ、君も知っての通り、俺も第二の生を受けた身だ、だが俺を蘇生した野木博士はもちろん戦力としか考えていない、そして俺も新井 あずみを戦力としか考えられないだろう、俺だけじゃない、酒々井様や十六忍武、ほぼ全員が戦力としか考えないだろう、だが君だけは、彼女に死の苦しみを味合わせようとする君だけは彼女を一人の人間として考えて欲しい、それが一人だけでもいいんだ、その覚悟ができているか?」

小川「一人の人間として考える…」


そんなの…


小川「俺は元から新井さんを一人の人間としか考えてません」

木吹「その考えが変わらないことを祈る」


そして木吹は新井さんのカードを上に掲げて、地面に叩きつけた。

すると、カードが光だして、


新井「新井 あずみ、これより貴方様の命に従います」


新井さんが現れた。

新井さんは木吹に対して跪いた格好をしていた。


木吹「我々は酒々井の忍、すなわちお前に与える命はその命ある限り酒々井様をお護りすることだ、だがそれ以外は好きにするがいい」

新井「はっ!」


そして新井さんはこちらを向いた。


小川「新井、さん…」

新井「信じていました、私をもう一度呼び出して下さると」

小川「っ!」


阿部さんに言われた俺の中の心配はその笑顔で消えた。


木吹「ほぅ、前に召喚された時の記憶がある様だな」

新井「はい、私は実際の人を元にして作られたモンスターですので」

小川「普通のモンスターは前の記憶は引き継がれないのか?」

木吹「分からない、そもそもここまで人を成したモンスターが他にいないんだ、ここまで会話出来るモンスターは初めてだろう」

新井「私も自分は残っていますが、他の方々は分かりません」

小川「俺はっ!」


その時俺は少し大声を上げてしまった。それほど伝えたかったんだ。


小川「俺は新井さんのことモンスターだとは思いません、一人の人、人間だと思ってます」

新井「………」


さっきから新井さん自身、そして木吹さんも新井さんのことをモンスター呼ばわりしているが、俺はそれが気にいらなかった。


新井「ありがとうございます、嬉しいです」

木吹「ふっ、まぁ貴様がどう思おうが勝手だ、新井が人だと思うなら人として扱ってやれ、そうだな、新井にもう一つ命を出す」

新井「はっ!」

木吹「小川 雄大の武器として付き添え」

新井「はっ…え?」

小川「武器?」

木吹「これで新井は俺だけでなく小川の言いなりとなった訳だ、俺からのささやかなプレゼントだ」

新井「ど、どうぞよろしくお願いします」


新井さんは恥ずかしそうに頭を下げてきた。

なんてややこしいプレゼントなんだ。


木吹「今から今後の作戦会議があるが、お前も参加するか?十六忍武でなくとも傍聴くらいは許されるだろう、他にも何人かは傍聴するからな」

小川「あ、はい、分かりました、参加します」

木吹「では行こうか」


そうして俺は酒々井十六忍武の作戦会議に参加することになった。


この次の回で戸惑っちゃって…なんたってあの二人の結婚回なのです。そりゃあ力入れちゃいます。お楽しみに!

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