狡猾な裏切り 1
ども、かつどんでーす。
この章までは終わらせてからcenterに行こうかと思います。
絶対学校で何かある。
俺はそう思っていた。
だが何も起きなかった。
俺は登校してからレースの角絵さん、能登君の動きを気にしてたけど全くいつもと変わらなかった。
尾嶋さんにも注目してたけど彼女もいつも通りだった。
だがその表情まで伺うと、確かに少ししんどそうな表情をしていた、ような気がする。
と言ってもそれは俺ではなく、彼女の友人が最近しんどそうな顔をしているけど大丈夫?と聞いていたからだ。
やはり俺よりも近くにいる人の方が分かるのだろう。
だけどレースはどうやって捕らえる気だ?
確かにレースは今言った二人だけではない、俺の知らない他にもたくさんいる。
そんなことを考えていると、皆がレースなのではないかと疑ってしまう。
あそこで読書している人も、あそこで昼寝している人も、あそこで壁にめり込んでる人も、あそこで漫才している人も、あそこで隠れてキスしている二人の女の子も、あそこでその二人をさらに隠れて見ている人たちも、皆がレースに思えてしまう。
だが皆を見ていても誰も変な動きをしていな…くもないが、誰も尾嶋さんを捕まえようと干渉している人はいなかった。
こうなったら昼休みにでも新井さんに聞いてみるか。
新井「私も特に聞いていないです、ごめんなさい」
小川「い、いえ、お気になさらず」
新井「あの後、確かに須奈様、川須様、櫛原様が残って話し合いをしましたが、誰を動員するかとしか話してなかったです、何をするかは全く話し合わなかったです」
小川「誰を動員するかは聞いたのですか?」
新井「はい、確かに聞きましたが私の知らない人たちでした、この学校の生徒ではないことは確かです」
この学校の生徒ではない、となるとレースは学校の外で捕まえようと言うのか?
そりゃ校内で動くよりは外の方がやり易いよな。
昼休みも特に何もなく終わり、やがて今日の授業も終了し、ホームルームになった。
穴沢「ではこれで今日は終わりにします、掃除当番はしっかりと掃除するように」
担任の穴沢先生によるホームルームも終わろうとしていた。
穴沢「あ、それともう一つ、最近物騒だから帰る時は二人以上で帰ってね、二人いれば不審者も手を出しにくいから」
うん、確かに物騒だ。
穴沢「では今日は終わり、学級委員」
学級委員「起立、礼」
「「「ありがとうございました」」」
こうして学校では何もなかった。
こうなったらやはりレースに従って見学するしかないのか?
尾嶋さんに話しても話した瞬間に学校のレース達が襲ってきそうで怖いし。
ってかウチの学校だけでレースは何人いるんだ?
そんなことを考えながらも新井さんと一緒に下校した。
そして下校途中の信号を渡った所に目立つ二人組がいた。
目立つと言うがもちろん理由がある。
一人は髪をオールバックにしており、目つきが悪いヤンキーな見た目の男性である。
もう一人はスーツを着た真面目そうな男性であるが、腰に刀を帯刀していた。しかも袋とかに入れず、丸見えの状態で…。
あれは銃刀法違反で捕まるんじゃないの?と考えているとやはり二人組はこちらに近づいてきた。
「始めまして、私はレース櫛原組の角絵と申します、以後お見知りおきを」
と、オールバックの男性が深くお辞儀をして、
『おうおう、てめぇが今回のややこしーことに関わりにきている馬鹿か?』
と、スーツの男性が声をかけてきた。
小川「えっ…」
いや、見た目と逆だろ…
角絵「後沢さん、先ずは自己紹介をして下さい、ほら、彼も困っているでしょ」
後沢『いや、困っているのはお前の怖い顔だろ!目つき悪いんだからいつも通り目隠しくらいしやがれ!』
角絵「ああ、そういえばしていなかったですね、これは失礼しました」
そう言って角絵さんはポケットから布を取り出して目が隠れる様に顔に巻いた。
角絵?
角絵「はい、いつも私の妹がお世話になっております」
小川「あ、いえ…」
角絵さんのお兄さんか、兄妹揃ってレースなんだ。
と言うよりその目隠しした状態で周りが見えるのか?
後沢『まぁこいつはこういう奴だ、決して悪気があって目付きを悪くしてるんじゃねぇ』
小川「は、はぁ…」
あれ?今気付いたけどこの後沢さん、口が全く動いてなくないか?
後沢『おい下だ下!目をみやがれ!』
小川「え?目?」
目なら見てるけど…
後沢『だから下だって、み〜さ〜げて〜ごらん』
小川「………」
後沢『そこはうわって驚くのがお約束だろ!』
小川「いや、驚くって…ってうわ!」
後沢『遅ぇよ!』
違う、喋ってるのはこの人じゃない。腰に着けている刀が喋ってるんだ。
後沢『やっとこっち見やがったな、全く』
いや、分かんねぇよ。
後沢『俺は後沢って言うんだ、んで俺を持ってるこいつが斉藤、見ての通り無口なレースだ』
小川「ど、どうも…」
やっぱレースってどれだけ会っても慣れねえな。
角絵「自己紹介はこのくらいにして、小川さんはこのまま後沢さんと斉藤さんと一緒に櫛原様の元へ向かって下さい、新井さんは私が火神様の元へと送ります」
小川「あ、はい…でも…」
後沢『安心しろ、この角絵って奴は俺より強いし言葉使い通り礼儀正しい男だ、見た目とは全く違うけどな!』
確かに見た目とは違い優しそうな人だと思う。
なら任せてもいいかな。
小川「じゃあ新井さん、また明日」
新井「はい、どうかご無事で」
小川「はは、そう言われたらちょっと怖いな…」
無事を願われるレベルなのか…。
新井さんと別れて後沢さん、そして斉藤さんの後を着いて行った。
案内された先はすぐ近くのアパートの屋上だった。
このアパートは三階建てとなっており、一階が花屋、二階と三階がアパートとなっているがこの話では関係ない。
屋上に出るとそこには櫛原がいた。
櫛原「やぁ、よく来たね」
小川「どうも」
屋上に来たのはいいけどここから何かをするのだろうか。
櫛原「安心して、君はあくまでも見学だよ、ここで何かをしてもらうことはないさ」
小川「そうですか」
櫛原「うん、ただこの双眼鏡で向こうの方を見てもらうだけさ」
そう言って櫛原は双眼鏡を俺に渡して来た。
小川「向こうの方?」
櫛原が指差した方を双眼鏡で除く。
櫛原「あの青い看板があるだろ?その左下に二階建てのアパートがあるはずだ」
小川「あっはい、ありました」
櫛原「ここからだと斜めに見えるはずだけど合ってるかい?」
小川「はい、確かに斜めに建ってるように見えます」
櫛原「うん、その一番奥のドアを見てくれ」
一番奥のドア?ただの普通のドアにしか見えないけど…
櫛原「そこが尾嶋さんの部屋だ」
小川「うぶへ!?」
え、俺今尾嶋さんの部屋のドアを覗き見してたの?
櫛原「別に覗き魔とかそんなこと思わなくてもいいよ、だってドアだし、部屋の中じゃないし、だからここを選んだんだけど…」
小川「は、はぁ…」
いや、確かにドアだけだけどさ、それでも同級生の女子の部屋を双眼鏡で見るなんて、やっぱ覗き見してるって気が…。
櫛原「あ、そんなことしてる内に帰って来たみたいだよ」
小川「え?」
ドアから下の方を見ると二人の女子の姿が見えた。
一人は尾嶋さんだ、そしてもう一人は、中原さん?
中原さんはクラスメイトの一人で尾嶋さんと中が良いグループにいる。明るい性格の女性だ。
でも何故彼女が尾嶋さんと?
櫛原「うんうん、ちゃんと先生の言う通り二人で帰ってるんだね」
何であんたが知ってるんだよ!
小川「ん?でも二人だと計画が破綻するんじゃないですか?尾嶋さんを捕まえようにも中原さんに見られちゃいますよ」
すると尾嶋さんと中原さんは一緒にアパートの階段を登っている。
どうやら中原さんは尾嶋さんの部屋に寄るつもりらしい。
でもこれじゃあ…
櫛原「いーや、計画通りだよ、ちゃんとターゲットがかかったんだ」
小川「ターゲット?」
ああ、尾嶋さんのことか…。
だとしたらもしかして中原さんって…
小川「もしかして中原さんもレースなのですか?」
櫛原「はっはっは、まさかー、あんな奴がレースな訳ないだろ?」
あ、違うんだ。
そして二人は二階に着き、尾嶋さんの部屋へと向かう。
俺が横を見ると、櫛原は双眼鏡ではなく、カメラを構えていた。
櫛原「僕のレース名は知ってるよね?写真家、もちろん写真を撮るのが趣味だからそんなレース名が付いたんだ」
小川「はぁ」
俺は再び双眼鏡で観察する。
櫛原「だけど写真家にもどんな写真を撮りたいかなんて人それぞれさ、例えば虫や花の生命力を写真に収めたい人もいれば美しい景色を撮りたい人だっている」
何か言い出したぞこの人。
櫛原「そして僕は建物の移り変わりを撮るのが趣味な写真家でさ」
小川「移り変わり?」
建物が出来て行く様子とか変わって行く街並みとかだろうか?
櫛原「だから僕は必ず写真は同じ場所で二回撮る様にしているのさ」
そして櫛原はシャッターを一回切った。
それは尾嶋さんが鍵を開けると、先に中原さんが部屋に入った時だった。
尾嶋さんの部屋から爆発が起きた。
櫛原「うん、上出来かな」
煙が上がったアパートの一室を櫛原は再びシャッターを切ったのであった。
俺は反射的に爆発があったその場所へと走り出していた。
やっと話が進んだ樹がする…




