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第七話 『女性と逃走』

1月29日 15時15分


 あー、面倒臭い。

なんで、この人とお茶しなきゃいくないんだよ。


「心くん、聞いてるの?」

「はいはい、聞いてまーす。」


 あなたの元カレなんか知りません、まだ続くんですか。

もう何時間お茶してるんだろう、幸い一度も善本や小早川が現れない。

ちょくちょく移動して、色々な店でお茶をしているからだろうか。


「でね、次は2つ前の元カレなんだけど……。」


 何が起きて、こんなことになったんだろう。

そうだ、騒ぎの後だ。


1月29日 11時58分


 警察から事情を聞かれて、適当に誤魔化した。

別に俺が悪い事した訳じゃないけど、緊張した。

気分を入れ換えるために、昼飯でも食べるか。

ショッピングモール付近の方が警察いるから良いかな?


「ちょっと君!何があったの?」

「すみません、急いでいるんで……。」

「待ちなさいよ。私よ。」

「え、誰?」

「ここで、会ったじゃない!」


 会った?女性……。

あ、いきなり去っていった参加者。

サバイバルの参加者かどうかは勘だったが、概ね正解だろう。


「あー、思い出しました。えっと、名前聞いてませんでしたね。」

「先にそっちが名乗りなさい。」

「桜庭心です。」

「そ、心くんね。」


 いきなり下の名前か……、軽いんだなこの人。

さて、名前を聞いて逃げよう。


「あなたの名前は?」

「私は……とりあえずサキって呼んで。」

「とりあえずって何ですか……。まあ、別に良いですけど。」

「あ、逃げたら承知しないからね。」


 何なんだよ、逃げようと思った瞬間に唐突に足止め。

こっちのやることは、お見通しってやつか?

俺は、昼飯を食べたいんだ!

絶対に逃げてやる。


「で、なんのようですか?」

「この惨劇は、バスが突っ込んだだけじゃないのよね?」

「ああ、市営のバスと誰かの自家用ジェットが突っ込見ました。あれ、なんでバスが突っ込んだ事知ってるんですか?」

「ということは……でも……。」


 いきなり俯いて、ブツブツと喋りだした。

何なんだろう、この人。

そうかと思うとサキさんは、顔を上げた。


「ランチ食べに行こ?」

「え、ランチ?」

「うん、お腹空いてるでしょ?はい、決定ね。」

「ちょっと!」


 手を掴まれ連れていかれる。

そういえば、女性と手を繋ぐのは久々……いやいや、落ち着け俺!

にしても、急に会話を切る人だよな。

 ちらっと、サキさんの横顔を見た。

その顔は真剣で、何かに怯えているようにも見えた。


1月29日 12時42分


「んー、美味しかった。」

「そうですね、なかなか美味しかったです。」


 サキさんに連れられて、入ったお店はとても良かった。

雰囲気も味も良い、何より安い。

食事中は会話が一切無かった、その理由はサキさんが予想以上に必死にランチを食べていたからだ。


「ちょっと聞いてよ!8つ前の元カレなんだけどさ、名前はコウジなんだけど……あっ!」

「どうしたんですか?」

「もう食べ終わったし、店変えようかな。」

「あ、はい。変えましょう。」


また、急に変えたな。

何でだろう、サキさんの能力と関係あるのか?


「割り勘ですか?」

「当たり前じゃない!でも私の方がたくさん食べたっけ?」

「……はい。」

「恥ずかしいから、私が全部払います。」


 よし、金払ってる間に逃げるか。

女性に対しては割り勘か奢ったほうが良いって聞くけど……知ーらない。


「2820円になります。」

「はい、3000円で。」


今だ!少し早足で……。


「痛っ!」


 サキさんに足を引っ掛けられた。

後ろを見ないで、引っ掛けられた。

何でバレたんだよ、やっぱり能力なのか?俺が分かりやすいのか?


1月29日 15時23分


 あー、思い出してきたな……。

あの後何回も逃げる方法を考えたけど、全部防がれたからな。


「ちょっと、聞いてるの?」

「え、あ、はい。」

「これ、どう思う?」

「酷いですね、最低です。」

「私が最低だってこと!?」

「えっ?」


 や、やってしまった、話を全く聞かないで答えてミスしたランキング1位のシチュエーションだ!


「そ、それは色んな見方があるって事です。」

「どんな見方があるのよ。」

「それは……、すいません聞いてませんでした。」

「もっかい最初から話すから聞いてなさい。……いや、場所変えてからにしましょう。」

「またですか、何軒行ったと思ってるんですか?」


 サキさんは何かから逃げてる、今回で確信した。

一体、何から逃げてるんだろう。

今の状況からして参加者だろう、急に現れる参加者―、善本や小早川の様な者。

 とりあえず逃げだそうとして、防がれたら過去に戻って防がれないようにしよう。


「良いから、行くわよ。」

「はいはい、お会計はどっちが払う?」

「そうねぇ……。」


 サキさんが財布を探して、かばんを覗いている。今しかない!

席を立ち、歩き出すと見せかけてダッシュ……え?

足が前に行かない、体が前のめりになって全身に衝撃が伝わる。


「痛ってー、ああ痛い。」


 サキさん、この距離で足引っ掛けられるってすごく足長いな……。

足を引っ掛けてくるのを避けるのは簡単だ、立った瞬間くらいに戻ろう。


1月29日 15時28分


 あれ、まだ座ってる……サキさんは財布を探してる。

また狙いからズレた、しょうがないけどとりあえず作戦実行だ。

立って、ダッシュと見せかけてジャンプ!


「あれ!?ちょっと!」

「すいませーん、サキさん!また後で会いましょう!」


 店の中で大声を出す奴、迷惑極まりないな……俺なんだけど。

店を出れたから手近なコンビニに身を潜めよう。

多分、サキさんが店から出た後に善本か小早川が来るはずだ。

おっと、サキさん出てきたな……会計終わるの早いな。

右に少し歩いたが左に行った、ということは右から誰か来るのか?

あ、来た……善本だ。

のんびりと歩いてきた、善本が珍しく歩いてきた。

と、思ったら小早川も出てきた!


「お客様、トイレの前ですので立っていると他のお客様のご迷惑がかかります。」

「ご、ごめんなさい。」


 危なかった、監視をしてるなんてバレたらマズいからな。

あれ、善本と小早川がいない。

ケンカが勃発してたはずなのに……なにより道路が酷い有り様だ。

車は事故を起こして電柱が建物に突き刺さっている。

こういうの何ていうんだっけ。

ああ、そうだ地獄絵図ってやつですよ。





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