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第五話 『不安と少年』

1月29日 8時50分


「あーあ……今は、何時だ?」


 時計を探したが見当たらない。

俺の部屋じゃないな……ああ、そうかホテルにいるんだった。

携帯を見れば良いか。

えっと、8時51分か……は?


「やばい、二度寝した!!」

「おお、起きたか~!あと9分しか無いぞ。」

「起こせよ!!」


 なんて薄情なやつだ……。

鍵かけてたのに、どうやって入ってきたんだよ!!

本当にワケわからない奴だ。


「あと、ちょっとしか時間無いよ。」


 そうだ、過去に戻れば!

寝てる時には戻れるのかな?


「ウルド、寝てる時には戻れるのか?」

「無理だね、意識のある時だけだよ。」

「そうなのか。」


 じゃあ7時に戻ろう。

俺は一度起きてるからな。

よし、行くぞ!!


1月29日 7時00分


 なんか鳴ってる……アラームか。

よし、戻ったな。

さて、ゆったりと朝食だ!!


「おはよう、心。」

「ああ、おはよう。」

「ははは。一応言っておくけど、タイムトラベルは1日に使える回数決まってるよ?」

「へ?」

「あと、心がタイムトラベルしても僕の記憶に影響無いから。」

「あ、そう。」


 コイツ……、ムカつくな。

うわっ、ニヤニヤしてやがる。

頼もしいけど、ストレス溜まりそうだな。


「で、朝食は?」

「下の食堂で7時半から食べれるよ。」

「分かった、面倒臭いし着替えなくても良いよな。」

「いや、時間あるしシャワー浴びて着替えたら?」

「……着替え、持ってきてない。」

「あるよ。部屋のタンス見ておいで。」


 駆け足で部屋に戻りタンスを開けた。

あった、ものすごい量の服。

適当に今日着る物を選んで風呂場に向かう。

本当は大浴場があるのだが、怖いので部屋の風呂場だ。


「じゃあ浴びてくる。」

「行ってらっしゃい。」


 部屋の風呂場とは言え、なかなか豪華というか綺麗だった。

高級なホテルなだけある。

シャンプーが数種類、ボディソープ数種類ある。リンスだけは1つだ。

商品名が記してあるので、自分がいつも使ってるものを使える、ホテル様々である。

 シャワーで汗を洗い流しながら、昨日俺を襲ってきた男の事を考えてみた。

あの男はサバイバル参加者じゃない、多分。

襲った理由は、サバイバル参加者に雇われたからだ、多分。

今日もまた雇われた人が来る、多分。

なら、他人と協力してリンチ状態になる可能性もある。

……恐いな、俺が参加者の中の最年少じゃないだろうか。

ああ、やだやだ。

シャワーを止めて、風呂場から出る。

ちなみに服は、ベージュのズボンに白のシャツ、ワインレッドのカーディガンだ。


「さっぱりした?」

「うん、したした。」

「じゃあご飯行こうか。」

「うん。」


 一階まで降りて食堂まで向かう。

食堂には、たくさんの料理が並んでいる、バイキングだ。

ウルドと同じものを取らないようにしながら適当に器に乗せる。

一番隅の席に男二人で陣取ることにした。

まわりから見たらどれほど滑稽なのだろう。


「そういえば、先生の事教えてなかったね。」

「どういうことだ?」

「君の先生つまり、榊原先生は普通の参加者じゃなくて裏方なんだよ。」

「裏方?」

「そう、誰が殺された。誰がホテルを出た。そういうことを逐一把握してパートナーのヴェルダンディーに報告。」


 おっ、ヴェルダンディー!!

やっぱり仲間なのか。

外国人みたいな仮名使いやがって。


「で、そのヴェルダンディーってのは僕らの仲間でね。ちょっと特別なんだよね。時間の大きな流れや変化は情報を集めるのに時間がかかる。けどヴェルダンディーは特殊な奴でね、情報収集の能力に特化しているんだ。先生には30分かかることも一瞬で出来る。だから先生とヴェルダンディーは二人でゲームを管理する傍観者だ。」

「じゃあ、先生は狙われないんですね?」

「うん、普通なら。」


 良かった、実は知り合いといつか戦う事になるかもと心配してたんだよ。

その状況にならなきゃ分からないが、恐らく俺は知り合いと戦えない。

知り合いじゃなくても戦えるか怪しい、なによりゲームの開始を実感していない。


「俺、そろそろ行くよ。ホテルに帰ってきていいのは何時からだ?」

「午後9時だよ。」

「そういえば、武器は?」

「ああ、外出るときに鞄渡されるから。」

「分かった、行ってきます。」


 ロビーからホテルを出る。

鞄が上から降ってきた、幸いにも周りには人がいないので注目される事はなかった。

荒っぽい渡し方だな。てっきり手渡しかと。

とりあえず、近くのコンビニでトイレに入った。

中身は、拳銃二丁とたくさんの銃弾、サバイバルナイフ三本、そしてメモと三万円。

メモには「何かが足りなくなったら監視役に連絡」と書いてある。

監視役、先生に連絡か。

拳銃を一丁ベルトの左側に引っ掛け、ナイフを一本右側に引っ掛ける。

服装を整え、トイレから出て飲み物を適当に買いコンビニから出た。

 善本が恐いので人が多そうなショッピングモールに向かって歩きだす。

冷静に、焦ると目立ちそうだ。

すれ違う人々が自分を振り返ってる、気がする。

歩くのを止めて振り返った。

俺とすれ違った者は一人も歩いていなかった。全員歩みを止めていた。

そして俺を見ている人もいなかった、人々は俺の後ろの一列に並んでナイフが地面に刺さっている光景を見ていた。

恐らく、10メートルくらいだろうか。

早く逃げないと、でも怖くて足が動かない。

その時、後ろでスコンという音がした。

振り返るとナイフが刺さっていた。

今度は足が動いた。すぐに走り出せた。


「桜庭、情けないな。」

「よ、善本!?」


 脇道から善本が急に出てきた。

もちろん手には刃物だ。何故か作業着を着ている。


「年上に向かって呼び捨てとは、生意気だな。」

「初対面の時、おどけた話し方をしていたのは誰だよ。ああ、そうだ!お前と話をしている暇無いんだよ。」

「また逃がすと思うなよ。」


 ああ、ナイフ俺に向けてるよ。

ど、どうしよう……また窮地じゃん。


「おじさん、邪魔しないでよ。」

「……っ!!」

「えっ?」


 善本が、少年に蹴られている。

少年は空中で回し蹴りをしていた。

早過ぎたのか蹴るまでの過程が見えなかった。

次の瞬間には、俺の前で不敵な笑みを浮かべていた。







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