第四十一話 「油断と開戦」
2月26日 19時25分
「うぐっ……あ……」
何回殴られただろう、アレースさんと合わせて100くらいだろうか。
俺の刀は当たらないが、加速減速を繰り返してウルドに攻撃を当てることができている。さすがのウルドも消耗してるはずだ。
「ふん!」
アレースさんがウルドに殴りかかる、ウルドはそれを避けてアレースさんに蹴りを入れる。
その瞬間に合わせて俺はウルドに刀を降り下ろすが避けられた。
「まだだ」
俺は拳銃を取り出す、弾はまだ入ってるはず。空中に浮いてるウルドに二発撃ちこむ。
次の瞬間、俺の拳銃が蹴り飛ばされた。
アレースさんから自分までの道のりに加速の壁を作る。
「アレースさんっ!」
アレースさんの飛び蹴りがウルドの胸部を捉えた、鈍い音がした。
「ぐは――」
ウルドが吹き飛ぶ、俺は風の能力を使って後を追う。減速の壁を作りウルドを減速させる、仰向けで空中に浮いてるウルドの腹に踵落としを数回繰り返す。
アレースさんも減速の壁を同じところに作ってくれているのかウルドは全然動かない。
アレースさんがウルドの上にに瞬間移動してくる。
「減速の能力解いて、離れていて」
「はい、分かりました」
アレースさんが消えた、そして上空から声がする。
「ウルド、これで終わりだ!」
加速の壁を作っているからか、隕石のような速さでアレースさんは降ってきてウルドに拳を入れた。
アレースさんが器用に体を捻って着地する。
「あぁぁぁぁああああ!」
砂煙の中から悲鳴が聴こえる、ウルドの悲鳴だ。
「体がぁぁあ!」
体がどうしたんだろう、なんだか様子がおかしい。
だんだんと砂煙が薄れていき、ウルドの姿が見えるようになった。
下半身がなくなっている、体が下から順に青い光の粒となっては空に消えていっている。
「アレースさん、これは――」
「沙季達が成功したんだろう。ウルド、お前はもうこの世にいない者だ」
「く……なるほど。過去の僕が――」
「そうだ、もう手遅れだ」
ウルドが俯く、あの余裕がある態度――何を隠してる。
「あと、10分だ」
「何がだ?」
アレースさんが一歩前に出ながら問う。
「昔の僕――小早川楓の心臓が止まった時に爆発するように爆弾をセットしておいた、爆発の規模は地下が崩壊するレベルだ」
地下が崩壊!? そんなことしたらココ、地上は大丈夫なのか?
それにウルドは何故、そんな事を? 死ぬ想定で作戦を練っていたみたいだ。それに能力を使えば爆発くらいなら避けらる、ウルドにしては珍しい作戦だ。
「心、良い勘だね。それに大丈夫じゃない、支えていた柱が落ちるイメージだよ」
「ウルド、お前の本当の目的は何なんだ? 俺には分からない、お前が何のために命を懸けたのか」
「自分のためだよ。心、未来はね――」
ウルドの後ろに人影が現れ、次の瞬間には銃声が鳴り響いていた。そして青い光となってウルドが消えた。
「世界を手に入れる約束は嘘だったようですね、ウルド」
「先生、何で……」
殺す必要は無いはずだ、既に肩までしか存在していなかった。
先生がそこまでする人だとは――
「桜庭くんっ!」
アレースさんの声によって現実に引き戻される。
先生の刀の切っ先が目の前まで迫っていた、それを俺は避けた。
しかしまた切っ先が迫ってきた。瞬間移動させてもう片方の手に移動させたのか。けどこの刀じゃ俺は死なない。
俺はそれを避けずに、攻撃へと移った。
「桜庭くん、君も学習しない人ですね。けどもう手遅れです」
俺の刀は先生の右腕を切り、その後に先生の刀が俺の首を通り抜けた。
そのまま間髪を入れずに攻撃する。先生は右腕が無いのにも関わらず余裕の表情を浮かべている。
「右、左、左、左、右……」
「おらぁ!!」
アレースさんと共に攻撃を仕掛けるが当たらない、先生に先を読まれている。
一旦後ろに飛び退いて距離を取る、先生が先を読むには未来予知の能力だけでは足りない。
まさか――
「先生、過去に戻ってますね」
先生が口元を歪めて、
「良く気づきましたね、ですがもう手遅れだと言いましたよね?」
いや俺が能力を奪われる前に戻れば大丈夫だ。
…………あれ? 過去に戻れない。
「桜庭くん、あなたの能力は全て貰いました」
「一度で全部?」
「気づきませんか、この刀の効果にムラがあることに」
ムラ……そういえば一度過去に戻れなくなるくらい能力を奪われた事がある。けどさっきまでの刀の効果は能力を少し奪われる程度。
「心当たりはあるようですね」
「どこを狙うか、それによって変わるみたいですね」
「桜庭くん、どういうことか説明を頼む」
「はい。例えばあの刀が本物の刀だとします。刀で切った時に相手に致命傷を与える部位であればあるほど刀の効果が大きくなるんです」
「腕だったらすぐには死なないから効果は少なく、首だと即死だから効果が大きい、そういうことか?」
「そうです」
とはいえ、もとからあまり過去に戻る能力を使う気は無かったから大丈夫だ。
右手に刀を握り、左手に拳銃を握り先生へ向き直る。
「まだ戦うつもりですか?」
「はい、未来は些細な事で大きく変わるんですよ。まだ負けた訳じゃありません」
加速の壁を作り、アレースさんの目を見る。
「大丈夫だ、それにもう能力の使用限界がくる。これが最後になるかもしれない」
俺もそろそろ限界だ、金成のこの能力は消費が激しいらしい。
先生の限界も近いと思う、アレースさんでも限界が近いのだ。誰よりも能力を使っている先生が一番早く限界がくるはず。だったらそこを狙う。
――これは賭けだ。
「さぁ、決着を着けましょう」




