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第四十話 『爆弾と姉妹』

2月26日 19時00分


 三人で並んで塔へと走る、そこで私は一つの疑問が頭に浮かび上がる。


「ねぇ、地下ってこんなに人がいないものなの?」

「それは私がやったんだよ」


 美季が得意気にそんな事を言う。

ということは地上の人がいなかったのも美季の仕業だろう。


「美季お姉ちゃん、もしかして地下の人もA地区の人も全員操って避難させたの?」

「そうだけど……」

「能力あとどれくらい使えるの?」

「そ、それは――」


 恐らく、もう使えないのではないだろうか。

そんな大人数を二回連続で動かすのは辛いはず、私としてもこれ以上美季に無理させたくない。

 塔の入り口に着いた、鉄の重そうな扉だ。


「私が先導するね」


 テミスちゃんがそう言う。私達はそれを承諾した。

 扉を開くとすぐに階段が見えた、階段で一番上まで行かなければならないのかな?


「これは大変だね……」


 階段を見つめながら美季が言った、そんなことを言ってる時間は残されていない。


「急ごう、時間がない」


 階段はまた螺旋階段だった。

円柱状の建物だから当たり前だけど、なんだか螺旋階段の方が疲れる気がする。

 三人でとにかく上へ上へと進んでいく。しばらくすると物音が聞こえてきた――その音がだんだんと大きくなってくる。


「あれ、行き止まりだね」


 階段を上りきっても何もなかった。しかし物音がする。

 とりあえず、私は未来を予知してこれからどうなるかをチェックする。

 30分後に入り口を発見する、という未来だ。ここにあるのは間違いなさそうだ。

 私はとりあえずテミスちゃんに提案をしてみる。


「テミスちゃん、何か能力使ってみてよ」

「分かった」


 能力を使うこと、それが未来を変える方法だ。

 テミスちゃんが緑色の光で剣を作りだす、今度はサイズが大きい。


「お姉ちゃん達、ちょっと下がってて」


 それに従ってテミスちゃんから離れる。テミスちゃんはふわりと飛び上がり空中で回転切りをしてみせた。

 次の瞬間、壁がずれ落ちた。テミスちゃんが切ったらしい、床に着地したテミスちゃんはパタリと倒れこむ。


「「テミスちゃん!」」


 急いで駆け寄る、テミスちゃんは笑っている。


「この技疲れるんだよね……。お姉ちゃん達、そこに部屋があるみたいだから行ってみよう」


 テミスちゃんの指差す方をみると壁の切れ目から光が漏れている。

 近づいて、中を見る――


「小早川だ」


 小早川は椅子に縛られていて物音をたてない、目が虚ろだ。


「沙季お姉ちゃん、どいて」


 テミスちゃんが美季の手を払って立ち上がり、私の前に来る。

 するとテミスちゃんは壁を長方形に切り、蹴飛ばして部屋への入り口を作ってくれた。

 テミスちゃんは壁に背を任せて座り込んでしまった。


「終わったら起こしてね、お姉ちゃん達」


 私と美季は部屋へと侵入する。小早川は動かない。


「小早川くん、小早川くーん」


 美季が体を揺さぶるが反応がない。小早川の体には何かをチェックする管がついている、むやみに手出しできない。とりあえず逃げる準備をしてからだ。

 それを伝えるために振り返って美季を見る。


「美季」

「分かってるよ、お姉ちゃん。これじゃ何も聞き出せないね、だったら――」


 そう言って、美季が銃を取り出して、小早川を撃とうとしている。


「美季、ストーーーップ!」


 銃声が響いて、血が飛び散る。


「え、お姉ちゃん何か言った?」

「あんた、何で撃っちゃうの!? この管が怪しいから撃つなって言おうとしたのに!」

「いや、時間がないってお姉ちゃんが言うから……」

「確かに言ったけど、それは――」


 ピーッという音に話を遮られた。小早川の横にあったパソコンに地図が表示された。

 小早川についていた管はこのパソコンに繋がっていたらしい。ディスプレイに地図と数字が現れた。地図には


「どうしたの、沙季お姉ちゃん」

「あ、テミスちゃん。この地図と数字何だと思う?」


 テミスちゃんに画面を向ける。そしてすぐに答えが返ってきた。


「お姉ちゃん達、すぐ逃げないと……これは爆弾の設置場所と残り時間だよ。この数からして地下にいたら助からないよ」

「「爆弾!?」」


 改めて表示されている数字を見る――ちょうど10:00と表示された。

あと10分、美季は絶対に逃がす。私の妹だ、死なせない。

 私の未来は、もう決まっている。


「テミスちゃん、人間を瞬間移動させることってできる?」

「人間を? 出来るよ、少し乱暴になっちゃうけど」


 テミスちゃんがハッとした顔をした。気づかれたのかな?


(沙季お姉ちゃん、人間の瞬間移動は瞬間移動ができる人間だけが対象だよ。だから――)

「知ってるわ」


 ビルが降ってきた時、プロメーテウスさんが私を助けられなかったのはそういう理由からだと勘づいた。

 美季が怪訝な顔をしている、美季も読心の能力を使える、近くではあまり長話は出来ない。


「美季、残り時間があと5分になったら教えて」

「……分かった」


 美季はパソコンに近づいて座り込んだ。

これならまだ話せる。テミスちゃんに近づいてなるべく小さな声で話す。


「テミスちゃん、あえて口で喋るわね。美季と二人で地上に帰って」

(それじゃ、沙季お姉ちゃんは!)

「私はここに残る、瞬間移動が使えないからね。10分じゃ地下から抜け出せないわ」

(だったら私も残る)

「だめ! ……だめ、美季も地下に残ることになる。美季の瞬間移動は今、小早川を殺してできる手に入れたばかりよ。リスクがあるわ」

(美季お姉ちゃんも私が、助ける)

「テミスちゃん、もうヘトヘトじゃない。自分と私達二人を守りきるのは無理だわ」

(でも……)

「まだ私が死ぬと決まった訳じゃないわ。不発になる爆弾があるかもしれないわ。それに――」

「お姉ちゃん、あと5分になったよ」


 時間切れだ、テミスちゃんごめんね。何がなんでも私はここに残る。


「美季、こっち来て。テミスちゃん、頼むわよ」

(分かった、とりあえず美季お姉ちゃんを地上に連れていく。そしたらすぐにここに戻ってくる)

「……じゃあ、行きましょう。美季三人で手を繋ぐわよ」


 手を繋いだ次の瞬間、テミスちゃんと美季は姿を消した。


「行っちゃった」

 

 未来が見えない、私の体力が限界だからだろうか。さて、この薄暗い塔から降りようかな……。

 螺旋階段を下る。美季は助かった、ウルドが居なければ榊原は弱い。私達――能力者は時間の枠からはみ出しているから記憶は残るだろう。ウルド時戦ったこの一ヶ月を活かさなきゃいけない。


「まぁ、私の未来は無いんだけどね」


 一人だけで笑ってみせる。心くんには悪いことしたなぁ……でもいつか会えるよね。

 美季にもまた会えるはず、だったら今の状況も悪くない気がする。

 鉄の扉を開けると人工的に明るい街並みが目に入る。


「またね、みんな」


 白い光が私を包み込んだ。



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