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第三十七話 「再戦と軽視」

2月26日 16時32分


「遅くなりました、沙季さん。やっと助けられた……」

「やっと?」

「あ、気にしないでください


 ナイフは私へ降ってこなかった。代わりに降ってきたのは聞き慣れた声。

 そして私の手から剣が抜かれたと思ったら。何度か金属音が聞こえた。

 ホッとした私は地面にへたりこんでしまったが、榊原は遠くに離れてこちらを睨み付けているだけ。ナイフは地面に落ちていて、隣に見慣れない刀が刺さっている。これは心くんの刀だろうか、でもどこかで見た気がする。


「 沙季さん、やっと助けられた……」

「やっと?」

「あ、気にしないでください」

「ん?まぁいいや。ウルドなら向こうに――」


 心くんが真剣な眼差しで聞いてくる、ホッとしてる暇は無いってことかな。私はウルドがテミスちゃん達と戦っている方を指差したが、そこには誰もいなかった。

 深手を負っていたプロメーテウスさんすらいなかった。


「あれ?」

「とりあえず、向こうに行けば会えますか?」

「うん、多分……」

「分かりました」

「心くん、ありがとう」

「いや、無事で何よりです。さて早く合流しましょう」


 そう言って、心くんは私に剣を返してくれた。そして地面に刺さっている刀を抜き取り、何歩か前にでて榊原に向かい合った。

 その眼差しは、怒りに溢れていた。


2月26日 16時35分


 間に合った、沙季さんの前では余裕に振る舞っているが精神的に辛い。坂城さんから貰った資料に俺の能力――タイムスリップ、坂城さんは時間跳躍と名付けていた能力について『この能力は戦闘時に使うのは望ましくない、過去に戻った瞬間に未来は変わってしまうからだ。この能力は先読みの能力ではなくやり直しの能力だということを忘れてはならない』と書いてあった。

 俺は沙季さんを助けられなかった、だから坂城さんの助言に従ってやり直しをした。沙季さんを助けられるまでやり直しを繰り返した。何回、過去に戻ったか分からない。

 でも、それも終わり。良かった、これは沙季さんの死という運命に抗えたって事でいいのだろうか。この戦いが終われば分かることだ、今は目の前の敵に集中だ。敵――先生。


「先生、随分と変わりましたね」

「そうですか? 桜庭くんは変わりませんね、少し髪が伸びたくらいですね」

「容姿の話をしてる訳じゃないです。そんな刀をブンブン振り回しちゃって、って言ったんですよ」

「短時間の間に23回も過去に戻った人に言われたくありません。そんなに能力を乱用する人じゃなかったでしょう」

「ちっ……そうだった。先生、あなたの能力はそれでしたね。」


 状況を把握する能力、坂城さんの資料には『情報分析能力は、顔を合わせたことのある人物が現在している行動が分かる能力』と書いてあった。


「能力を使っていると分かれば、ある程度対策が討てますもんね」

「そう、あなた達が何をしているかは全てお見通しです」


 坂城さんの資料には『欠陥能力』と書いてあった、先生の能力は予知する訳でもなく攻撃に繋ぐことができる訳でもない。つまり全てが後手にまわってしまう、だから先生はあの刀で能力を奪ったりしているのだろう。

 テミスちゃんに聞きたいことがある。テミスちゃん達と合流するなら向こうから来て貰ったほうが早い……だったら先生を追い詰めるのが得策だ。


「考え事とは余裕ですね」

「心くんっ!」


 なるほど、考え事をしているところを狙って――! 他の能力との組合せがある以上、情報分析も油断はできないか。

 先生の刀が俺の腕を通過した、そうだ先生の刀は肉体を切らずに能力を切り取る。


「あなたの能力も貰いますよ」


 先生はそのまま沙季さんを狙いだした。 俺は瞬時に自分の刀を沙季さんと先生の刀の間に割り込ませる、その流れで先生の顔に向かってパンチを繰り出す。


「甘いですよ、桜庭くん」


 先生は微笑みながらそう言った、甘く見られたものだ。

先生が沙季さんの能力――未来予知を使うことは分かってる、刀を使うことも分かってる。坂城さんの資料によると瞬間移動は止まっているものにしか働かない。つまりこの状況では刀以外は静止していない。


「甘いのは――」


 案の定、俺の拳の前に先生の刀が瞬間移動してきた。ここで俺が拳を下げるのが先生の予知した未来。 だったら未来通り一度拳を下げよう、本命は次だ。

 下げた拳をもう一度、先生の顎に向かって振り上げた。先生が咄嗟に刀を拳の前に持ってきたが構わない、その刀じゃ俺を切れない。


「あなただ」


 俺の拳は刀を通り抜けて先生の顎を捉えた、確かな手応えだ。先生は後ろに倒れる、さて先生が追い込まれればウルドが来る筈……。

 とりあえず刀を逆手に持ち倒れている先生に対して持ち上げる、これならいつでも先生を殺せる。


「う……っ……」


 先生がピクリと動いた、意識はまだあるみたいだ。瞬間移動されると厄介だ、どうしたものか?


「心くん、ウルドが来るわ、右側から回し蹴りよ!」

「香!」


 ウルドが来た、案の定右側からの蹴りだ、しゃがんで避ける態勢をとる。俺の頭をウルドの脚が掠めた。

 沙季さんと一緒に思い切り後ろへ跳んでウルド達と距離をとる。

先生が動けるようになるまではウルドも動かないだろう。


「桜庭くん!」

「心お兄ちゃん!」


 予定通り二人と合流することが出来た、でも気になることがある――テミスちゃんが普通に喋ってるし、剣と盾持ってる。これが本気を出してる証拠か?

 それに二人とも傷だらけだ、ウルドがどれだけ強いか分かる


「お久し振りです」

「坂城さんはどうした?」

「ジュノを道連れにして……」

「そうか。沙季、プロメーテウスはどこに行ったんだ?」

「いや、それが急に居なくなってしまって」


 沙季さんとアレースさんがお互いに申し訳なさそうな顔をしている。テミスちゃんは何とも言えない、というより前から知っていたような表情をしている。


「テミスちゃん、聞きたいことがあるんだけどさ」

「どうしたの?」

「これの一番最後にA12って書いてあるんだけど……分かるかな?」


 テミスちゃんが可愛らしく両手に資料を握って『A12』を睨み付けてる。


(心お兄ちゃんは、ウルド達のこと知ったんだよね?)


 テミスちゃんに向かって頷いてみせる、それは資料に書いてあった。わざわざ能力を使って話してるということはあまり口に出してはいけない事なのだろう。


(沙季お姉ちゃん、アレースお姉ちゃん、心お兄ちゃん。ウルドの過去――小早川楓の居場所が分かったよ)

「小早川の居場所?それが書いてあったのか」

(うん、ウルドに聞かれたらいけないから能力使って話すね。質問もしないで欲しいんだけど……いい?)


 俺、沙季さん、アレースさんが頷く、それを見てテミスちゃんが頷く。


(これから、二手に分かれようと思っているの、小早川組とこっちの二人組の二つ。いい?)


 また三人が頷き、テミスちゃんがそれに応えた。

テミスちゃんは必然的に小早川組になる、俺はどうしようかな。


(まず、私は小早川組にならなきゃいけない。だから小早川組はあと一人必要、アレースお姉ちゃんはどう?)

「私がやっても良いんだが……桜庭くんはどうだ?」


 先生が改心してくれるのが一番のハッピーエンドだ。だったら残った方が良い結果に繋がりそうだ。


「俺はこっちに残ります」

「分かった、じゃあ私がや――」

「私がやるわ」


 沙季さんがアレースさんの言葉を遮った。かなり強い言い方だったがどうしたんだろう。


「沙季お姉ちゃん? どうしたの、そんなに怖い顔して……」


 テミスちゃんが普通に喋ってる、沙季さんの勢いに負けてついつい声を出しちゃってるようだ。


「テミスちゃん、小早川は地下にいるでしょ?」

「う、うん」

「今、そっちには美季がいるのよ。私は美季に無理させたくないの」


 美季さん、生きてたんだ。良かった、今ここに居ない人はみんな亡くなってしまったと思ってたけど、どうやら違うらしい。


「アレースさん、一つ聞いても良いですか?」

「どうした?」

「誰が生きてるんですか?」

「今、ここにいる四人。今どこにいるか分からない美季とプロメーテウス。意識不明のスクルド……合計で7人は確実に生きてるよ」

「組織の人を入れても7人ですか?」

「そうだ、組織内は私達を除いて全滅。ついでにジュノの組織も全滅していると分かった」


 そのジュノが死んだから、本当に全滅したって事か。

この戦いが終わったら犠牲になった人は報われるんだろうか。


「心お兄ちゃん、そろそろ来るよ。私達は今から、スクルドが寝てる組織のオフィスに向かうね。だからこっちはお願いっ!」


 テミスちゃんは緑色の光を斜め前に向かって放った。その緑の光はチューブになり、だんだんと大きくなって内部を人一人が歩けるくらいの大きさになった。


「沙季お姉ちゃん、行くよ!」

「うん!」


 二人がチューブの中に入っていく、こんな能力あるんだ。

 この戦いは俺の風の能力がキーになっていると思う、相手が油断した時に風の能力で一気に責めたてよう。


「桜庭くん、行くぞ」

「はい」


 二人同時に加速の壁を作る、俺は刀を握り直して地面を蹴った。

 さて、最後の戦いだ。


 




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