第二十七話 『少女と出国』
2月3日 15時30分
沙季さんが隣で寝てしまっていたらしい美季さんを連れて起きてきたので、二人にあったこと聞いたことを全て伝えた。
俺が、気になったのは沙季さんがウルドについての話に驚いたのに対して美季さんが驚かなかったことだ。
後で理由を聞いてみるが、その前に決めなきゃならないことがある。
誰も言い出さないので、俺からみんなに聞いてみることにした。
「これからの日程はともかく、こんな大人数が聖条院宅に集まるのはちょっと……何かいい方法ありますか?」
「よし、家を買おう」
「「「は!?」」」
一般人三人――美季さん、沙季さん、俺には考えられない発想だった。
組織の人間は対して驚いてない。むしろ俺達に対して「家の一つや二つくらいで驚くなよ」という視線を送ってるくらいだ。
「どこに家を買うの?第一、お金はどこから出るの?心くんはもちろん、私達も出せないわよ」
沙季さんが、一般人代表としての意見を言う。アイコンタクト無しでも気持ちは通じあうらしい。
その質問に対してはスクルドくんが答えるらしい。ポルックスさんを真似して手を挙げている。
「お金は僕達、組織が出すよ!沙季達はサバイバルゲームが終わった時点で組織の一員だからね」
「そうなんだ。必要経費みたいな感じなんだよね?」
「うん。さすが、心お兄ちゃん!」
細かいことは組織の事務職がやるから、気にするなってことか。
ここで、俺の中に二つの疑問が出てきた。
良い機会だから聞いてみることにした。
「組織って何人くらいいるんですか?」
「「私も気になってた。」」
聖条院姉妹の相性は抜群だ、俺との意思疏通も完璧である。
組織の人は誰が答えるか決めているのかアイコンタクトをとりあっている。誰でも良いんだけど……。
「大体……20人くらい……もう少し多いかも」
今まで一言も喋ってなかった、テミスちゃんが答えた。
予想通りの声をしていた、もの静かな感じとか。
それはともかく、20人か……どれくらいの人が能力者で、どれくらいの人がアレースさんのような戦闘要員なんだろうか。
「全員が能力者だよ……その中で……大体……10人くらい……が……戦闘要員。」
「あ、ありがとう」
テミスちゃんは読心ができるのか、凄いな。スクルドくんも小さいけど、テミスちゃんのほうがもっと幼い雰囲気をしてるのに能力を使いこなしてる。
(そんなことないよ、心お兄ちゃん。)
「ん!?」
「どうしたの、心くん?」
「いや、今誰かの声がしたような」
「そう? 私は聞こえなかった。」
(今は心お兄ちゃんに話しかけてるんだよ?他の人には聞こえないよ。)
これは……テミスちゃん?でもこの声に対して、どうやって反応したら良いんだろう。
(そのまま、頭の中で何かを考えてくれれば分かるから)
分かった、どうして俺に話しかけてきたの?
声に出してはいけない内容なんでしょ?
(うん、まわりの人にはバレたらいけないの)
でも、まわりの人が俺に対して読心の能力を使ってきたらどうするの?
(……あ、それは駄目だね。じゃあ、後で話そ?)
分かった、後でね。
周りを見てみるが、誰一人俺を見ていないということは気づかれなかったのかな?
「では、私は組織に連絡してくる。明日の10時にA地区の駅に集合だ」
「分かりました」
とりあえず、沙季さん達と情報を整理したほうが良さそうだ。
組織の人達は適当に「またね」とか「後で」とか言って部屋から姿を消した。
2月3日 17時30分
組織の人達が帰った後、新田さんの墓に木で作った十字架を立てた。何で十字架なのかと聞くと「新田さんの宗教上の都合でしょうがなく」だそうだ。
その後、早めの夕食をとり、今はテーブルを囲んで会議を始めようという感じだ。
「とりあえず、私達はこれから何をするか決めましょう。えっと……まず心くん!」
「は、はい!」
「何か良い案ない?」
「ないです」
これからか……それなら、坂城さんを探した方が良いんだろうか?
坂城さんがいれば小早川を探しやすいだろう。
「じゃあ……美季は?」
「坂城冬を探した方が良いんじゃない?彼がいた方が小早川を探しやすいでしょ」
あ、意見を盗まれた――いや、読まれた。美季さんを読心の能力が使えるようになっているのを忘れていた。
ずるいなぁ、美季さん。
「お、良いわね。じゃあ美季の意見を採用するわ」
「じゃあ、とりあえずは分かれて情報収集ですね」
「そうね、とりあえず今日は寝ましょう。心くんはどっか適当に使って寝てね」
「はい、おやすみなさい」
「「おやすみ~」」
二人とも自分の部屋に入ってしまった、当たり前か。
うーん……どこで寝ようかな。聖条院宅を捜索していると、書斎を見つけた。
本棚に囲まれて中央にはソファが置いてある――よし、ここで寝よう。
ソファに寝転がり、明日からどうやって坂城さんを探すか考えていると目の前にテミスちゃんがいた。
「うわ!?脅かさないでよ、テミスちゃん」
「ごめん……なさい……」
こうして音もなくやって来たところを見ると、どうやら瞬間移動ができるらしい。
「まぁ、いいや。とりあえず話を聞かせてくれるかな?」
「うん……あのね――」
(坂城おじさんは今、アメリカに向かっているの。サバイバルゲームの終了を告げた瞬間に空港に向かったからまだ到着はしてないと思う)
「うん、なんでしゃべり方を変えたのかな?」
(こっちの方が話しやすいの。ダメ?)
「いや、オッケーだよ。」
(じゃあ、話を続けるね。彼はアメリカである研究をしてるの。研究の内容は想像つくよね。だから、彼の研究が終わったらここに連れ戻して欲しいんだ。心お兄ちゃんならできそうな気がする。)
「アメリカって……そんな急に――」
(もうチケットは手配してあるから、お願い。)
「分かったよ。明日から行くのか?」
(いや、今日の夜の便だよ。そろそろ出発しないといけない時間だよ)
「マジで!?荷物どうするの?」
(それも用意してある。空港で渡されると思う。)
「……分かったよ。行くよ」
(ありがとう、観光してきても良いよ。ウルドについてはこっちで調べておくから。)
「よろしく頼んだ」
(あ、あと心お兄ちゃん)
テミスちゃんは俺に紙を一枚渡してきた。中には電話番号が書いてある。
(困ったらここに電話してね。力になってくれる……と思う)
「曖昧だね」
(うん、電話に出てくれたらラッキーだよ)
凄く急な話だったが、そんなに困ることは無かった。
俺は空港に向かう。




