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第二十六話 『未来と世界』

2月3日 7時12分


「本当に大丈夫なのですか?」


 ――大丈夫じゃない。

だから無視をする、当たり前のことを聞かないで欲しいな。

小石が自分の体を貫通したのに、平気な人間はいない。


「まさか桜庭くんがここまでとは……私も知りませんでした。」

「私も、じゃない。僕は知っていたよ、心は強い。」

「では、なんで……」



 心は金成を殺した影響で武器なんか使わないと思っていた。

こんな短時間に、精神状態が回復してるなんて……さっきの心はそこまで遠くの未来から過去に来ていない、確か7時前から来た筈。

 ――一体何があった?


「君は知らなくていい、それより作戦を進めて。」

「もう、ほとんど終わってますが必要なものが幾つか……」

「そうか、移動しながら聞く。」


2月3日 12時4分


「うー、良く寝たな……。」


 実に優雅な朝の目覚め、いや昼の目覚めだった。

俺の横でモゾモゾと動く物体が視界に入った――


「うわ!?びっくりした……沙季さんか。」


 沙季さんの隣で寝てしまっていた、恥ずかしい……。

沙季さんは一体何歳なんだろう、沙季さんは随分と大人な雰囲気で双子の妹の美季さんがフレンドリーなので、年齢が分からない。


「桜庭くん、何してんの?」

「うわ!?びっくりした……美季さんか。」

「うん、私だよ。ちゃんと寝れた?」

「はい、寝れました。」

「お姉ちゃんの隣で?」

「……。」


 この人、人をからかうのが好きだな……、でも元気で良かった。

もう一回戻って新田さんを助けよう!

よし、ウルド達が現れる時くらいまで――


「ちょっとちょっと、冗談だって!怒らないで!」

「あれ?」

「え、どうしたの!?」

「いや、何でもないです。」


 過去に戻れない、どうしてだろう。同じところには二回は戻れないのか?

いや、俺は一度戻ったことがあるから、その可能性は低い。

あるとしたら……俺の能力のレベルの様なものが下がった?

能力のレベルというものがあるならあり得る話だ。


「能力のレベルかー。」

「はい、能力の……え?」

「あ、当たってた?」

「当たってましたけど、それって新田さんの能力ですよね。」

「うん、結果的に私が彼を殺したことになったからね。でも、彼が近くにいるみたいで全然悲しくないよ。」

「そうですか。」


 僕が未来から来て変わった点は美季さんの精神状態か、俺の行動が無駄にならなくて良かった。

そういえば新田さんの遺体をどこに埋めればいいんだろう?


「あー、翔有の遺体は私が中庭に埋めたよ。」

「美季さんが!?」

「うん、組織の皆さんの許可は得たし。」

「組織の皆さんって?」

「私の部屋にいるよ。」


 俺は隣の美季さんの部屋に向かった。扉をあけると全員スーツ姿人間が1,2,3,4,5……五人だ。

そのうち一人が顔見知りだ、何で集まってんの?

俺は唯一顔見知りのアレースさんに話しかける。


「アレースさん、どうしたんですか?」

「それが――」

「桜庭さん、それは色々事情がありまして、全部は説明できません。あ、俺はポルックスっていいます。」


アレースの隣に座っていた茶髪の男の人――ポルックスさんが会話に割り込んできた。

喋りたがりなんだろうか、セリフを取られたからかアレースさんがムッとしている。


「アレースさん、話は僕が聞きますよ。別室でゆっくり話しま――痛っ!殴るんなんて酷いじゃないですか。僕の顔に傷をつけたら許しませんよ。ああ、桜庭だっけ?よろしく、僕の事はプロ様と読んでくれ。」

「プロメーテウスさん……気持ち悪い。心お兄ちゃん、僕はスクルド!沙季のパートナーでこの子が新田お兄ちゃんのパートナーだったヘルメース。」


 俺の苦手なタイプのキザな男――プロメーテウスと明るい男の子――スクルドくん、一言も喋らないヘルメースちゃん。

全員の名前と性格なんとなく把握した、プロメーテウスにだけは関わりたくない。


「はぁ?酷いな、僕はキザでもなんでもない――ただのかっこいい男の子さ。」

「……きも。」


 プロメーテウスが部屋の端でぶつぶつ言ってる。

あいつも読心の能力を使えるのか、組織の連中はとんでもないな。

もしかして全員が全ての能力を使えるのか!?


「みんなして心が読めるなら口を開かなくて良いですね。」

「良くないよ!僕は読心の能力使えないもんっ!人それぞれ才能があって使えない能力とかあるんだよ。」


 スクルドが悔しそうに話す、なかなか子どもって賢いな。

何歳か知らないけどこの子も組織の一員なんだな。

才能……か、俺が過去に戻れない理由も聞こうかな?


「桜庭くんが過去に戻れない理由は、ただ1つだ。私も警戒していた。あの刀には仕掛けがあるらしい。」

「仕掛けですか。」

「そうだ、仕掛けだ。どんな仕掛けかというと――」

「切った相手の能力を吸収できるみたいなんです。体に傷を与えず能力だけを吸収するんです。別に殺さなくても他人の能力を使えるけれど能力の強さは成長しない。そこがデメリットです。桜庭さん、あなたは多分切られたんだと思います、気づかないうちに。」


 切られたのか……でも、榊原先生が俺を切るのは不可能じゃないか?

俺と榊原先生の接触は無かった。

いや、気づかないように切られたんだとしたら――


「だけど、桜庭くん。あの刀は存在しない筈なんだ。」

「存在しないって、どういうことですか?」

「あの刀は今から3年後に秘密裏に組織が手に入れる筈だった。スクルドの未来予知の範囲は私達とは比べ物にならない、5年先まで見える。」


 アレースさんがスクルドくんの頭を撫でながら、話を続ける。

5年先か、サバイバルゲームが始まってから未来はたくさん変化した筈。

彼もさぞかし混乱しただろう。


「そこから分かることは1つ、ウルドは現代の人間じゃない。私達と同じように暮らしてきたが、実際はもと先に産まれていたのかもしれないし、この世界じゃないところから来たのかもしれない。」


 ウルドが、未来人や異世界人だったりするってことか。

能力を使ってる時点で俺達も異世界人みたいなものだけど……。

もし、異世界人だったら目的はこの世界を乗っ取るとかだろう。

未来人なら目的は、未来を変えるとかだろう。


「でも、アレースさん。異世界人の可能性は低いですよ。榊原先生と手を組む理由が無いですから。」


 ――そうだ、俺には彼女がウルドと一緒にいる理由が分からない。

「世界なんて知らないです。」って言って手を組むのを拒みそうだが……まったく何に惹かれてウルドと一緒に行動してるんだか。

不意にポルックスさんが手を挙げる、それを見て皆がポルックスさんに注目する。


「俺から1つだけ――サバイバルゲームは終了です。現在生き残ってる、桜庭さん、聖条院姉妹、坂城さんと小早川さんが勝者です。それで、小早川さんについてなんですが……おい、プロ!いつまでも拗ねてないでこっちに来い。」

「は、はい。」


 縮こまりながらプロメーテウスがこっちに歩いてくる、反省したか。

プロメーテウスはポルックスに促されながら話を始める。


「僕は、小早川……くんについて説明します。彼は現在行方不明で、パートナーのカストルは何も知らないとのこと。」

「それで、俺達は小早川を探した方が良いのか?」


 だとしたら困難だ、なぜならあいつは瞬間移動を主な移動手段としているからだ。


「難しいよ、彼の能力はかなり高いレベルに達している。彼がやろうと思えば日本海スレスレから韓国に瞬間移動できる。」

「韓国!?」

「とにかくっ!状況はかなりピンチだ、そこで私達組織はあたらしい作戦を開始する。私を含め、ポルックス、スクルド、ヘルメース、プロメーテウスと各パートナー。それに坂城さんとそのパートナー――テミスの計10名はウルドと榊原香を制圧し小早川楓を探しだし、戻ること。以上!」



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