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第二十四話 『小石と秘策』

2月3日 1時30分


 沙季さんの説明が分かったあと、俺はすぐに過去に戻った。

本当ならぐっすり眠っている時間だけど、自分の体には働いて貰わなければならない。

ベッドの下にある、拳銃を取り出してベルトに引っ掛ける。

ケータイで沙季さんに電話をかける、2回のコールで沙季さんの声が聞こえた。


「もしもし。心くん、こんな夜中にどうしたの?」

「沙季さん、ダイヤと炭は紙一重です。」

「……それで?」

「あ、それで?」

「それで、何で私に連絡してきたの?」


 うーん、何だか変な感じだ。

実に説明しづらい、新田さんが未来では死んでしまったこととか。


「沙季さん、あと30分後くらいにウルドが沙季さんの家に来ます。そこで、美季さんと一緒にいるであろう新田さんがウルドに殺されてしまいます。美季さんに頼まれてそれを止めるために過去に来ました。協力してください。」

「……分かった、協力するわ。作戦はあるの?」


 ……何も考えてなかった。

未来から来た意味ないじゃないか。

それに1つ気になることがある、人の死を無かった事に出来るのか。

タイムスリップ系の物語で必ずと言っていいほど言及される点だ。


「な、ないです!とりあえずそっちに行きます!」


 そう言って、部屋を出ようとするとアレースさんが立っていた。


「行ってらっしゃい、やっぱりただ事じゃなかったのね。」

「あ、はい。」


 アレースさんはそれだけでまた歩いていってしまった、俺は階段を下りて走ってホテルを出る。

アレースさんもウルドと同じで俺が過去に戻っても影響が無いのか。

能力の関係ってどうなってるんだろう、今度誰かに聞いてみよう。

ホテルから歩いて五分くらい先にある交差点で信号が変わるのを待っていると、誰かに肩を叩かれた。


「少年、久しぶりだな。」


 今朝……いや、未来で聞いたフレーズだ。

振り向かなくても誰か分かる、肩を叩いたの坂城さんだった。

それにしても意外だ、この時間もこの人はこの辺に居たのか。


「少年、何故そんな顔をしている。まるで最近会ったような……なるほど、お前の能力はそういうものか。」

「あの……坂城さん。」

「気にするな少年。お前はここに私がいる理由が知りたいだけだろう。お前が動いてくれないと困る、研究がはかどらない。だが、顔を見た限りは大丈夫そうだ、未来の俺に対処されたか……とすると次は捕獲場所か。」

「あ、あのー。」

「またどこかで会おう。どこかに向かう途中なのだろう?なら早く行け、時は金なりと言うだろう。金などいらないがな。」

「……はい、またどこかで。」


 これ以上は話していても無駄な気がする、おっと!

信号が点滅していたので全力疾走だ、そのままスピードを緩めずに沙季さんの家に向かう、走ったので沙季さんの家まではそう長くはなかった。


「心くん、走ってきた割には遅いわね。」

「色々ありまして……。」


 坂城さんの事を言う必要は無いだろう、特に害された訳ではない。

沙季さんも、突っ込もうとは思ってないらしい。


「今、何時か知ってる?」

「いや、知りません。」

「2時12分よ。」

「え!?」


 まだ2時前だと思っていたが、良く考えればこんな時間なのは当たり前だ、あんなに立ち話をしていたんだからな。


「すみません、ウルドは?」

「まだ来てないわよ、美季達は中にいるわ。」

「さっくらっばくん!待ってたよ!」

「美季!何で出てきたのよ……。」

「おお、桜庭くん。話は聞いたよ、何やら僕を助けてくれるんだって?君を助けた覚えは無いんだけどなー、ははっ。」


 新田さん、ウルドと話し方が似ててイライラするな、人を小馬鹿にしてる話し方。

この人ほど人生を楽しんでる人はいないんじゃないか?


「そ、そんな怖い顔しないでよー。わ、わわ悪かったよ。」

「いえ、でも新田さん。助けられた人じゃなかったら助けちゃいけない訳じゃないですよ。」

「……いや違うよ。あ、また気を悪くさせちゃったらゴメン。これだけは言わせてよ、人を助けるって事は助けた人に無条件で借りを作ってるものだと思う。そんなつもりは無くても、どんな人でも多少は申し訳なくなるものでしょ。困ってる人がいる度に助けていたらたくさんの人の心を重くしてしまう、僕はそれが嫌なんだよ。」

「だから、助けられた人を助けるのは恩を返しただけだから大丈夫……って事ですか?」

「そうだよ。」


 この人は、そういう人なのか。

俺から見ると情けない人だけど、自分の意志がちゃんとある人だ。

みんなには最初からこの人の内側が見えていたんだろうか。

その時、聖条院家の正面の家、正確に言うなら正面は車道なので右斜め前の家が吹き飛んだ。


「やあ、みんな。こんばんは。」


 まるで俺が来るタイミングを見計らって来た様だ。

隣には榊原先生がまるでパートナーのように立っている、いや榊原先生のパートナーがウルドなのか。


「はい、榊原先生。この刀は先生が使ってください。」

「いいんですか?」

「はい、大丈夫ですよ。僕に武器は必要ありませんから。」


 ウルドは、瓦礫の中から破片を集めている。

嫌な予感がする、周囲に減速の力を働かせておこう、相手は瞬間移動が使えるから、銃は隙を見つけて撃つしかない。

だったら、沙季さんに渡しておいた方が良いな。


「沙季さん、俺の銃も使ってください。」

「心くんはどうやって戦うの!?」

「武器はたくさん落ちてますよ!」


 とりあえず小石を拾っておく。金成の能力をつかえば小石が銃になる、見た感じウルドも多分使えるんだろう。まだ金成の能力を使いこなせていないから細かい設定ができないけど一ヶ所だけを加速の力を働かせておこう。



「心が前に出てくるなんて珍しいね?」

「うるせぇ、よ!」


 小石を思いっきり投げる。

よし、小石が加速をする……しない!?


「心が考える事なんか分かるよ。僕も速度を変える空間を作れる、これで僕と君の間には『減速の壁』ができたね。」

「うるせぇ、うるせぇ!」


 俺は辺りの小石を投げまくる。

落ち着かなきゃ、落ち着かなきゃ……これじゃ勝てない!

投げた小石はほとんど動いていない、浮いているのと同じだ。

ウルドの能力の減速の力の方が強いということか。

ウルドと俺は『減速の壁』を挟んで向かい合う。


「周りが見えてないね、心。榊原先生は、どこにいるんだろうね。」

「……!」

「この勝負は君たちの――」


 銃声がウルドの言葉を途切れさせた、沙季さんの銃だ。

銃弾はウルドの手前でゆっくりと進んでいる。

ウルドはその弾を叩き落とした。

あれ、何で叩き落とせたんだ?


「……そうか君が居たのか。君も今のうちに殺さないといけないな。」


 ウルドの表情が変わった、見たこと無いがこれは本気モードか。

沙季さんを新田さんの方に向かわせないと……!

作戦は思い付いた、叩き落とす……か。思い付きだか試す価値はあるな。

成功すれば、追い返すことくらいは出来るかもしれない。

恐らく、チャンスは最初の一回だけだ。


「沙季さん!新田さんの方をお願いします!こっちは任せてください。」


 さっきまで俺が働かせていた減速の力をを全て加速の力に変えて『減速の壁』の中の小石を少しでも動くようにする。減速の壁を挟んで向こう側――ウルド側に新たに加速の力を働かせる。

ウルドには……まだ気づかれてない、賭けは成功だ。


「逃がさないよ。」

「ウルド!お前の相手は俺だろ。」


 ウルドが俺の言葉に反応して止まった。その隙に沙季さんは新田さん達を追って家に入っていった。

 あと、少し……ウルドに瞬間移動を使わせたらいけない。


「ウルド、俺にはまだ策がある。」

「心、今の君の能力なんか僕に比べて大したことないんだよ?僕の勝ちだよ。……っ!」


 今度は無音だった、銃では無かったからだ。

成功だ、俺が投げた小石がウルドの左肩を貫いた。


「もう一回、言ってみろよ。」

「心、一体何を!?……ははは、そういう事か。やられたな、まさか時間差を利用するとは。」


 もう見抜かれたか……そう俺は時間差を使った。

俺はさっき――自暴自棄になっている時に投げた小石を利用した。

 まず、小石は『減速の壁』の中をゆっくりと動き続けていた、ポイントは止まっていないことだ。

そして、小石はいつかは減速の壁を抜ける。

壁を抜けたあとは、小石の速度を変えることが出来る――ウルドが銃弾を叩き落としたように。

俺が加速の力をウルド側に働かせたのはその為だ。

それに小石だからウルドからは良く見えない、それが良い条件になり俺の加速の力によって加速した小石でウルドに傷をつけることに成功した。


「さて、まだやるか?利き腕がやられたのは痛いだろ?」



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