第二十一話 『味方と犯人』
2月2日 13時52分
「ん……どこだ、ここ?」
見慣れない和室、いや見覚えはある……沙季さんの部屋だ。
あ、善本はどうなったんだろう。
あの様子だと多分……。
とりあえず体を起こす、誰かが部屋に入ってきた、
「あ、起きたんだ。」
……ん、沙季さんか?
微妙に声が高い気がするんだけど。
「お姉ちゃーん、桜庭くん起きたよー。」
「いま行くから、話してて!」
「はーい。」
ああ、美季さんだったか。
それにしても本当に似ているなー、最初に会ったとき何で化粧してたんだろう?
姉妹揃って美人なのに……。
「どうしたの?私の顔をジッーと見ちゃって。」
「い、いや、何でもないです。」
「あー、分かった。何で私がここで君と仲良くしてるか気になったでしょ?」
「……へ?」
確かに……俺は美季さんに対して銃を構えて、命を狙った。
なのに、何で彼女は俺に良くしてくれてるんだろう。
「あのね、桜庭くん。私はお姉ちゃんの味方なの。でも翔有とお姉ちゃんを比べると翔有の味方かな?だからお姉ちゃんが守りたい人は私も守りたいのね。まぁ、去年は家出ばっかしてお姉ちゃんに迷惑かけてたんだけどね。」
「守りたいか……情けないなぁ…。」
「何か言った?」
「あ、いや、何も。」
「そう?じゃあお姉ちゃん来るまでここにいてね。」
そんな事を言って、去っていく美季さん。
沙季さんより美季さんのほうが背が小さい気がする……多分。
「はぁ……女の人に守らなきゃって思わせてどうすんだよ……。」
こんな話、ウルドが聞いたら爆笑間違いなしだ。
沙季さんはウルドの件、まだ考えてるんだろうか?
当たり前か、まだ終わってないんだから。
「心くん、具合はどう?」
「あ、沙季さん……。はい、大丈夫です。」
「そう、なら良かった。お腹空いてない?」
「大丈夫です。」
「ふーん、大丈夫……か。」
「……。」
どうしよう……善本の事、聞こうかな?
でも、あのビル……撃ったのは多分、沙季さんだ。
沙季さんが撃ったとしたら理由が全く分からない。
「……心くん、聞きたいことあるんでしょ?」
「え?」
「そんな深刻な顔しないでよ。質問にはちゃんと答えるから。」
「そんな顔してましたか?」
「してたよ、何聞きたいの?」
そこまで言うなら、聞こう。
まずは確認から、それから徐々に核心に入っていこう……。
「じゃ、じゃあ1つだけ……よ、善本は沙季さんが?」
「そうよ。私が殺したわ。」
「……な、何でですか?」
「私の身を守るためよ。」
「身を……守る。」
嘘を言っているとは思えない。
俺が美季さん達を追っている間に一体何が……そういえば、連絡がとれなかったし……。
「沙季さん、一体何が起こったんですか?」
「言葉じゃ伝わらないわ。そうね、簡単に説明すると……。きゃっ!」
「ちょっ、大丈夫ですか?」
「う、うん。大丈夫。」
何が起こったんだ?
沙季さんが会話の途中で吹き飛んだ……ドアのとこに立ってた気もするけど。
「痛かったー、忘れてたわ。とりあえず、私は善本の能力を使えるようになったわ、そしてビルの屋上にウルドが来て……逃げたわ。」
「ウルドが来たんですか。」
「うん、命の危険を感じたわ。」
命の危険……ウルドは普段、話している相手にそんな殺気は出してないと思う。
やっぱり、ウルドが犯人なのか。
なら、目的は何なんだ。
2月2日 21時32分
あれから、沙季さんから詳しい話を聞いた。
ウルドが言ったこと、したことを聞いた。
状況は悪い、サバイバルゲームとか考えられないくらい悪い。
とりあえず、ホテルに帰ることになったことが俺からして最悪なのだ。
敵のもとに帰るようなものだ、ウルドは確実にホテルに居る。
「……俺、勝てるのか?いやー、無理だろう。」
その時、曲がり角から急に人が出てきた。
俺はかなりボーッと歩いたので避けることができず正面からぶつかってしまった。
「あ、すいません。大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。」
聞いたことのある声、浮かびあがるしばらく受けてない現代社会の授業。
まさか……!
「榊原、先生……。」
なかなか見つからなかった訳だ。
髪を染めている、この暗い夜に溶け込む黒からこの暗い夜に目立つ金に。
「……桜庭くん。こんなとこで何してるんですか?」
「いや、俺の事は良いんですよ。いやー、探しましたよ。今まで何してたんですか?」
「……。」
黙秘って……やましいことがなければ話せるじゃないか。
あの事件、ヴェルダンディーさんが殺された事件に先生は関わってないよな?
「せ、先生、ヴェルダンディーさんが亡くなりました。」
「知ってます。」
何で、知ってるんだよ。
先生の行方不明になったタイミングが事件のタイミングと一致することになるじゃないか。
「ど、どうやら、他殺らしいです。犯人に心当たりありますか?」
「……。」
おいおい、何だよまた黙秘かよ。
心当たりはありませんくらい言ってくれよ。
これってもう……犯人のテンプレートじゃないか。
もう、どうにでもなれ。
「先生は……殺してませんよね?」
その瞬間、俺の目の間に壁が現れた、釘の壁。
そして、俺の後ろに女の人。
「桜庭くん、無事か?」
「あ、あの……どちら様?それにこの釘の壁は……。」
「何言ってるんだ。良く見なさい。」
言われた通りにもう一度見てみる……あれ、壁じゃない!
大量の釘が俺の目の前にある見えない何かに刺さってるんだ。
刺さってるものが見えないから壁に見えるんだ。
「そうだ、その通りだ。桜庭くん、なかなか良い洞察力じゃないか。」
「もう一度お聞きしますが、どちら様ですか?」
「私はアレース。金成の元パートナーだ。喋り方が男っぽいと良く言われるが、見ての通り女だ。」
金成のパートナー!?
何で、俺の所にいるんだ?
それと、この釘はどっから飛んできたんだろう。
「桜庭くん、危ないからちょっとこっち来なさい。」
「は、はい!」
俺がアレースさんの後ろに行くと、釘の壁が崩れた。
見えない何かを消したらしい。
「さて……ウルド!さっさと出てきなさい!」
「やれやれ、アレースさんには敵わないなー。隠れてもすぐに見つかっちゃう。」
ウルド……さっき嫌と言うほどエピソードを聞かされた。
けど、目に映った姿は俺の記憶と少しばかり違った。
基本、ウルドは武器を持ってない。
沙季さんの時は拳銃を持っていたらしい、拳銃なら組織の人間らしい武器だ。
けれど、今のウルドは違った。
左手に組織の人間らしくない武器―、刀を持っていたのだった。




