第十四話 『秘密の兵器』
1月31日 9時56分
「金成がマンホールに着くまで、あと少しよ!」
沙季さんの報告を聞き少し安心した。
意外とイケるかもしれない……でも、上手く進み過ぎだ。
「心くん、次はジャンプ3連続!」
「はい!」
1、2、3回……よし見えた、マンホールだ!
後は、ゆっくりと金成をマンホールに近づかせるだけだ。
「お?お?おいおい、桜庭ぁ。もう諦めんのかよぉ!?」
「いや、違う。ふぅ……。」
まずは、深呼吸……そして手持ちを頭で確認。
弾は9発、金成とマンホールの距離は斜め右前に5mほど。
この場合、1番良い選択は……。
「おっと、桜庭ぁ!撃てるのか?」
「心くん、連続だと失敗するわ。様子を見ながら2発よ。」
「了解。」
金成の肩に向かって1発……あれ?
銃口から出た弾は意外な動きをする。
しまった、弾が遅くなっている!
アイツの能力は人間だけに影響するんじゃないのか。
でも沙季さんの指示は2発、もう一度引き金を引く。
や、やっぱり遅くなるか……。
「どうした、こんな弾は余裕だ。桜庭ぁ?なめてんのかぁぁ!?」
「左に避けて!その後、すぐに金成の左肩に連続で二発よ。」
「……っ!」
危なかった、あのボールもっと速くなってる!
そんなことより沙季さんの指示通り撃たなきゃ!
2回連続で引き金を引く……銃弾は意外な動きを見せていた。
「くっ……桜庭、てめぇ!」
次の瞬間には俺の弾は金成の肩を撃ち抜いていた。
何となく分かったが、金成の能力は物体の速さを操るようだ。
金成の能力でボールが速くなったなら、俺の銃弾も速くなる。
2発の内の1発はまだ俺の視界でゆっくりと動いてる……が、すぐに視界から消えた。
能力の効力が切れたのだ、誘導するなら今しかない。
「心くん、金成の左肩に向かって様子を見ながら4発撃って。」
「了解。」
1発ずつ確実に狙って撃って避けさせる、そして徐々にマンホールへ近づかせる。
「桜庭ぁ!お前は、負傷してるやつに1発も当てられないのかよぉ!?……うおっと!」
「終わりだ。」
「はぁ?何言ってんだっ……」
金成がマンホールに立った瞬間に爆音が金成の声をかきけした。
秘密兵器……いわゆる爆弾だ。
沙季さんの話を引用すると、C4と呼ばれるプラスチック爆弾らしい。
3.5kgの火薬を用意すれば、厚さが20cmの鉄を粉砕できるらしい。
インターネットで調べた結果この地域のマンホールは大体1.5cmの厚さであると分かった。
ということで、沙季さんは300gの火薬のプラスチック爆弾を使った。
その量であれば、マンホールの裏側から金成の足を負傷させられる。
「金成、俺の勝ちだ。」
「……うぅ……なるほどな……。」
銃口を金成に向ける。
手が震える、目の前にいる人には下半身が無い。
なにより人の命を奪うということが怖い。
「な……んだよ……怖じけづいたのか?人の……命の重さ……を知れ……まぁ……俺に……言える……こと……じゃない……けどな……。俺の分まで……生きてみろ……よ。撃てよ……。」
「分かった、じゃあな。」
目を瞑り、人差し指に軽く力を入れた。
乾いた銃声が通りに響く。
反響した音が聞こえなくなるタイミングで、背を向けて歩き出す。
人の分まで生きる人生ってどんなもの何だろう。
「沙季さん、終わりましたよ。」
「そう、一旦私の家に戻りましょう。」
命の重さ……か。
何かを選択するのは何かを捨てるのと同じだ、と誰かが言っていた。
それは自分の命を選んで他人を切り捨てることと同じだろうか?
俺には分からない、きっとこの先も。
1月31日 11時23分
この展望台に来るのに階段を使う人が何人居ただろうか。
トランシーバーを手で弄りながら今度は階段を下っていく。
「心くん、気にしてるかしら。」
彼は意外と弱い心の持ち主だ。
サバイバルってゲームみたいだけど、実際は殺し合いだ。
高校生が耐えられるような物ではない。
彼の両親の場所が分からない以上、保護者は手を組んでいる私だと思っていなければならない。
「……はい、順調ですよ。」
階段の下から声がした。
反射で姿を隠してしまう、もちろん聞き耳も立てる。
「そう、それは良かった。彼が殺されるようなことはあってはなりません。」
「分かってます、そしたら僕が一番危ないですからね。」
「ここは、私たちの過去と同じではないことを忘れないように……。」
「はい、ではまた。」
最後の男の声で人の気配が消えた、サバイバル関係者だと思うけど。
彼……一体誰の事だろう?
心くんの事か?
「沙季さん、何処ですか?」
「5分くらいで下に着くわ。心くんは?」
「あと少しで階段の下に着きます。」
「そう、待っててねー。」
「あ、沙季さん!」
「ん?どうしたの?」
「自分の命を守るために他人を切り捨てた時、どうすればその罪を償えますか?」
「……うーん、罪かどうか分からないけど。その切り捨てた他人の事を忘れないで誠実に生きることね。でもね、本当は切り捨てることなんか人間には出来ないのよ。切り捨てたように見えるだけ。」
「……そうですか。ありがとうございます。」
……はぁ。
やっぱり難しいかな、心くんも高校生とは言うものの子どもだもんね。
人の死って辛いよね、殺めたのが自分なら何よりも辛い。
「心くん、君は悪くないんだよ。全部を背負わなくていいからね。」
なーんて、1人で呟いても意味ないか。




