第十三話 『姉妹と予知』
1月31日 8時15分
「うーん……朝か。」
いつもの和室、ゲームが始まってからも変わらない部屋。
「お姉ちゃん起きないの?先食べてるからね。」
「うん、すぐ行くから。」
妹の態度も変わらない、いつもの家の中での態度。
今日の予定も無いからカフェでのんびり……いや、心くんが家に来る。
のんびりしてられない、朝ごはんは何だろう?
とりあえず、部屋着から着替えてリビングへ。
「今日の朝ごはん何?」
「トーストだよ。はい、お姉ちゃんいつものジャム。」
「ん、ありがと。」
私のお気に入り、ブルーベリージャム(蜂蜜入り)だ。
うん、美味しい。
「じゃあ出掛けるね!」
「ん、行ってらっしゃい。」
満足している私を一瞥して妹は部屋から出ていく。
すると、同じ扉からお母さんが出てきた。
「あら、沙季。美季は、もう出掛けたの?」
「うん、出掛けたよ。……ごちそうさま。」
「美季も沙季も、最近出掛けてばっかりね。」
「最近、忙しいんだよ。あっ、今日は家にお客さん来るから。」
「はいはい。何時に?」
そう聞かれて、時計を見る。
8時45分、そろそろ来る頃だ……どうしようかな。
「多分、そろそろよ。」
1月31日 8時30分
聖条院宅に向かって、歩みを進めていると目の前に大きな和式の家が見えてきた。
「まさか……あれか?」
沙季さんが描いてくれた地図には、住宅街のど真ん中に大きな大きな聖条院宅がある。
大きさは他の家を横に12個、縦に10個くらいだろうか?
「ちょっと君!桜庭って名前だよね?」
聖条院宅が目の前に来た辺りで、声かけられた。
沙季さんかと思ったけど違った、髪が短い。
茶髪で薄化粧な辺り、聖条院美季とも少し違う。
「はい、そうですが。どちら様でしょうか?」
「君は、サバイバルの相手の顔も覚えられないの?」
「へ?」
「聖条院美季よ。覚えてないの?」
「えっと……え!?」
「サイテー……あー、そっか。あの時は金髪で化粧してたっけ。ゴメンゴメン、普段はこんな感じーOK?」
「は、はい。」
「感想は?」
「感想!?」
「感想の1つや2つ言えないと嫌われるよ?」
「き、綺麗ですね……。」
「……うん、まあいっか。私に用って訳じゃ無さそうね。」
「はい、沙季さんに用があって。」
「ふーん、せいぜい頑張ってー。あ、お姉ちゃんに会ったら一言褒めないと嫌われるよ。じゃあまたね、桜庭くん。」
「え?……また。」
最後のセリフふざけてるんだろうか?本気で言ってるのだろうか?
それより何でだろう、美季さんからは敵意を感じなかった。
このサバイバルゲームで殺しをやってる人って少ないかもしれない。
善本、小早川、金成……この3人だけかもしれない。
「おっと、早く行かないと。」
門……広いな、インターホンあるのか?
インターホンを探していると、不意に門が開いた。
「心くん、まるで不審者よ。」
「……おはようございます。き、今日も綺麗ですね。」
「アイツ……はぁ。美季になんか言われたんでしょ?」
「はい、そうなんです。」
「まぁいいや。とりあえず中に入って……」
「お邪魔します。」
門をくぐると最初に和風の庭園があり、その奥に大きな家があった。
扉をあけて、廊下を2分ほど歩くと沙季さんの部屋らしい。
「失礼します。」
「どうぞー。」
中には特に座る場所がない。
沙季さんも床に座ってるし……しょうがない、俺も床に座ろう。
「今日の予定、ちゃんと分かってる?」
「はい。」
「じゃあ、これ。」
沙季さんからスタンガンとトランシーバーそれと沙季さん曰く秘密兵器、を受け取る。
秘密兵器は最初にマンホールに取り付けろと沙季さんが言っていた。
そして、そのマンホールまで金成を誘導するのが俺の役目だ。
「作戦開始まで時間あるけど、作戦場所にそれぞれ移動しましょう。それと心くん、あなたの個人情報を言える限り教えなさい。」
1月31日 9時18分
別行動で、目的地に向かっているので話し相手がいない……暇だ。
トランシーバーを使ってみよう。
「沙季さん。世間話しませんか?」
「私も暇だったところよ。階段を使って展望台まで行くのは初めてよ……。」
「そうですよね、普段はエレベーターを使いますからね。ところで妹さんとはどれくらい歳が離れてるんですか?」
「ああ、私達双子なんだよ。心くんナイフ持った灰色のパーカーの人が来るから、準備して。」
「……。」
灰色のパーカー……いた。
スタンガンを手に持って、相手がナイフを出すのを待つ。
「……いまよ!」
沙季さんの声と同時に鈍い光を放つ刃物が視界に入った。
「よっと……。」
「うぐっ!?」
首筋にスタンガンを当てると崩れ落ちる。
なるほど、未来を予知してくれるなら簡単だ。
「双子だったんですか。」
「そうよ、あんまり似てないでしょ?」
「はい……いや、二人とも気さくな感じは似てますよ。」
「私の事を気さくって言ったのは心くんが初めてよ。……着いたわ。」
「俺も着きました、見えますか?」
「うん、見える。心くん、そろそろ来るよ。」
「了解。予知、任せました。」
金成が進行方向から歩いてくる。
金成が俺を見つけたらしい……ん!?
「桜庭ぁ!久々だな!」
「心くん、早く逃げなさい。」
「は、早く歩けないんですよ。」
夢の中でなかなか前に進めないときと同じ感覚だ。
アイツの能力がこれか……?
「おいおい、挨拶なしで逃げるのは無いんじゃないか?」
「心くんジャンプ!」
「うおぉ……。」
硬球ボールが、俺の爪先ギリギリを通った。
アスファルトの地面が凹む。
沙季さんの指示がないと、足をやられていた。
「あれを避けるか!焦ってるわりになかなかやるじゃないか。」
「ちっ……あれ?治った!」
アイツの能力は時間制限があるのか!
なら、使える範囲の限定もあるはずだ。
「心くん、次は右に避けて。」
「桜庭ぁぁぁ!」
「うわぁ!」
跳ばないと、間に合わない速さだ。
前回は野次馬がいたが、今回は通行人はもう別の場所に避難しているようだった。
この通りにいるのは、俺と金成の2人だけだ。
秘密兵器付きのマンホールに向かって走る。
「心くん、左右ジャンプ!」
「左!右ぃジャンプっ!」
俺が避けるのに比例して通りの建物が崩壊していく。
もう、警察沙汰決定だ……。
「ちょこまかと逃げるな!桜庭ぁぁ!」
「そういえば、何で俺がお前を狙う前に俺がお前に狙われてんだよ!?」
「俺は、お前の能力が欲しいんだよ、桜庭ぁ!」
俺の能力?
誰から聞いたんだよ、そんなこと。
小早川か?善本か?それとも沙季さんか?
あー、考え事は後にしよう、今は沙季さんの指示に集中しないとマズイ!
アイツ、間を空けずに投げてきやがる、気を抜いたら終わりだ。
「金成がマンホールに着くまで、あと少しよ!」




