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第33話 ナンバー交換してパーティ登録!

 なんだかんだ、本人が一番バレそうな事しでかしてる気がしてきた……。

 まぁ、バルザックさんの言うとおり、ランクSに近いレナードなら、そこら辺の盗賊なんて屁とも思わないんだろうけど。


「あはは……。確かに異空庫ストレージがなけりゃ、今程料理に凝ってなかったかもね? 手荷物だけならよっぽど持ち物厳選しなきゃならないし。

 ……包丁と言えば、今度モルブさんに作って貰えないか聞いてみようかな」

「包丁?」

「うん。今使ってるのがかなり古くなってきててさ……」


 と言いつつ、その手に出してきたのは随分と細くなっている包丁。


「研いでる内にこんなになっちゃって」

「なんか包丁って言うより、まるで武器みたいだな?」


 僕はちらっと盛り上がっている女性陣の様子を窺ってから、こう切り出した。


「―――今の内にモルブさんのお店、二人で行って来たら?

 前みたいに時間掛かるんだったら、戻ってこられると思うけど。

 もし早く終わりそうなら、タグメールで知らせるから」

「なんだ、坊主は一緒に行かねぇのか?」

「僕はもう、武器は買って貰ったし……誰か残ってないとミルカがうるさいだろうし」

 

 それに、ニーナさんも言ってたけど、モルブさんに気に入られてるのはレナードだしね。


「まぁ、確かにこっちの用事の方が早く終わるだろうけど……。

 ホントに良いのか? ディート」

「もし新しくて良い包丁が手に入るなら、ミルカやクリスさんも喜ぶだろうからね。

 それに、前回の借りも返せるし……」


 倒れた挙げ句に負ぶって貰ったなんて、ああ、もう恥ずかしい……;


「借り? 借りって……ああ、()()ね。分かったよ。

 じゃあ、ここはディートに任せて、行こうか? バルザックさん」

「おお、なんか悪ぃな、坊主。ちょっくら、兄さん借りてくぜ?

 ―――っと、それから、二人とも俺の事は”ザック”で良いぞ。

 これからパーティ組むんだし、あんまり他人行儀なのも、な?」


 と、バルザックさんがニヤッと笑う。


「うん、バル……じゃないや、ザック、さん?」

「うーん、やっぱり急には無理か?」

「はは、まぁ、()()()()だね。

 一応早めに戻るつもりだけど、何かあったらタグメールでね、ディート」

「分かってるって。行ってらっしゃい」


 二人を見送って視線を戻すと、変わらず盛り上がっている女性陣。

 はぁ、ホント、視界にも入ってないんだね……僕達;




           ***      ***



 どれくらい経ったんだろ? あんまり暇すぎて居眠ってたかも……。

 と、思ったらミルカが僕の前に立った。


「……ねぇ、兄さん。レナとバルザックさんは?」


 ミルカが二人を探してるのか、キョロキョロしてる。


「モルブさんのお店に行ったんだ。そっちはもう終わったのか?」

「そっか。えっと、まだだけど、ニーナさんが休憩しようって。

 前に兄さんが倒れたの、気にしてくれたみたい。

 で、兄さん達も一緒にお茶しようって呼びに来たの」


 う゛……ニーナさんにまで気を遣わせちゃったのか;


「レナ達居ないんなら仕方ないか。行こう、兄さん。

 なんかね、ニーナさん、おやつまで用意してくれたみたいなんだよ♪」


 ミルカに手を引かれて、大きなテーブルのある部屋に案内される。


「連れてきました~。

 レナとバルザックさんは、二人でモルブさんのお店に行ったんだって」


 ミルカの報告に、セリエさんの表情にまた険が差す。


「―――ザックったら、また抜け駆けしたのね……。

 昔からそういうトコだけは要領良いんだから!」

「まぁまぁ、セリエさん。お茶にしましょう? 今日のスイーツは自信作なのよ!」


 そう言ってニーナさんが出してきたのは……コロンとした黒っぽい一口大、よりは少し大きめの玉?


「これニーナさんが作ったの?! すっごーーーーい!!

 お菓子まで作っちゃうんだ!」

「初めて見る~……どんな味なんだろ?」


 ミルカとクリスさんがそのお菓子を、しげしげと見つめている。


「昔コシローちゃんから聞いた、故郷のお菓子を再現してみた物なの。

 それから、これに合うのは緑茶……。

 この緑茶は取り寄せたんだけど、すっきりした味よね。

 ―――どうぞ、召し上がれ♪」


 カラフルなピックが刺してあるのを、みんなで1つずつ手に取ってほぼ同時にパクリ。

 柔らかくて優しい甘みの外側と、弾力のある内側の二層になってる? 感じ。

 内側はほんのり塩味で、外側の甘みがより引き立って美味しい。しかも、割と食べ応えあるなぁ……。

 このお茶、リョクチャって言ってたっけ?

 飲み物で、緑色で透き通ってるのは初めて見るかも。

 へぇ、さっぱりしてて、確かにこのお菓子に合ってる気がする。


「美味しい~♪ これ好き~!」

「あ、中は白いんだ」

「小さいのに、結構お腹に貯まりそうね」


 上からミルカ、クリスさん、セリエさん。

 そこへ””リンゴーン♪”と音がした。


「あら、タイミング良くお戻りのようね?」

「僕が呼んでくるよ」

「まぁ、ありがとう。お願いね」


 戻ってドアを開けると、レナードとバ……じゃない、ザックさんが立っていた。


「ただいま~。―――あれ? もう終わったの?」

「ううん。いま休憩中。ニーナさんが気を遣ってくれたみたいで、お茶してるんだ。

 お手製のお菓子まで作ってくれてさ……二人も行こう」

「へぇ~、楽しみだなぁ♪」


 二人が入ってきた、んだけど……そう言えばまだ、ザックさんが一言も喋ってない?


「―――ザックさん?」


 レナードの影に隠れてたその顔を見て、ぎょっとした。

 ザックさんの顔は、『もう嬉しくてたまらなくて、笑い出したいのを必死で我慢してます』としか表現出来ない表情をしていて。僕が名前を呼んだのも、上の空で聞こえてなさそうだ。


「れ、レナード……ザックさん、どうしたの?」

「あー……そのな、モルブさんトコでかなり良い得物が見つかってさ。

 しかも”お友達価格”で購入出来て、ホックホクって感じ?」

「うわぁ……またセリエさんが怒りそうな話;

 とにかく、みんなの所へ行こう」

「どんなお菓子かな~♪」


 レナードは料理好きだけあってお菓子に興味津々、一方ザックさんはずーーーーっと上の空状態っていう二人を連れて行く。


「あ、来た来た! も~、遅いよレナ!」

「ただいま~。ごめんね、途中席外しちゃって;

 って、おお?! あ、()()()だ!!! 懐かしー!!」


 レナードが一目見るなりテーブルに駆け寄って、妙にキラキラした目でお菓子を見つめてる。


「あら、レナードさんこのお菓子ご存知なの?」

「オレ、故郷が東方に近かったから、小豆餡(あずきあん)を使ったお菓子もたまに食べてたんだよね。

 ほんっと懐かしいなぁ。こっちの方じゃ小豆の入手もまだまだ難しいのに……。

 ニーナさん、食べて良い?」

「ええ、是非感想を聞かせて頂戴ね」

「勿論!」


 言うが早いか、パクリと一口で頬張ってモグモグ、しっかり味わってゴックン。


「あんこ玉かと思ったら、おはぎ? ぼた餅? なんだね?!

 もち米は”はんごろし”で粒感残ってる方。餡も甘すぎないし、とても美味しいよ」

「は、”半殺し”?!」


 なんだか物騒な言葉が出て来て、思わず聞き直す。


「そうそう。内側はもち米をついて作るんだけど、ある地方では半分程だけついて米の粒感が残ってるのを”はんごろし”、完全に潰したのを”みなごろし”って呼んだりするんだ。面白いよね~。

 あ、お茶も緑茶なんだ! こっちじゃ緑茶だって珍しいのに。

 ニーナさん、よく揃えましたね?」


 レナードってホント、豆知識みたいなのよく知ってるよなぁ。あちこち行ってるからなのかなぁ?


「フフ、その昔、コシローちゃんに聞いたのを、頑張って再現してみたのよ。

 どうかしら? 合ってたかしら?」

「ええ、もう完全一致ですよ。聞いただけでこれだけ出来ちゃうんですね。凄いなぁ。

 えっと、もう一つ頂いて良いですか?」

「そう言って貰えると嬉しい限りね♪ 構いませんよ、どうぞ召し上がれ」


 という二人のやり取りの後ろでは、ザックさんがセリエさんに説教されている……。


「ねぇ、レナもこのお菓子作れるの?! また食べたい!」

「こっちでも、もっと楽に小豆やもち米が手に入れば、オレも好きだし作りたいけど……。

 うーん、緑茶だけなら製法の違いだから出来なくもない、かなぁ」

「え、そうなの?! このお茶、東方から来る商隊に頼んで取り寄せたんだけど?」

「そうだったんですか。まぁ、この辺じゃ緑茶を飲む習慣ってないですからね。

 大陸だと、紅茶が一般的だけど……実は元になる茶葉の木って同じなんですよ」

「え、これが、紅茶と同じ葉っぱから出来るの?」

「うん。お茶の葉を乾燥して、その後発酵させたりしてお茶っ葉にするんだけど、発酵の度合いによって味や風味が変化するから、色んな銘柄になるんだよ。

 で、緑茶っていうのは発酵させないで作るんだ。他にも発酵弱めで黄茶や白茶、半発酵でウーロン茶、完全発酵で紅茶って分類されるかな? 他にもジャスミンとかの花で香り付けした花茶なんてのもあるし」

「花茶かぁ……なんか美味しそう~♪」


 食いしん坊なミルカはもう想像の花茶に意識が行ってる;


「それにね、緑茶って一口に言っても結構奥が深いんだよ?

 お茶の木に覆いを被せたり、摘んだ茶葉を蒸したり、ったり、煮たりといった製法の違いで細かく分類されるんだ。最高級とされる”玉露ギョクロ”なんて、ホント旨いからね。

 あと、このお茶は透き通ってるけど、完全に不透明になる”抹茶”って言う種類もあって、そのお茶をたしなむ『茶道』なんてのもあるんだよ」

「レナードさん、お詳しいわね。良ければもっと詳細にご教授頂きたい所だけど、今日は先に頼まれたお仕事をしないといけないわね」


 残念そうに零すニーナさん。


「あはは、オレの知識で良ければいつでも話しますよ。

 あ、そうだ。今ならみんなが居るから丁度良いかな? みんな、タグメール交換しない?」


 言いつつ、レナードが冒険者認識票(タグ)を出してくる。


「そうね、パーティ組むんだから色々便利だし、交換しましょう!」


 いつの間にかこっちの輪に戻っていたセリエさんが明るく答える。

 後ろには何故かザックさんがうずくまってる……。

 まだ知らないミルカとクリスさんに、僕の時のようにレナードが説明していたら、ニーナさんがその手に冒険者認識票(タグ)を持って差し出していて。


「それ、ワタシも交換仲間に入れて貰えないかしら?」


「ニーナさん、まだ冒険者認識票(タグ)お持ちだったんですね?!」


 ギルド職員でもあるセリエさんが驚いている。


「え、ええ。特に有効期限がある訳でなし、師匠も記念に持ち続けているから……もしかして、いけなかったかしら?」

「ああ、いえ……全然構いません! むしろ、お力を貸して頂きたい場合に連絡手段があるなら、こちらとしても大助かりです」

「そう言って貰えると安心だわ。そうね……アンディとレイちゃんも持ってるから、交換出来るならしておいても良いかもしれないわよ?」

「ええ?! なんて嬉し……い、いえ、ご本人達にお伺いしてみます。

 じゃ、じゃあ、交換しましょう。ちょっとザック! いつまで座り込んでるのよ?!」


 本音やや漏れのセリエさんが蹲ってるザックさんの頭を軽くはたいて、促す。


「へいへい……お前、俺にだけ当たりが超絶強すぎねぇか?」


 ザックさんも戻って、全員でナンバー交換。ピロロロロロロロン♪と音がした。試しに画面を開いてみると、ここに居る全員の名前が確認出来た。


「じゃあ次はパーティ登録しようか。パーティ登録するには、個人を登録した状態で、再度登録すれば良い、んだけど……輪を描くように並べなきゃならないんだ。

 ミルカ、もうちょっと寄せて? そうそう、こんな感じ」


 またピロロロロロロン♪と音がした。登録者一覧の横にパーティ登録の欄が増えていて、『パーティ名:未登録_01』の下にみんなの名前が並んでいる。


「タグメールの練習するなら付き合うけど、1回送るごとにMP1取られるから気を付けてね。

 オレからはこれくらいかな? じゃあ、引き続きクリスさんをお願いします」

「ええ、責任を持ってコーディネートさせて貰うわ♪」


 と女性陣が店の方へ行ってしまうと、ザックさんが済まなさそうに切り出す。


「あ~、悪ぃ。俺は入院中のメンバーの見舞いに行ってやらねぇと」

「そうか、じゃあまた連絡するよ」

「おう、待ってるからな。またな、坊主」

「うんまたね、ザックさん!」

の~んびり、ま~ったり。全然進まん;

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