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第27話 ”じーちゃん”登場

相変わらずのんびりしております……。

 翌朝。いつもの時間に目を覚ますと、レナードは居なかった。ベッドも使った様子がなくて、また女性の部屋にでも行ってるのかと思って、ミルカを起こして身支度して下に下りた。

 すると、いつものテーブルに突っ伏してる見慣れた赤い頭を発見。


「レナ、起きてる?」


 ミルカが声を掛けるともの凄く眠そうな声で返事する。


「……おはよう、ございません; 眠い……」


 突っ伏したままなんて、どんだけなんだよ。


「もしかして、やっぱり徹夜したの?」

「……徹夜、に近いかも。なんでアンドレイさん、あんなに元気なんだ……」


 漸く首だけ上げて見せた顔は、酷く疲れた感じ。またうっすらと隈もある。


「―――って、もう朝か。いつまでもこうしてられないな……。

 取り敢えず顔洗ってくるよ。先に座ってて」


 渋々といった様子で立ち上がると、欠伸を噛み殺しながら階段を上がっていく。入れ替わりに僕達が座ると、ケイトさんがやって来た。


「本当にごめんなさいね;

 父さんったら、レナードさんをかなり遅くまで引き留めちゃったみたい……。

 自分より技能スキルが上の人、なかなか居ないから話が楽しいらしくて。

 それにレナードさんって色んな料理法とかを知ってるから、すっごく勉強になるんですって」


 口調は確かに呆れた様に話しているが、そんな父親が嫌いではない……むしろ好きなんだろうなぁって思える。


「大丈夫と思うよ? ああ見えてレナ、かなりタフだし。下りてきたら結構シャキッとしてるんじゃないかなぁ?」


 ああ見えてってどういう意味だろう? 相変わらずミルカは変な言い方するなぁ。

 ”細めの優男”って意味なんだろうか。

 確かに外見はそうだけど、ランクA冒険者なんだしそりゃタフだよな。


 ―――でもそうなると、13才で冒険者になって20才位まででランクAになったって事だよな……。僕達と旅するようになってからは、それほど依頼クエストを受けてた様子もないし、父さんが死んでからは、ずっと僕達と一緒で今回受けていた依頼クエストが久々だった筈。

 7年でランクA……早い、のかな?

 セリエさんやバルザックさんはどれくらいでランクAになったんだろう?


「兄さん、朝ご飯何食べる~?」


 考え事をしていた僕に、呑気なミルカの声が掛かる。


「……うーん、何が良いかな? レナードの考えたやつにしようか」

「いいね! じゃあ、わたしも一緒のにしよっと♪ あといつもの果実水で!」

「僕はホットミルク。レナードのも頼んどくか?」

「そうだね~……あ、下りてきた。レナ~、朝ご飯いつもので良い~?」


 階段の途中でこちらに気付いたレナードがうんうんと頷き返し、グッと親指を立てる。


「じゃあ、レナもいつものでお願いします、ケイトさん」

「はい、かしこまりました! すぐにお持ちしますね」


 アンドレイさんの朝ご飯を堪能し、早速ギルドへ出掛ける事にした。

 なんだかんだ言って、やっぱり早く自分の冒険者認識票(タグ)を持ちたいもんね。


「オレもついでに依頼クエストの納品しなきゃな……。

 いつまでも持ってる訳にもいかないし、報酬も貰わなきゃいけないし」

「あ、そっか。レナ”じょうせつくえすと”っていうのを受けてたんだっけ?」

「そうそう。採取依頼(クエスト)と討伐依頼(クエスト)な。

 ホントは早々に達成はしてたんだけど、転職したし、新しい武器も試したいし……で、納品後回しにしてたんだよね; まぁ、期限がないから出来た事だけど」

「講習で習ったよ。期限を過ぎた場合や、失敗した場合、罰金やペナルティが科せられる場合があるって」


 と言うと、レナードは頷く。


「一応、身の丈に合わない依頼クエストを受けないようにさせるって意味合いもあるんだけど、下手するとランクの降格なんて重いベナルティもあるからね」

「え、でも、受けられる依頼クエストって一つ上のランクの物までって決まってるんだよね?」

「それはランクBまでの単一ランクパーティーの話。

 混合ランクのパーティは最下位ランクのメンバー準拠の一つ上までだし、単身ソロの場合は同ランクより一つ下以下しか受けられない。下手に死なれちゃ困るからさ。

 実績が充分あれば、多少は考慮されるかも知れないかもだけど。

 ―――まぁ、単身ソロで活動する冒険者ってのはかなり少ないんだ。

 一人だけだと色々と大変だからね」


 なんて話をしてると、ギルドに着いた。

 あー、何か、緊張してきた;


「えーと、冒険者認識票(タグ)の窓口は、と。二人とも、こっちだよ」


 呼ばれていくと、そこには見慣れた姿が……。


「あ! ミルカちゃん、ディート君!」


 クリスさんが満面の笑顔でブンブン手を振っている。横には階級高そうな神官服を着た、白い髭が印象的なお爺さん? が一緒だ。なんで”?”が付いてるかというと、フツーの神官さんに比べて体格が良すぎるんだ。背筋もピンとしてるし、確かに髭も髪も白いけど、日に焼けた肌の艶がとっても若々しいから。


「おはよー! クリスさんも冒険者認識票(タグ)貰いにきたの?」

「うん! もう楽しみで楽しみで仕方なくって、じーちゃんに無理言って朝一に付き添いして貰ったの。

 こう見えてじーちゃんって、この街のルキア神殿の一番偉い人なんだよ~」


 さらっと重要な事を話しているクリスさんを、やや呆れた顔でいさめる。


「これこれ、クリス……; お二人がミルカさんとディート君なのですな。

 お初にお目に掛かります。私はルキア教シュミットガルト分教区で責任者を務めておりますジュリアン・バルビュスと申します。

 昨晩そちらのレナードさんとはお話しさせて頂きましたが……些かうっかり物でまだまだ頼りないのですが、どうぞクリスを宜しくお願いいたします」


 そして、深々と頭を下げられる。

 え、いや、えっと、この人、この街の神殿の一番偉い人なんでしょ?!

 なんで僕達みたいな新米ルーキー冒険者にこんなに丁寧なんだろう?!


「わぁぁ、あ、頭を上げて下さい! こ、こちらこそ、よろしくお願いします!」


 ミルカも慌てて頭を下げている横で、レナードがやれやれとでも言うようにため息を付いている。


「もー、ジュリアン司教、普通に喋って下さいよ;

 二人ともすっかり恐縮しちゃってるじゃないですか~」


 なんて彼がフツーに声を掛けると、お爺さんの雰囲気が一変した。

 口をへの字に曲げて、まるで拗ねた子供みたいだ。


「なんじゃ、初対面なのだから、キチンとしておこうと思っただけなのだがなぁ。

 早々にネタばらしされてしまったわ。つまらんのぅ。

 ―――スマンかったのぅ、チビ達。お主らも、是非気軽に”じーちゃん”と呼んでくれまいか?」


 お茶目そうに笑うその表情は、何となくクリスさんと似てる気がする。クリスさんの性格はこのじーちゃん譲りなのかも?


「講習初日から、戻ったら講習内容そっちのけでお主らの話ばかりするものじゃから、逢えるのを楽しみにしておったのだが……まさかこんな早くにまみえるとは、これはルキア様のお導きに違いないのぅ」


 長い髭を触りながら話す司教さんを、クリスさんがポカポカ叩いて照れて? いる。


「もう、じーちゃんったら! 恥ずかしい事言わないでっていつも言ってるのにっ;」

「いやいや、本当の事しか言っとらんぞ?! 毎日二人の事と、料理が上手な保護者さんに逢いたいし、ご飯食べてみた~いと言う話しかしとらんかったじゃないか?」

「うわあああああッ! じーちゃん、もう喋るなぁぁぁぁ!!!」


 アレ、分かってて言ってるよね、司教さんw


「ジュリアン司教って若い頃冒険者やってたんだってさ。それもランクSだって」


 コソッとレナードが教えてくれた。


「え、S?! ホントに?!」

「うん。記念にまだ持ってる冒険者認識票(タグ)見せて貰ったから本当だよ。

 正にレジェンドだよね~。今じゃ愉快なじーちゃんだけどさw」


 こそこそ話してると、窓口の職員さんが「お待たせしました、どうぞ!」と差し出したトレーの上には真新しい冒険者認識票(タグ)。クリスさんの顔がぱあっと明るくなる。


「わぁ、これがボクの冒険者認識票(タグ)……!!」

「良かったのう。ほれ、掛けてあげよ……」


 そこは素直にじーちゃんに渡して掛けて貰うのかと思いきや、くるっとこちらを向いて一言。


「見てみて! これで冒険に行けるね!!」


 と言いながら自分で首に掛けてしまった。手を差し出したままじーちゃんは固まり、クリスさんは気付かずニッコニコ、という状況に……。僕達は思わず苦笑いだ。


「さ、二人も早く!」


 と窓口を開けてくれる。

 はは、何か今ので緊張してたのもどこかへ行っちゃったな。


「そうだな、ディート、ミルカ。お前達も冒険者認識票(タグ)を貰ったら、晴れて冒険者デビューだぞ」

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