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第11話 オススメの魔法屋

「そっか……暗殺者アサシン職種王ジョブマスター取得する間に、能力値ステータスとか技能スキルとか上げれば良いんだもんな。

 ―――忍者ニンジャ目指せば?!」

「気軽に言ってくれるけど、そんな簡単じゃ無いんだぞ~;」


 と、苦笑するレナード。しかし顎髭を撫でながらモルブさんがとんでもない事を言い出した。


「ワシは、兄さんならなれると思うぞぃ?

 その時にゃ、祝いにこの刀をくれてやろう」


「「「―――えッ?!」」」


 思いもしないその言葉に、つい3人で聞き返してしまった。


「い、いいの? 大事な刀……なんだよね?」


 思わず、といった感じでミルカが聞くけれど。


「大事と言えば大事じゃが、もっと良い刀を打って超えたいのも本心なんじゃよ。

 その刀の出来はしっかりと記憶しておるのでな。手元に無くても構わんのじゃ。

 むしろ、有効活用出来るヤツが居るんなら、そやつに使うてもろぅた方が刀も本望じゃろう?」


 作り出した物がただ飾られているよりも、誰かに使われた方が良い。

 根っからの職人ってこんな人なのかも知れない、と思った。


「も、持ってみても良い?」


 レナードが刀を指差してお伺いを立てる。


「構わんぞい?」


 お許しが出たのでレナードは恐る恐る刀を手に取る。磨き上げられた刀身に顔が映る。その時、映った彼の右目にモヤが掛かった。

 あれ、何だろう? 刀が曇ってるのかな? と思って刀身からレナードに視線を移す。


「―――……?」


 その右目に青いモヤの様な物―――は無かった。

 やたら真剣な顔をしたレナードが、刀を見つめている。


「―――ふぅ。怖いね、この刀。今はまだ、全く扱える気がしないよ」


 軽く首を振って、大きなため息を付く。


「はぁ~~、さっさと暗殺者アサシンに転職して、精進しますか」

「お、目指すんだ、忍者ニンジャ!」

「その代わり、いつなれるかは神のみぞ知る、ってヤツだけどさ;」


 緊張の糸が切れたかの様に情けない表情になったレナードが、(うやうや)しく刀を戻す。


「もう一回転職条件を細かい所まで確認しなきゃな……。

 まぁ、これは二人が新人講習中にでもやればいいか。

 ―――じゃあ、モルブさん、約束忘れないでくれよ?」

「男に二言は無いわい。でもまぁ、意外と早いかものぅ?」

「プレッシャー掛けてくるなぁ; 早くねーから、マジで!」


 一声吠えてから、大人しくしているミルカに声を掛ける。


「……さぁ、ミルカお待たせ。魔法屋に行こう」

「んふふ、やっとわたしの番~。めっちゃ楽しみ♪

 あ、モルブさん、お店教えてくれてありがとう!」

「構わん構わん。じゃあ、またの?」

「ええ、また来ます!」




     ***   ***



「うーん、どうやらレイチェルさんが教えてくれた店と、モルブさんの言ってた店、同じ所みたいだな……」


 モルブさんの工房兼お店から歩く道すがら、レナードが言い出した。


「そうなの? 魔法屋って数少ないの?」

「普通、魔法屋ってのは魔法の呪文の巻物スクロールしか置いてないもんなんだ。

 でも、二人の話からして杖も防具……っていうか服も置いてるって言うんだよ。

 特に、レイチェルさんが、ここに行けばミルカが必要な物は全部揃うって断言してたんだよな~。

 有難いと思うけど……なーんか引っかかる事言ってたんだよ」

「引っかかる事?」

「『お兄さんイケメンだから、絶対サービスしてくれるわよ♪』って」

「―――それの何処が引っかかるのさ?」

「いや、言葉は普通なんだけど……それ言った時の表情が、な?

 なーんか悪巧みしてそうっつーか、面白がってそうっつーか……」


 レイチェルさん紹介のお店はどちらも”良い店”だっただけに、最後に何が待っているのやら……。しかし、ミルカの為には行かなければならない。

 ぱちん、と音がして何事かと見上げればレナードが自分の頬を叩いた音だった。


「さ、行くぞ。―――魔法屋『魔女っ子天国』へ!」

「な、何その名前?!」


 僕は思わずツッコんだ。


「オレに聞くな; ともかく一度行ってみなきゃ……」


 顔にはモロに『行きたくない』と書いてある。でも、楽しみにしているミルカを見ると、そうも言えなくて。

 東西の大通りから外れた、ひっそりとした裏道の一角に、よく見ないと見過ごしそうな小さな看板だけが掛かった、ごく普通の家の様な建物。

 看板は羊皮紙に杖の様な物が描かれた物で、レナード曰く、魔法屋共通の絵柄だそうだ。

 どうやらココがレイチェルさんとモルブさんオススメの? 魔法屋の店らしい。


「え、ホントにココなんだ? なんか、ごく普通の家っぽいけど……」

「うん、ココだな。えーと、なんだっけ、モルブさんが言ってたの……これか?」


 扉の横に『ご用の方は押して下さい』と書かれたプレートの下に、ボタンっぽい物がある。


「押せば良いの? じゃあ、押すね!」


 ポチ。

 ミルカが何の警戒も無く押してしまった。


「あっ……! 押した?!」

「え、押さないと入れないじゃない?」


『何かご用でしょうか?』


 落ち着いた男性の声で返事があった。


「すみません、レイチェルさんとモルブさんにお勧めされて来たんですが……」


 とレナードが二人の名前を出したところ、喰い気味に相手の声が重なった。


『まぁ! レイチェルとモルブのとっつぁんからの紹介ですってぇ?!

 ―――大歓迎よ~!!!!」


 興奮気味の声とともに、勢いよく扉が開き出て来たのは……厳ついガタイに強面の、男性? だった。 


「ようこそ、いらっしゃいませ! 魔法屋『魔女っ子天国』へ!!!

 さぁさぁ、中へどうぞ!!!」


 招き入れて貰った店内は、どこもかしこもキラキラした”カワイイ”の洪水。

 呆然としている僕とレナードを尻目に、ミルカが目をキラキラさせて服の掛けてあるラックに駆け寄っていく。


「キャ~~~!!! カワイイッ!!!!!」


 一軒目に行った防具屋のような地味でくすんだ色では全く無く、明るく柔らかい色で、デザインもリボンが付いていたり、丸い玉が付いていたりして、いかにも女の子が好きそうな物ばかりだ。


「あら~、カワイイお嬢さんね。気に入る物はありそうかしら?」

「うん! どれもホントにカワイイ!!! 迷っちゃう~♪」

「そう、良かったわ~♪ 貴女みたいなカワイイお嬢さんに着て欲しくて作った服だから、ワタシも嬉しいわ! ゆっくり見ていって頂戴ね~」


 と、次にこちらを向いた店主? はレナードを見た途端ボン、と音が聞こえそうな程一気に顔を真っ赤にした。


「あ、あら……お兄さん、とっても好みのタイプだわ//////

 あの子の保護者さんかしらん? たっぷりサービスさせて戴きますわ~♪」


 黒髪パッツン前髪にもみあげは内巻き、後ろ髪はストレートで腰まであるという髪型と、マダム風のブラウスにロングのぴったりしたスカートって部分はとても女性的ではあるんだけど。

 一方でかなり厳ついがっつり戦士体型で、えらの張った四角い顔の顎はくっきりはっきり割れているし、髭の剃りあとも青々としている。

 それでいて、口調はやっぱりマダム風。

 これって、いわゆる”オネェ”っていうヤツでは……?!


「あ、ありがとう……ございます……。

 ウチのミルカの装備がココなら全て揃うと教えていただきました……」


 うわー。レナードの笑顔がちょっとだけど引き攣ってるよ;


「そうなのね~。確かにウチなら魔術師メイジの装備は揃うけれど……。

 あの子、本当は……そう、治癒師ヒーラーね?」


 鋭い目をした店主さんが、見事に言い当てる。


「良く分かったね? それって、もしかして特殊な素質アビリティ?」


 店主さんはバチンとウインクしてみせる。


「そうね。その人のジョブによって、オーラっていうのかしら……大まかな色が見えるのよ~。

 例えば、そこのボクは戦士ファイター系だから”赤い色のオーラ”って感じなの。

 そして、あのお嬢さんは治癒師ヒーラーがメインなんだと思うけど、魔術師メイジもかじってるのよね? 黄色にほんの少し紫が混じって見えるのよ」

「へぇ~、色々分かるんだ……じゃあ、レナードは?」


 興味本位で聞いただけ、だったんだけど、店主さんは非常に困った顔をした。


「―――それがねぇ、今まで見た事無い色なのよ~。

 ”青っぽい黒”なんて初めて見たわ」

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